進化したシーラカンス!? ロイヤルエンフィールド「クラシック350」独自のフィーリングを味わう

最近、街中でも目にする機会が増えているロイヤルエンフィールド製のバイク。1901年に初のバイクを手掛け、現存する“世界最古のバイクメーカー”と呼ばれるブランドです。その人気モデルである「クラシック350」の2025年モデルが登場しました。そのマシンに乗りながら、その歴史に思いを馳せてみましょう。

 

■イギリス生まれのインド育ち

ロイヤルエンフィールドは19世紀にイギリスで創業され、1901年に初のバイクを製造しています。1932年には後のヒットモデルとなる「ブリット」の初号機を製造。このマシンは競技などで活躍を続けながら進化し、1955年に設立されたエンフィールド・インディアによってインドでもライセンス生産されるようになります。

1970年代にイギリスの本社は倒産しますが、インドでは生産が継続され、イギリスへ逆輸入されたりもしました。1950年代から大きく構造を変更していない「ブリット」は、“本物のクラシックバイク”とも呼ばれ、バイクファンの支持を集めます。

1994年には、商用車メーカーのアイシャーがエンフィールド・インディアを買収し、ロイヤルエンフィールド・モーターズに社名を変更。「ブリット」は継続生産され、日本にも輸入されるようになりました。

▲ロイヤルエンフィールド「ブリット」

空冷単気筒エンジンを搭載し、1950年代当時は最新装備であったスイングアーム式のツインショックを装備した「ブリット」は、日本でもクラシックバイク好きの間で支持を集めます。ただ、設計の古さもあり、その頃は信頼性も高くなく、維持するのには苦労も多かったようです。

2010年代に入ると、厳しくなった排出ガス規制などに対応するため、ロイヤルエンフィールドも電子制御のフューエルインジェクションを装備した新型エンジンを相次いで投入します。といっても、空冷単気筒エンジンが主力で、魅力であるクラシカルさは失われませんでした。ステップが前方に位置したライディングポジションなども、1950年代から変わらず。インドではこのかたちがバイクの基本形として支持されていたという状況もあったようです。

2020年からはピーシーアイが日本の輸入代理店に。サービス体制も整い、そもそもの設計も新しくなったことで信頼性が飛躍的に向上しています。クラシックバイクのような雰囲気を保ちながら、今どきのバイクと同じ感覚で乗れる信頼性を持ったマシンとして、ロイヤルエンフィールドは支持を集めるようになりました。

 

■本物のクラシックバイクのような雰囲気

「クラシック350」は、その名の通りクラシカルな雰囲気を前面に出した同ブランドの看板車種です。搭載されるのは350ccの空冷単気筒エンジン。ティアドロップ型のガソリンタンク、前後スポークホイール、カバーのついたフロントフォークやリアのツインショックなど、本物のクラシックバイクのような仕上がりが魅力です。

エンジンをかけると、空冷単気筒らしいパルス感のある排気音が耳に届きます。音だけでなく、適度な振動も体に伝わってきて、内燃機関を動かしているという気分が高まります。前方に位置したステップと、樽型のグリップ、少し太めのレバー類もクラシックバイクに乗っているような雰囲気です。

最高出力は20.2PSですが、ロングストロークの単気筒でクランクマスも重いため、低回転域からしっかりと車体を押し出す力強さを感じます。高回転まで引っ張ってパワーを稼ぐよりも、早めにシフトアップしながら鼓動感を楽しみながら走るのが似合う。といっても、鈍重な印象ではなく、交通の流れをリードできるキビキビした加速感も併せ持っています。

2025年型からは、シンプルなメーターの下部にシフトインジケーターも表示されるようになり、スマホなどを充電できるUSBポートも追加に。ライダーにとっての利便性が向上しました。ヘッドライトなどの灯火類もLED化。昔ながらのハロゲンライトの光が好きだったというファンもいるようですが、暗い道での安心感も向上しています。

カラーバリエーションは合計7種類用意されていますが、筆者が乗ったクローム・シリーズ(72万8200円)は、クロームメッキのフェンダーやガソリンタンクが、キャブトンタイプのマフラーなどと相まってクラシックな雰囲気を強く感じさせます。セパレートタイプとされたタンデムシートも、1950年代の旧車っぽさを漂わせています。

近年、ホンダ「GB350」がヒットとなったこともあって、このクラスの空冷単気筒モデルが注目を集めています。実は「GB350」もインドでロイヤルエンフィールドに対抗するために導入されたモデル。それだけ、市場では存在感のあるブランドでもあるのです。なかでも「クラシック350」は、クラシックなフィーリングを味わいたいファンには気になるモデルのはず。一度実車に触れてみて、その独自のキャラクターを体感することをおすすめします。

●SPEC
・サイズ:2145×785×1090mm
・シート高:805mm
・車両重量:195kg
・エンジン:349cc空冷単気筒OHC
・最高出力:20.2ps/6100rpm
・最大トルク:27Nm/4000rpm
・価格(税込):69万4100円〜

<取材・文/増谷茂樹

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

 

 

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