音声からうつ病の初期兆候を検出|韓国スタートアップ、AI活用の日記アプリ「REDI」発表

近年、深刻な社会問題となっている“うつ病”。2023年時点でうつ病患者は世界で推計2億8,000万人に達しているという。

日本では現在、数百万人がうつ病を患っていると言われており、100人中約7人がうつ病を含む気分障害を経験しているという調査もある。隣国の韓国でも、2022年時点でうつ病患者が100万人を突破。しかし、日本と同様にうつ病を経験した人の多くがメンタルヘルスサービスを利用していない現状だという。

そんななか、韓国のスタートアップDoctorpressoはユーザーの発話パターンを分析することでうつ病の初期兆候を検出する音声ベースの日記アプリ「REDI」を発表した。

うつ病の初期兆候を検出する「REDI」

近年は、従業員に対してストレスチェックやメンタルヘルスに関するアンケート調査を行う企業が増えている。しかし、こうした従来の方法では人間の精神状態を正確に評価することが難しいという。

このギャップを認識したDoctorpressoは、AIの力を活用してユーザーが話す内容と「言い方」を聞き取り、精神状態に関するより深い洞察を提供するREDIというアプリを開発した。

同アプリは、ユーザーが1日の出来事を口頭で共有すると、感情やトピックを分析し、高度なアルゴリズムでうつ病の初期兆候を検出するというものだ。

Image Credits:Doctorpresso

精神科医によって訓練されたREDIのAIは、いつでもどこでも専門的なサポートを提供し、認知行動療法と行動活性化に基づいて役立つ応答や行動項目の提案を行う。

Image Credits:Doctorpresso

REDIでは睡眠、アルコール摂取、身体活動などのライフスタイル要因をモニタリングする習慣追跡カレンダーも用意。ユーザーはカレンダーを通じて、自身の感情パターンを把握することが可能だ。

音声を分析し、3つのうつ病段階に分類

REDIは、「平均ピッチ」「ピッチ変動性」「スペクトル重心」「スペクトルロールオフ」という4つの音声特性を分析する。

調査によると、これらの要素はうつ病が悪化するにつれて変化するという。例えばピッチが低くなったり、変動が大きくなったり、声の周波数帯域が変化したりといった兆候が見られる。

REDIのAIはこれらの要素を用いて、ユーザーを「non-depressed(ND):うつではない」「mild depression(mDE):軽症うつ病」「major depressive episode(MDE):大うつ病エピソード」の3つの段階に分類する。

なお、LLMではなくSLMを採用しているREDIでは、すべての音声データがユーザーのデバイス上で直接処理される仕組みだ。プライバシーが確保されるため、ユーザーは安心してアプリを使用できる。

メンタルヘルスのアクセシビリティ問題の解決へ

Image Credits:Doctorpresso

韓国ソウルを拠点とするDoctorpressoは、2022年に設立されたメンタルテック企業。

同社のCEOであるWhanbo Jung氏は、 KOSDAQ上場のAIヘルスケア企業であるVUNOの創設メンバーおよび最高医療責任者を務めた経験を持つ。また、カンパニービルダープログラムを通じてサムスンメディカルセンターと共同で認知症関連のスタートアッププロジェクトを主導した人物でもある。

そのほか、精神科医やデザイナー兼UI/UXの専門家など、Doctorpressoはメンタルヘルスとデジタルヘルスケアの専門家によって構成されている。

Doctorpressoの公式サイトには、「(韓国)社会がメンタルヘルスに関心を持ち始めたのは、ここ10年ほどのこと」とある。同社によると、うつ病を経験した人のうちメンタルヘルスサービスを利用している人はわずか7%で、精神科診療所のない地方自治体(市・郡)は韓国全体で66あるとのこと(参考)。

こうした課題を受け、Doctorpressoは誰でも簡単かつ快適にアクセスできるメンタルヘルスソリューションを提供することを目指し、現在メンタルヘルス管理に関するさまざまな取り組みを行っている。

今回紹介したREDIに加え、ソウル大学病院と共同開発した音声・テキストうつ病診断アルゴリズムを利用したハイリスク群向け通知サービスの提供がその例だ。

参考・引用元:
Doctorpresso
PR Newswire

(文・Haruka Isobe)


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