"走る"よりも"歩く"ことがとても好きなワタクシ。取材や打ち合わせ、さまざまな展示会を回りがてら、気分転換の散歩がてらにその街を散策することもしばしば。しかし、歩き回ったり、立ち仕事が続いたりした日の翌日は、どうしても腰痛やふくらはぎ、足膝などが痛かったりします。そこで、重要になってくるファクターのひとつが、やはりシューズ。
歩きやすいスニーカー(であること)はもちろんですが、とは言っても、さまざまなブランドや形が星の数ほど存在するし、なかなか自分の足の形に合うスニーカーを見つけるってのも、まさに干し草の山から針を探すようなもので、いくらお金があっても足りません。でも、とても大変なコトだったりしますよね。
だったら、インソールを自分の足にあったものに変えてみよう!というワケで、今回はスニーカーではなくフルオーダーメイドの足裏補整インソールにフォーカスし、自分専用のインソールを作って試してみました。
履いて歩くだけで体幹を補正するサポートをしてくれるという足底補整インソール。一体、どんなものなのでしょうか。
■アーチをサポートする足底補整インソール
足底補整インソールとは、扁平足やハイアーチなどの症例で崩れた足部アーチ(足の土踏まず)を正しい形に補整してくれるという、いわばアーチのサポート材。アーチは歩行の際の衝撃を吸収するクッションのような役割を果たしているので、そこが崩れるとその機能が低下し、全身にさまざまな問題を引き起こす可能性があると言われています。
しかし、荒野を裸足で移動していた時代とは違い、現代人においては、アスファルトやコンクリートなどの平坦で硬い地面が中心の都市環境が足部アーチに大きな負担がかかり、正常な形状を維持しにくくしているのだそう。
ワタクシ自身は、扁平足やハイアーチなどの症状はありませんが、長時間歩き回る外回りや長時間立ちっぱなし状態がつづくような仕事もしばしば。また、ノマドワーカーの特有のPCやその周辺機器などを収納した重たいベビー級のバックパックを持ち歩くライフスタイルもあいまって、腰や足への負担もかなり大きく、慢性的な腰痛持ちだったりします。
生活習慣や環境などの負担によって、歩き方やアーチにも変化が起きているのでは?ということで、足裏補整インソールに注目してみました。
今回、オーダメイドをお願いしたのは、ドイツの整形靴技術と3Dテクノロジーを駆使し、フルオーダーメイドで足裏補整インソールを作成している日本のブランド、「WAL footwear technology(ヴァル フットウェア テクノロジー)」です。
WAL footwear technologyは、ドイツの補整インソールテクノロジーと3Dプリンターを使用して、ひとりひとりにあった足底補整インソールを設計する、最適な足部サポートを実現するというオーダーメイドインソールのブランドなんです。
アトリエがある産業研修センターの浅草ものづくり工房に伺って、フルオーダーメイドで自分専用のインソールを製作してみました。
▲浅草ものづくり工房は、こちらの台東区立産業研修センター内にあります
■オーダーメイドの流れ
まずは、足圧測定板と呼ばれる機材を使用し、直立不動時と歩行時における足裏の圧力を測定。
▲コチラが足圧測定板と呼ばれる、直立不動時と歩行時における足裏の圧力とバランスを測定する機械で、医療機関や大学病院でも使用されているモノだそう
▲コチラが足圧測定板で測定された直立不動時における足裏の圧力分布とバランスの図、左足の小指の部分はほとんど圧力がかかっていない状態とのこと
▲コチラは足圧測定板で測定された歩行時における足裏の圧力分布とバランスの図、こちらも左足の小指の圧力が見えていない状態
その後、トリッシャムと呼ばれる専用足型採寸器具で足型を採ります。トリッシャムの素材は、フラワーアレンジメントなど使用される給水スポンジ「フローラルフォーム」と同様のものとのこと。
▲コチラがトリッシャムと呼ばれる機具で、圧力を押しかけるとその型が採取可能
▲発泡系の素材なので体重をかけることで足裏の形がコピーされます
採った足型を3Dデータ化した後、ドイツのPedcad社へ送付。
Pedcad社は、3DCAD技術をインソール制作に取り入れ、30年以上も足裏補整業界をリードしている会社だそう。送った足型データを熟練のマイスターと呼ばれるスタッフが3DCAD技術を駆使して、インソールの3DCADデータ化をします。
▲Pedcad社によって、インソールの3DCADデータ化されたもの
そこで制作されたインソールのCADデータを送り戻し、『WAL footwear technology』にて3Dプリンターによってインソールを成形します。
▲3Dデータ化されたインナーソールモデルを3Dプリンターで成形
その後、専用のクッションシートを表面に貼り、研磨、検品後、約1ヶ月ほどでパッケージングされて手元に届くという流れになっています。
▲ベースのカラーは蛍光グリーン、ブルー、ホワイトの3色から選択が可能で、ワタクシは蛍光グリーンを選択しました
▲自宅に届いた自分専用インソール、ラベルにも名前が記載されています
▲オリジナルケースにしっかりと梱包されて、高級感あるパッケージングがうれしいですよね
▲インソールを取り出し、素足にあててみると、当たり前ですが、足裏にピッタリでした
あとは、届いた足裏補整インソールを、その日に履くシューズのインソールと交換、設置するだけ。
もちろんスニーカーが望ましいとのことですが。
今回は、『WAL footwear technology』の整形靴師、渡辺健太さんに、約1ヶ月ほど履いてみての歩き方や足裏の圧力がどのように変化したかを簡単に診断していただくとともに、「なぜ、オーダーメイドインソールに着目したのか?」など、いろいろとお話を聞いてみました。
■ダサいシューズのイメージを一新したい
▲WAL footwear technologyの整形靴師、渡辺健太さん
――WAL(ヴァル)という名前は、どういう意味があるのでしょうか?
