パーツはバラバラだがディテールがスゴいインテリアを製作【達人のプラモ術<米海軍PACV後期型>】

【達人のプラモ術】
ゲッコーモデル
「1/35 米海軍 パトロール エアクッション ビークル(PACV)後期型」
02/08

PACV製作の第2回。PACVは艦艇モデルでもなく戦闘車両でもなく…あえて言えばPBR(河川哨戒艇)に近いのではありますが、ホバークラフトはスケールモデル的にも新鮮ではあります。キットは操縦席をはじめ、搭載された弾薬ケースなどゲッコーモデルらしいこだわりのディテールが再現されています。今回はそうしたディテールを活かすべく、艇内の製作と塗装を進めていきます。(全8回の2回目/1回目

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube
モデルアート公式チャンネル」
などでもレビューを配信中。

 

■バラバラ分割のシート製作に四苦八苦?

PACVの艇内は、操舵手席とレーダー手席に加えて、折りたたみの簡易シートが6席配されています。簡易シートは取り外したり配置レイアウトも変更したりできるようで、イメージ的にはUH-1等のヘリの機内と似たイメージです。

キットのシートはそれぞれフレームを組んでいくのですが、これが難物。ともかくパーツが細く接着面積が少ないこともあり、カッチリと組み上げるのがなかなか大変です。2席ある補助シートを組みあげるだけで2時間近くかかってしまいました。

▲2席ある補助シートは、それぞれ8パーツで組み上げる。脚部フレームが細く、接着は点着けとなるので強度を持たせるのが大変だ

▲製作は通常のプラ用接着剤で組み上げて正しい位置を出したのちに、光硬化タイプの瞬間接着剤で接着部位を補強している

 

■操舵手席とレーダー手席

操舵手席とレーダー手席の2席には、座席背面に衝撃吸収のアブソーバーなどが取り付けられています(すいません写真撮り忘れました)。これがまたパズル見たいなパーツの組み合わせで苦労しました(泣)。個人的な意見ではありますが、ディテールは文句なしなんですが、もう少し組みやすさも重視して欲しいところです。

 

■エッチング製シートベルトは焼きなまして使用

操舵手席とレーダー手席にはエッチングパーツでシートベルトが再現されています。エッチングは真ちゅう製なので、それなりにシートの形状に馴染ませることができますが、どうしても硬い感じになってしまいます。エッチングは熱を加えて焼きなますことで、より柔らかくなり、シートベルトの柔らかな感じを出せます。

シートベルトは、塗装を済ませたシートに瞬間接着剤(真ちゅう製なのでプラ用接着剤は使用不可)で取り付けた後に塗装しています。

▲切り出したエッチング製のシートベルトは、ライターで焼きなますことで柔らかくなり、シートの形状に自然なかたちで馴染ませられる(※火を使う際はやけどに注意。また熱し過ぎるとエッチングが溶けてしまうので気を付けたい。軽く炙る程度でOK)

▲焼きなましたことでエッチングが柔らかくなり、ベルトのたわみの再現がやりやすく、またシートの座面にも馴染ませやすくなる

▲シートベルトは光硬化瞬間接着剤でシートに取り付けたあとライトグレー、バックル部分はシルバーで塗装する

 

■こちらもバラバラの弾薬箱を作る

後部のベンチシート下には4個の弾薬箱が再現されています。弾薬箱はパーツを6面合わせることで箱になります(苦笑)。さらに細かなコーションマークがデカールで再現されているので、インストの指示に沿って粛々と貼っていきます。

まぁ完成後にシートの下に収めてしまうと弾薬箱はほとんど見えなくなっちゃうんですけどね。インストでは弾薬箱は接着しないことと指示されているので、シートの下にこだわらず、自由に配置してもいいと思います。

▲弾薬箱は1個につき6個のパーツを使用。4個作るのでこれだけで24パーツもある。さらに各面に釜核コーションマークが入る

▲完成した弾薬箱は座席の下に収めるとほとんど見えなくなってしまう

 

■操舵手席の製作

艇内のフロアとバルクヘッド(隔壁)は、下地を黒サーフェイサーで塗装した後、Mrカラーのダークシーグレーで塗装しました。塗装指示はないのですが、バルクヘッドの消火器×2は赤で塗装しています。また配電盤部分は黒で塗装したのですが、後部のベンチシートを取り付けたら見えなくなってしまいました。

各シートはほとんど点着けなので、後から外れないようにしっかりと接着固定します。

操舵手席とレーダ手席には、それぞれ組み上げた計器盤とレーダースコープを取り付けます。こちらもデカールでメーターやスイッチ類が再現されており、リアルな仕上がりになります。

