機体&星型エンジンを組み立てて塗装【達人のプラモ術<ブリストル・ブルドックMkⅡ>】

【達人のプラモ術】
エアフィックス
「1/48 ブリストル・ブルドックMk.Ⅱ」

03/06

ブリストル・ブルドックの製作3回目となる今回は、機体の塗装を進めていきます。機体の大半は羽布張りという構成ながら、イギリス空軍では珍しい銀塗装(銀ドープ塗装)となります。機体の機首周りは金属外板が使われており、無塗装なので同じ銀でも質感が変わります。その違いを塗装で表現することで、リアルな仕上がりを再現できます。(全6回の3回目/1回目2回目

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube
モデルアート公式チャンネル」
などでもレビューを配信中。

 

■機体の塗装

前回は、組み上げた機体と主翼はグレーサフで下地を整え、パネルラインにセミグロスブラックでシェード塗装を入れました。先にも書いたように、機体後半部分と主翼は、羽布張り構造なので、紫外線等による劣化を防ぐために塗装されています。イギリス空軍のブリストル・ブルドックの場合、アルミパウダー、またはアルミペーストを顔料として添加した銀ドープで塗装されていました。

本家英国空軍では、実戦参加のない大戦間に使用された戦闘機ということもあり、機体は銀塗装で、マーキングもエアレーサーばりに派手なものが多いです。本機の人気が高いのもこの派手なマーキングが多いためかもしれません。

ちなみに今回キット化されているMk.IIは26機しか製造されておらず、マーキングは付属の第13飛行隊または第17飛行隊に限定されます。デカールメーカーからは派手なマーキングが発売されていることもあり、エアフィックスにはバリエーションとして格納式オイルクーラーを備えたMk.IIAの販売も期待したいところです。

本機を採用していたオーストラリア空軍やフィンランド空軍の機体では迷彩塗装が施されており、趣が変わり、いかにも実戦参加の戦闘機といったイメージになります。

▲フィンランド空軍のブリストル・ブルドック。第二次大戦ソ連との戦いで善戦。機体は全面ダークグリーンの迷彩が施されていた

▲今回は機体の銀塗装を活かすため、ギザギザのストライプが特徴的な第17飛行隊のマーキングで仕上げる予定(※画像はメーカの完成見本)

 

■銀はふたつの塗料を使い分ける

銀ドープ塗装の機体は、どちらかというとシルバーグレーのイメージです。作例ではタミヤラッカー塗料LP-11シルバーを使い塗装しています。特に下地をグレーサーフェイサーで塗装しているので、塗装後もシルバーグレーの銀ドープ的な仕上がりを得ることができます。

これに対して機首のアルミ外板部分は、金属感を出すため、Mr.カラーの8番シルバーを使用。下地にツヤありの黒を塗装することで、8番シルバーの輝度をアップ。より金属感を強調しています。

塗装はエアブラシを使用、溶剤6対塗料4で希釈したものを薄く3~4回塗り重ねています。

模型の塗装は色を塗るのではなく質感の再現です。いかにその質感を再現するか。同じ銀色であっても、塗られた銀色と無塗装アルミ素材の銀色をどう変えるか。昨今は銀の塗料も数多く発売されているので、好みに合わせて色々試してみるのも良いでしょう。

▲グレーサフで下地を仕上げたのち機体をLP-11シルバーで塗装

▲機体後半羽布張りをタミヤラッカー塗料 LP-11シルバーで塗装。主翼後縁部分から前のアルミ外板の部分をMr.カラーの8番 シルバーで塗装した胴体。質感の違いがよくわかる

▲全面羽布張りの上翼も LP-11シルバーで塗装

▲羽布張りをマスキングして金属外板の機首周りは、より金属感を強調するために、まずツヤあり黒でピカピカに塗装

▲Mr.カラーの8番シルバーは溶剤6に対して塗料4と薄めに希釈。やや低めのエア圧(0.06Mpa)前後で薄く塗り重ねていく

▲金属外板部分の塗装が完了。無塗装の金属感を再現できた

▲銀塗装を乾燥させたのち、機体上面のダークグリーン、コクピット縁のレザー張りの部分も指定色で塗装しておく。複葉機は上翼と機体を組み合わせてしまうと、機体上面の細部塗装が困難になるので、塗装の段取りを事前によく確認しておく必要がある

