ドローンが血液サンプルなどの医療物資を輸送する試験運用がこの秋からロンドンで始まる予定だ。
イギリスの国民医療サービス(NHS)がApianおよびWingと共同で行うこの取り組みは、民間航空局(CAA)の許可を受けて6か月間実施される。ガイズ&セント・トーマスNHS財団トラストの運営する病院2か所の間をドローンが運航し、血液サンプルなどの緊急物資を自動で輸送することになる。
時速100キロのドローンが配送時間を2分に短縮
ドローンを提供するWingによると、ドローンの飛行速度は時速100キロ。病院間の移動に現在車やバイクで30分以上かかっているところ、屋上から屋上へわずか2分で到着するという。これにより、手術前の患者の出血リスク評価など、緊急を要する検査結果をより迅速に得ることが可能になる。ドローンによる配送は環境面でもメリットが大きく、二酸化炭素排出量を削減すると同時に交通渋滞の緩和も期待できる一石二鳥のプロジェクトだ。
ApianおよびWingとの共同プロジェクト
Apianは、2020年にNHSの医師2人とGoogle Health出身の起業家によって設立されたスタートアップ。NHSの臨床起業家プログラムからのスピンアウトとして誕生した。医療物資もオンデマンドデリバリーでピザのように迅速に届けられるべきとして、イギリス全域にネットワークを構築している。
WingはGoogleの親会社であるAlphabet傘下の企業で、2018年にAlphabetの子会社となった。アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパにおいて医薬品から図書館の本、コーヒーまで幅広い物資の配送を手がける。アメリカではWalmartの商品を消費者に届ける配送サービス開始を8月下旬に発表したばかり。
WingとApianはアイルランドのダブリンですでに共同の医療用品サービスを提供、主として縫合糸や手術器具を約4分で配送している。医療用ドローンの商業運用の効果を証明している。
将来的には他の病院にもサービス拡大の見込み
ガイズ&セント・トーマスNHS財団トラストの最高責任者であるIan Abbs教授は、「ドローンによる輸送は、最高の患者ケアの提供と持続可能性の向上という2つの重要課題に取り組むものだ」とコメント。血液サンプル分析のスピードアップを支える取り組みにロンドンの医療機関としては初めて参加できることを誇りに思うとした。
また、ロンドン市のビジネス&グロース副担当であるHoward Dawber氏も次のようなコメントを寄せている。「ロンドン市は重大な健康問題に直面していますが、これに取り組むうえで、ロンドンのスタートアップが備える革新性と先見性が世界各地からの投資を形にした素晴らしい事例です」
この試験的な取り組みが成功すれば、将来的にはロンドン市内の他の病院にもドローン配送が普及し、活用エリアが拡大するとみられる。
参照:
ガイズ&セント・トーマスNHS財団トラストリリース
Apianリリース
Wingリリース
(文・Techable編集部)
- Original:https://techable.jp/archives/245568
- Source:Techable(テッカブル) -海外テックニュースメディア
- Author:芥田かほる
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