▲艇内のフロア、組み上げたシートは、黒サーフェイサーで下地塗装。その後ミディアムグレーで塗装している

▲レーダースコープ

▲こちらは計器盤。レーダースコープと同様に細かい分割となっているが、パーツの精度高いのでカチッと組み上がる

▲隔壁に取り付けた操舵手席の計器盤。メーター類がデカールで再現されており、リアルに仕上がる。左側にはレーダースコープを支えるV型のステーを取り付けている

▲フロアパーツの前隔壁に計器盤とレーダースコープ取り付けた状態。レーダースコープは上下に可動するが、接着固定した方が良い。操舵手席とレーダー手席の背面にある複雑なアブソーバーパーツにも注目

▲後部隔壁と弾薬箱を取り付けた状態。艇内は色味が少ないので、赤く塗った消火器が良いワンポイントとなる。壁面下の配電盤は黒で塗装したのだが、シートを取り着けたら見えなくなってしまった

▲シートの配置が完了。まだシートベルトは取り付けていない

▲完成したフロアとシート類。シートベルトはまだ未塗装状態

▲シートべルトを塗装して艇内フロアが完成

▲左右の隔壁を塗装して取り付ける

▲PACVの艇内が完成。ここまでの製作には2日を要した

▲完成したフロアを艇体に仮組した状態

▲キャビンのルーフを取り付けてしまうとほとんど見えなくなってしまうが、ルーフを接着しなければ完成後も内部を見られる

 

■水陸両用艦艇ならではの一撃離脱が得意だったPACV

PACV(Patrol Air Cushion Vehicle)は、ぶっちゃけホバークラフトなんですが、前回も書いたように稼働率が悪いとか、エンジン音が大きく存在をすぐに察知される、撃たれ弱いといった弱点があり、ベトナム戦争では本格的な運用はされなかったとのことです。

とはいえ、メコン川の流域や支流、三角州といった河川哨戒艇がアクセスできない湿地の浅い水域においてその性能を発揮。何よりもそのスピード、機動性、搭載された火力による哨戒任務に加えて、捜索、破壊、他の水上艦艇の護衛、偵察、医療避難、重火器の輸送、歩兵の直接火力支援、アメリカの特殊部隊や南ベトナムレンジャーの作戦任務に使われたようです。

従来の艦艇が侵入できず、ヘリコプターでも着陸できないような場所でも侵入できるため、夜間の待ち伏せや襲撃に積極的に使用されました。エンジン音がうるさく存在がすぐに察知されてしまうのですが、水上から直接上陸攻撃が可能なACVは、夜間奇襲攻撃作戦で性能を発揮し、高速性能を活かした一撃離脱戦法で打撃を与え、敵の反撃受ける前に水上に離脱したそうです。

▲水上でしか活躍できなかったPBR(河川哨戒艇)と違い、夜間戦闘時に高速で水上からそのまま上陸、スピードを活かした敵拠点への一撃離脱攻撃がPACVの戦法だった

 

■意外にも古くからあるホバークラフトのプラモデル

今回ゲッコーモデルのPACVを作っていて「ホバークラフトって新鮮だなぁ」などと思っていたんですが、実はかなり古くからあったんですね、ホバークラフトのプラモデル。

メーカーはエアフィックス(イギリスの模型メーカー)で、1960年代に1/144スケールでB.H.C.S.R.N4ホバークラフトと1/72スケールでSR-1Nホバークラフトをキット可していました。

B.H.C.S.R.N4ホバークラフトは、1968年に英国とフランスにまたがるドーバー海峡で運行していた自動車搭載が可能な高速大型ホバークラフトです。SR.N1(Saunders-Roe Nautical 1)は、英国国立研究開発公社の後援を受けたサンダース・ロー社が1959年に製造した試作ホバークラフトです。イギリスはドーバー海峡でフランスと隔たっていることから、ホバークラフトの開発に力を入れていたんでしょうね。

模型店の棚でよく見かけたキットですが、達人的には残念ながらどちらも作ったことがありません。古いキットだけに現在は入手が難しいようです。

エアフイックス
「SR-N1 ホバークラフト(Vintage Classics)」(2700円~)
スケール:1/72

エアフィックス
「B.H.C.S.R.N4ホバークラフト」(2800円~)
スケール:1/144

 

■次回は艇体の完成を目指します!

と言うワケで今回はここまで、次回は艇体の完成を目指しつつ、やっぱり欲しいフィギュアを紹介していきます。お楽しみに。

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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