▲胴体と下翼、上翼の塗装が完了

▲博物館展示されている機体の主翼と胴体を比べると、同じ銀でも塗装されたものと無塗装の金属で質感が異なっていることが良くわかる

▲タミヤ ラッカー塗料「LP-11 シルバー」(220円) カーモデルのシルバーなど塗装された銀に最適、密度感のある落ち着いたイメージの銀となる。今回のような銀ドープ塗装の再現には最適

▲Mr.ホビー「Mr.カラー 8番 シルバー」(220円) 使われているアルミ粒子が細かく、エアブラシ塗装することで、より金属感のある質感を再現できる

▲同じシルバーでも塗料によって質感が変わる。今回の塗装のため事前に製作したサンプル。左側がタミヤラッカー塗料 LP-11シルバーで塗装した状態、右側がMr.カラーの8番シルバーで塗装した状態。明らかに輝度が違う

 

■エンジンの組み立てと塗装

さて本機の特徴といえば、シリンダーがむき出しの「ブリストルジュピターV2F単列9気筒空冷星型エンジン」です。キットはシリンダーが別パーツ化されるなど、細部までよく再現されています。カウリングがないこともあってエンジンは目立つので丁重に塗装して仕上げたい部分です。

塗装は博物館に現存している機体を参考にしています。9個あるシリンダーは小さいながらも空冷フィンがちゃんとモールドされているので、黒塗装の後、シルバーのドライブラシでパーツのディテールを強調しました。

インストでは胴体と上翼を組み上げた後、エンジンを組むように指定がされていますが、主翼を組んでしまうと破損のリスクがあるので、上翼より先にエンジンを組んだ方が良いでしょう。

このシリンダー機首にエンジン本体を組み込んだ後、差し込むように取り付けよと指示されているのですが、エンジン側のピンが太く、そのままだと上手く収まりません。2mmのピンバイスでシリンダーの穴を削っておくと取り付けが格段に楽になります。

▲エンジン本体はメタリックグレーで塗装

▲エンジン外周の排気管は調色した焼鉄色(黒+銀+レッドブラウン)で塗装

▲機首に塗装したエンジン本体を接着

▲最新のキットだけにパーツの位置がピタリと決まる

▲シリンダーは取り付け穴を2mmのピンバイスでさらっておくと取り付けが楽になる

▲シリンダーをエンジン本体に取り付けて、ドライブラシで空冷フィンを強調しておく

▲最後に排気環を取り付けるが、ここは若干のスリ合わせが必要だ

 

■脚の取り付け

インストの工程では脚も上翼を取り付けた後の工作となっていますが、作例は、張り線の際の機体の固定を考慮して、エンジンと同じく先に組んでいます。ただしタイヤは、まだ取り付けません。

▲脚は3パーツで構成されるが脚柱の取り付け強度がないので、しっかりと接着させることで強度を確保

 

■張り線の実践はどうした!?

前回「第3回は機体塗装と張り線の実践を解説します」といっておきながら、今回機体塗装に思いのほか時間を取られ…。言い訳ではないですが、ここのところの高湿度で銀塗装が思うようにできず、時間切れになってしまい、今回は塗装の解説のみとなってしまいました、いや申し訳ない限りです(深く反省)。

※湿度が高いと、エアブラシを使ったラッカー系塗料はカブる(塗装したての塗膜表面が曇り、つやがなくなる現象。原因は塗装した塗膜から溶剤が揮発する際に気化熱で塗装表面の空気が冷やされ、結露した水分が塗料表層に混ざるため)ことがあるんですよ。特に光沢塗装では塗装面が台無しになってしまいますので、この時期の模型の塗装では湿度に要注意です(水性塗料は問題ありません)。

次回第4回は、いや今度こそ複葉機のキモでもある張り線、0.2mmのピアノ線を使ってのはめ込み張り線を解説します。いやピアノ線をカットする専用ニッパーも新調したんですよ!

というわけで、改めて乞うご期待!

▲新調したミネシマ「ハードマイクロニッパー(ピアノ線対応)」(2870円) ピアノ線は硬いので普通にニッパーでは刃こぼれしてしまうので専用ニッパーを使用する

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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