「師匠のマイスターがWALTER(ヴァルター)さんという名前で、その方から三文字いただきました」
――インソールに着目したきっかけを教えてください。
「そもそもは趣味で紳士靴の革靴づくりをしていたんです。その時に、足にぴったりフィットした靴はすぐに作れても、それが歩きやすさにつながらない。フィット イコール 歩きやすいにはならないということがわかりました。それで医療的なフットウェアの分野に興味を持ったんです。
なかでもドイツの医療靴って、足の補正を考えたときに靴以外にインソールを重視していたこともあり、それがきっかけですね。それで、せっかくだから靴の制作も含めた整形靴というジャンルの勉強を、ドイツでしようと思って留学しました」
――どのような勉強をされたのでしょうか?
「ドイツには、日本でいう職業訓練校に通いながら、医療靴の会社で実技を覚える、デュアルシステムと呼ばれる教育構造があります。僕がいた地域では1ヶ月間学校に通って、3ヶ月間をPedcad社で見習いとして仕事を教えてもらう、3ヶ月仕事、1ヶ月学校というサイクルで3年半通いました。
学校では、人体の解剖学、特に骨、下肢に関して、腰から下の下腿ですね、腰から下の骨の構造と筋肉の数と構造、神経系、病理の勉強、あと実技的な部分で靴の製造工程です。職業訓練校なので、プラスで英語や社会、経済の学科があったり、宗教の授業などもありました。3年半かけて学んで、最後に資格試験を受けるという感じなんです」
――どんな資格なんですか。
「ドイツ語でオートペティ・シューマッハと呼ばれる、整形靴師ですね。取得後は、見習いで働いていたPedcad社で半年ほど正社員みたいな形で4年ほど働いて、帰国しました」
――帰国されてからは?
「いきなりWAL footwear technologyを立ち上げたんです。日本の整形靴業界のことはあまり詳しくはないのですが、逆にそれくらいがいいのかなと(笑)」。
――日本における足裏補整インソールの状況を見て感じたことは。
「インソールもそうですが、靴に対してのプライオリティは低いですよね。おそらく、現状であまり問題がないからだと思います。都市部はほとんど舗装されてますし、泥水の上を歩くなんてこともほとんどない。しかも、家の中では靴を脱ぐ文化なので、あまりひとつの靴に金額をかけて、という文化ではないかなと」
――なるほど。
「大きな問題としては、日本で足の専門医というのがあまり制定されていない点があります。整形外科医という感じで大括りになっていて、眼科医や歯科医などの専門医はいるのですが、足の病気を見る専門の方がいない。欧米とは違う部分ですね」
――どのような違いがあるのでしょう。
「ヨーロッパだと足病医という専門のお医者さんが歯科検診や眼科検診同様に学校に来て、「足に合った靴を履いているか?」などの指導を幼少期からされています。おそらく構造的な部分だと思いますが」
――3Dプリンターでのインソール製作に使用する素材はどのようなものですか。
「3Dプリンターでインソールをつくるコト自体がとても最近のコトなんです。だから、いまは耐久性とフレキシビリティ、柔軟性などの研究の結果からですが、ドイツだと医療用に認定されているTPU と呼ばれる熱可塑性ポリウレタンを使っています。日本でいうとISOのような認定を受けた素材ですね。ただ、ウレタンが入っていると加水分解の可能性があるのですが、それがしにくい素材を厳選しています。このTPUを採用してから5年ほどですが、いまのところ加水分解はないですね」
――5年間使用しているのであれば、とくに問題はないですよね。
「あと、足裏は汗をかくのですが、いまのところそれによるヘタリも少ない。一般的なスポンジ材のインソールは1〜2年で消耗するので、そこから考えると耐久性があるのが一番のメリットだとおもいます」
――ソールの表面に貼ってある生地素材を変更されたとか。
「ポリエステル生地だとどうしてもソックスでスリップしてしまうので、それを防止するために、プラスアルファでオリジナルの特殊な布を貼って滑りを軽減させました。防臭、抗菌機能もあるので、そこはグレードアップですね」
▲独自の生地をつかったインソール生地で、メッシュ素材なので通気性も確保しています
――靴選びとしては、どんなものがおススメですか?
