【趣味カメラの世界 #4】
いつしか、写真はスマホで撮るのが当たり前になりました。とはいえ、写真をこと“楽しむ”という点においては、SNS全盛の今だからこそ、カメラのほうが伸びしろがあるのではないでしょうか。ということで、写真の底力を探るべく、フォトグラファーの田中さんに“ミラーレス一眼”をピックアップしてもらいました。
* * *
スマホから始まった「趣味カメラの世界」。今回はがっつりフルサイズミラーレス一眼カメラを取り上げたいと思います。発売前に色々とあったカメラですが、蓋を開けてみればすっかり人気機種の仲間入りをしているようです。そんな「LUMIX(ルミックス)S9」(実勢価格:20万7900円前後/ボディのみ)の人気についてフォトグラファー目線で考えます!
■やっぱり、“軽くて小さい”は正義だ!
フルサイズの大型センサー搭載ながら、コンパクトで軽量なボディ。ボディ単体で、約500g(バッテリー込み)です。
さらに、軽量コンパクトな「LUMIX S 26mm F8」との組み合わせでは、レンズ込みでも約550gほど。まさに、500mlのペットボトル感覚で持ち運べます。
必要最低限のボタン周りや、ファインダーレス、あるいはアクセサリーシューが接点のないコールドシューのためストロボが使えないなど、一眼レフカメラに慣れ親しんだ人の中には、少々もの足りなさを感じる人もいるかもしれません。
かくいう私も、試用中はついファインダーを覗こうとしてしまうことがありました。
ほかにも、バッテリー充電器が無く、カメラ本体のUSB-C端子から充電するのもちょっと慣れが必要かもしれません。ただ、使っていくうちに、このカメラは「スマホの延長線上」にあるのではないかと思いました。
そう考えると、ファインダーレスな部分やUSBケーブルの充電も自然な流れのように感じます。
■アプリを活用したスマホ連携がスムーズ
本機を「スマホの延長線上にあるカメラ」と考えた場合、アプリ経由でのSNSなどへのスムーズさがより際立ちます。
専用アプリの「LUMIX Lab」は、リモート撮影などの凝った機能はありませんが、その分簡単で分かりやすいUIで、一度ペアリングしてしまえば簡単に接続できます。
接続の安定性も高く、スマホへの写真の転送も実にスムーズ。
アプリ内ではjpeg画像しか調整できないのですが、普段のスマホアプリ感覚でフィルターをかけるみたいなこともできますし、細かく設定したい場合も調整できるパラメーターが豊富に揃っています。
撮影後の電車移動中に、カメラの電源をオンにしておけば、カメラバッグに入れたままスマホに写真を転送できます。そのまま電車内で軽く編集して、SNSへアップ…という流れは、もはやスマホのカメラと変わらない感覚です。
■「LUMIX S 26mm F8」とのセット使いで軽快さを実感!
スマホからのステップアップと考えた場合、センサーサイズの小さいコンパクトデジカメなどに比べて、一般的にはよりボケが大きく高画質なフルサイズセンサー搭載機の方が、写真のグレードアップ感が楽しめます。ただ、フルサイズセンサー機は大きく重くなりがちなので、持ち運びのハードルが高くなりがち。
「ルミックス S9」×「LUMIX S 26mm F8」(2万8710円)の組み合わせは、そんなハードルをラクラクと超えさせてくれるような、コンパクトさと軽量さを併せ持っています。
また、26mmという画角は一般的なスマホの画角に近いので、そういう意味でも違和感なくステップアップできるのではないでしょうか。
しかしこのレンズ、「絞りはF8で固定」、「マニュアルフォーカス」と、少々クセ者(笑)。
▲ シャッタースピード1/125秒、F8.0、ISO5000、LUMIX S 26mm F8 ※特に記載のない場合は撮って出しです(以下同)
軽くてコンパクトなカメラとレンズは、散歩中の足取りも軽く、いつもよりも一歩先へと導いてくれます。
マニュアルフォーカスレンズですが、F8.0固定の被写界深度の深さも相まって、カメラのピーキング機能を使うと簡単にピントは合わせられます。
一見おもちゃみたいなレンズですが、やっぱりスマホとは一線を画す高画質さと雰囲気の写真が撮れます。ISO5000と中々の高感度ですが、ノイズも出すぎずという感じです。
▲シャッタースピード1/125秒、F8.0、ISO1000、LUMIX S 26mm F8
スマホだと、ピントが微妙にズレることはあまりないと思いますが、マニュアルフォーカスだと、後で大きな画面で見たらズレてたみたいなことも結構あります。
ただ、それはそれで“味”というか、ちょっと昔のフィルム的なレトロ感が出たりして、面白い気がします。
▲ シャッタースピード1/100秒、F8.0、ISO6400、LUMIX S 26mm F8
軽いカメラでついつい“より道”したくなります。普段通らない路地には、いつもと違う景色が待っていることも。あえてピント合わせを適当にすることで、スナップにゆるさが出ます。軽さとコンパクトさ重視なので、「すごく写りが良いレンズ!」というわけではないですが、フルサイズの高画質さは十分楽しめます。