「歩いて補正をかけるものなので、パンプスやヒールがある靴にはあまり向いていないかなと。できれば、紐履のスニーカーがベストです。インソールを入れることで甲の部分が上がってしまうので、
調節できる靴がおススメですね。ただ、人によってライフスタイルもあるので、それに合うようなものでしたらシューズ内に設置して、補正をかけていただければと思います」
――現状、どのくらい履いていると補正される感じなんでしょう。
「足裏を綺麗な形に整えるというものなので、かなり個人差があるとおもいます。履きはじめに違和感を感じるのですが、おそらく数週間くらいでその違和感がとれはじめるかと。そこから補正がかかりはじめていると、個人的に考えています」
――今後の事業的な目標を教えてください。
「整形靴をもっと一般に取り入れられるようにしたいと考えています。整形靴って、体に良いし、靴としての名目を果たしているものなのですが、どうしても形がダサいんですよね(笑)。
前職でグラフィックデザインの仕事をしていたこともあって、その辺りをどうにかしたいと考えています。構造的に綺麗になりにくいというのはもちろんありますが、そこを変えていきたいですね。
いわゆる予防医学的な部分として、若い方にももっと積極的に使っていただきたい。だから、オシャレとして取り込んでいただけるようになるのが、それが自分の使命というか、ゴールだと思っています。
具体的にはまだこれからですが、例えば、インソールにとどまらずフットウェア全般、スニーカーやソックスなど、総合的に取り扱えるような、足にまつわるブランドになれたらいいですよね。
フットウェアテクノロジーという名前のとおり、どんどん新しいことを取り入れていきたいし、そういう意味でのブランドづくりは心がけていきたいです」
■経過診断
という感じで、足底補整インソールブランド『WAL footwear technology』。
今回、製作したインソールを1ヶ月ほど使用してから、再度アトリエに伺って、渡辺さんに簡単に診断していただきました。
診断によれば、前回の足圧測定器のデータでは圧力がほとんど見えなかった左足の小指が、「今回の測定では見えるようになった」とのこと。「おそらく、歩き方の足裏の圧力と重心のバランス、足指をつかって蹴り出すという部分が良くなりはじめているように見える」という感じで、「思ったよりも補整されはじめている状態ではないか」とのことでした。
▲コチラが直立不動時の足の圧力、前回よりも左足の小指の影が見える状態に変化しています
▲コチラが歩行時の足の圧力分布図、こちらも左足の小指の影が見えはじめているという変化が
たしかにワタクシ自身、WAL footwear technologyを使用してから、歩き回ったり、立ちっぱなしが続いた日の翌日の腰痛などの症状が、軽減されているという感覚があります。もちろん、感覚の問題で、個人的な意見ではありますが。
▲足の骨格の模型をつかって、歩行時の骨の動きを説明する渡辺さん
渡辺さんによれば、「とにかく意識することが重要!」といいます。たしかに、前回の診断の際に言われたことが、気になって、歩く際に左足の小指意識しながら歩いているというのはありましたね。
日本のフットウェア業界的に、インソールをフルオーダーメイドで製作できるブランドのようなところは、医療用やある種のスポーツ専門店を省けば、もしかしたら両手におさまるくらいカモ。数えたコトはありませんが(笑)。
▲歩き方をちょっとだけ意識するだけでも足圧の変化が見られたので、今後も意識しながら歩こうと決意しました
今回、体験したのは「Meistar(マイスター)」と呼ばれる、歩行測定とカウンセリングでつくる足裏補整ビスポークインソールのモデルで、価格は28,600円(税込)。整形靴を何足も買わなくとも、インソールを交換するだけで足裏を補正、サポートできると考えれば、ちょうどいい価格なのでは。
そんなワケで、WAL footwear technologyのフルオーダーメイドインソール、今後のニッポン人の足事情を支えてくれる要注目ブランドですよ。
■足裏補整オーダーインソールのメニュー
・Meistar(マイスター) ※要予約
価格:2万8600円(税込)
歩行測定とカウンセリングでつくる足裏補整、ビスポークインソール。
・Geselle(ケゼレ)
価格:2万3100円(税込)
専用の足型採寸セットで、自宅にいながら制作できる、
足裏補整オーダーインソールのレギュラーモデル。
・Azubi(アズビ) ※現在準備中
価格:6600円(税込)
紳士靴や簡易的なサポートを望む方向けの「ハーフサイズ」インソール
<写真&文/カネコヒデシ(BonVoyage)>
カネコヒデシ|メディアディレクター、エディター&ライター、ジャーナリスト、DJ。編集プロダクション「BonVoyage」主宰。WEBマガジン「TYO magazine / トーキョーマガジン」編集長&発行人。ニッポンのいい音楽を紹介するプロジェクト「Japanese Soul」主宰。 バーチャルとリアル、楽しいモノゴトを提案する仕掛人。http://tyo-m.jp/
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