被写界深度はF8.0で固定なので、フルサイズならではのボケ感みたいなものは出しづらかったり、マニュアルフォーカスの面倒さはありつつも、「これぞ一眼レフ撮影の醍醐味」といったところでしょうか。
■風景からポートレートまで楽しめる万能レンズ「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」
「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」(7万3260円)は、いわゆる標準域の焦点距離をカバーするズームレンズなのですが、標準ズームレンズでよくある24mmスタートのレンズとは違い、広角端が20mm。そのおかげで、このレンズ1本で風景からテーブルフォト・ポートレートまでこなせるオールマイティなレンズに仕上がっています。
正直なところ、キットの標準ズームレンズなので、写りはそこそこかな…と思っていましたが、良い意味で裏切られました。
▲ シャッタースピード1/640秒、F5.6、ISO160、焦点距離60mm、LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6
望遠端でのF値は5.6とそこまで、絞り値は小さくありません(F値が小さければ小さいほど、ボケ感が大きくなります)。
それでも、撮影の仕方次第では大きくぼかすことも可能です。スマホのデジタル処理とは違う、自然なボケ感はやはりフルサイズならでは。
▲ シャッタースピード1/320秒、F7.1、ISO160、焦点距離20mm、LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6
20mmの広角は、広く大胆な画が撮影できます。広角は周辺の画質が悪くなりがちですが、画面端まできっちりと写っています。
小さくリサイズされた写真でも分かるくらい、画面の隅々までシャープで、レンズの性能に驚きました。
▲ シャッタースピード1/1250秒、F5.6、ISO1000、焦点距離60mm、LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6
思いっきり逆光で撮影してみましたが、気になるほどのコントラストの低下もなく、逆光耐性が良いです。前ボケがうるさくなりそうなシーンですが、柔らかなボケで爽やかさが出ていると思います。
正直なところ、このレンズを装着すると、コンパクトとはいいづらいサイズ感で、ある程度存在感があります。が、それでもレンズ自体は約350g。カメラと合わせて900gを切るので、フルサイズカメラ+標準ズームとしては軽量な部類。
そして何より、写りが抜群に良い! 多少のコンパクトさは犠牲にしても使いたいと思わせてくれる描写力でした。ただ、ルミックスS9のコンセプトにより合いそうな小型軽量なレンズラインナップをもっと増やして欲しいな…とも思いました。
「F1.8単焦点シリーズ」というのがあるのですが、より小型かつ軽量なパンケーキレンズ的なものでAFが使えるものなど、選択肢が増えればルミックスS9の良さがさらに引き立つのではないでしょうか(Panasonicさんに期待!)。
【結論】人気が出るのも納得。持ち運べるフルサイズってだけでも魅力的な「ルミックス S9」
スマホのカメラはどんどん進化していて、十分に高画質になっています。そんな中で、大きくなりがちなフルサイズセンサー搭載のミラーレス一眼カメラは、微妙な立ち位置にあると思います。
私は写真撮影を生業としているので、普段からフルサイズミラーレス一眼カメラを使っています。とはいえ、ちょっと出掛けるくらいだと持ち出すのが億劫で、「写真を撮るならスマホで良いかな」となりがちです。
でも、そういうときに限って、「一眼を持ってくれば良かった…」と思う場面って結構あるんですよね。
ルミックスS9はポケットサイズとはいきませんが、気軽に持ち歩けるサイズ感。個人的にはもう少しコンパクトで軽いレンズラインナップを増やして欲しいところですが、ファインダーレスだったりグリップの握りを設けなかったりなど、割り切った方向性とコンセプトには好感が持てます。
ルミックスS9は、スマホカメラからのステップアップをしたいカメラ初心者の方から、一眼レフに慣れ親しんだ玄人まで、手軽に持ち出せるフルサイズ機として、幅広いニーズに合うカメラです。フルサイズカメラとしては価格も比較的お手頃なので、人気が出るのも納得です。
>> 趣味カメラの世界
<取材・文/田中利幸 取材協力/Panasonic>
田中利幸|ファッション誌などでブツ撮りやポートレートを中心に活動するフォトグラファー。カメラ・ガジェット好きで自身で運営するブログ「Tanaka Blog」において、カメラやガジェットに関するちょっとマニアックなことを書いている
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- Original:https://www.goodspress.jp/columns/622766/
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