ファーウェイが2月18日に、マレーシアの首都クアラルンプールで新製品発表会を開催しました。「HUAWEI Innovative Product Launch」と題して、お披露目された新製品は3つ。
世界初の三つ折りスマートフォン「HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGN」、反射を抑えるディスプレイを搭載した高性能タブレット「HUAWEI Mate Pad Pro 13.2」、耳掛けタイプのオープン型ワイヤレスイヤホン「HUAWEI FreeArc」の3つ。HUAWEI FreeArcは2月7日に日本で先行して発表された製品です。さらに、オマケ的にスマートバンドの新モデル「HUAWEI Band 10」も発表。これは日本でも販売される見通しです。
▲発表会の目玉は「HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGN」
▲キーボードが付属し、ノートPCのようにも使える「HUAWEI Mate Pad Pro 13.2」。反射を抑える「PaperMatte」ディスプレイを搭載したモデルは1199ユーロ(約18万8000円)。日本発売は未定
▲強い光を当てても反射が気にならず、作業しやすいことが利点。クリエイティブワークに向いている
▲日本で先行して発表された「HUAWEI FreeArc」は、現在クラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」で支援受付中
▲スマートバンドの新モデル「HUAWEI Band 10」は日本でも発売されるはずだ
■クアラルンプールでグローバル発表会を開催
発表会が行われたのは、クアラルンプールのMITEC(Malaysia International Trade and Exhibition Centre)。日本で言えば東京ビッグサイトや幕張メッセといった施設です。その中にあるホールで、来場者は約800人だったとのこと。筆者はこれまでにも、ファーウェイが海外で開催した発表会を取材したことはありますが、今回は久しぶりの本格的なグローバルイベントという印象を受けました。
▲発表会はクアラルンプールのMITECで開催
▲アジアを中心に世界から取材陣が集まった
ちなみに、クアラルンプールで開催されたのは、ファーウェイのアジアの拠点となっているから。取材に訪れたメディア・ジャーナリストは約500人で、日本からは22人。アジア各国だけでなく、ヨーロッパ、南米からの参加者もいたとのこと。中国メーカーは中国国内向けと海外向けでマーケティング戦略を変え、発売する製品を変えるのが一般的。ファーウェイも中国向け製品は中国で発表しており、今回の発表会に中国のメディアは参加していませんでした。
▲発表会後のタッチ&トライも大賑わい
■中国で話題となった三つ折りスマホが世界へ!
今回発表されたInnovative(革新的)な製品の目玉は「HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGN」。昨年、中国で発売されて大きな話題を呼んだ三つ折りスマホのグローバル版です。筆者は中国版に触れたことがあり、「&GP」にもレポートを書きましたが、ハードウエアのデザインや基本仕様はグローバル版と共通しています。
特徴をざっくりと紹介しておきましょう。ディスプレイは10.2インチ(2232×3184ドット)で、山折りと谷折りの組み合わせで三つ折りにできる仕組み。閉じた状態では6.4インチ(2232×1080ドット)のスクリーンを利用でき、フツーのスマホのように操作可能。本のように開くと7.9インチ(2232×2048ドット)のスクリーンが現れ、Webやマップ、ドキュメントなどの視認性がグンと向上します。さらに、山折りで裏向きになっている部分を手前に向けると10.2インチのフルスクリーンに。もはやタブレットと呼ぶべき画面の広さで、マルチウィンドウ操作も快適に行えて、キーボードを用意すれば、ノートPCライクに使うこともできます。
▲折りたたみ時はフツーのスマホのように使える
▲1回開くと正方形に近い大画面に
▲完全に開くと画面はタブレットに匹敵する広さに
アウトカメラはメイン(5000万画素)+超広角(1200万画素)+望遠(1200万画素)の3眼。メインカメラはF値1.4〜4.0の可変絞りに対応し、光学式手ブレ補正機能も搭載。インカメラは800万画素と、やや低めのスペックですが、折りたたみ式なので、高性能なアウトカメラで自撮りが可能。インカメラを使うのは、大画面でビデオ通話をするときに限られます。
■気になる価格は? 発売国は?
さて、気になるのは価格です。中国版はストレージ容量が異なる3モデルがあり、256GBが1万9999元(約41万円)、512GBが2万1999元(約46万円)、1TBが2万3999元(約50万円)でした。これに対して、グローバル版は1TBモデルのみで、3499ユーロ(約55万円)と発表されました。つまり、中国向けモデルよりも10%ほど高い設定になっています。
▲価格は3499ユーロ。日本円に換算すると約55万円だ
いずれにしろ、スマホとしては非常に高額で、円安で、なかなか所得が上がらない日本の状況では “高嶺の花” といった印象。ですが、中国で発売された当初は品薄になり、高額で転売されていたとのこと。グローバル版も唯一無二のスマホとして、愛好者や富裕層の物欲を刺激することでしょう。
しかし残念ながら、日本での発売は未定。発売が決まっているのはマレーシア、タイ、フィリピン、インドネシア、香港、カンボジアのみ。ヨーロッパでの発売も未定です。
ファーウェイが米国から制裁を受けて以降、日本ではスマホの発売は停止しています。しかし、海外では販売が継続されている国があり、新機種もリリースされているようです。前述の6つの国と地域は、ファーウェイの知名度が高く、ユーザーが多い地域と捉えることもできそうです。
■Androidからの脱却を目指すファーウェイの勝算は?
ファーウェイは自社でプロセッサーを開発し、「Harmony OS」という独自のOSを開発するなど、米国の企業や技術に頼らないエコシステムの構築を進めていると報道されています。その甲斐があって、中国市場ではスマホのトップシェアを競う位置にまで業績が回復しているようです。
そもそも、中国ではGoogleモバイルサービス(GMS)は使えず、「Google Playストア」ではなく、メーカー独自のアプリマーケットを利用するのが一般的。そのため、日本のように「Googleを使えないから不便」ということにはなりません。
大きな痛手となっていたのは5Gチップの調達。米国および同盟国の5G向けの製品や技術を用いることを規制され、5Gスマホを開発できない状況に陥っていましたが、自社で5Gチップを開発することに成功したと見られています。
ファーウェイはここ最近、新たに発売するスマホのプロセッサーの製品名を公表していません。今回発表したHUAWEI Mate XTのスペックシートにも、プロセッサーについての記載はありませんでした。しかし、対応ネットワークは4Gまでとなっており、5Gには対応していないようです。それを許容できるか否かは、ユーザー次第でしょう。
中国版のHUAWEI Mate XTのOSはHarmony OSですが、グローバル版のOSは「EMUI 14.2」となっていました。EMUIはAndroidをベースにしたOSで、以前、日本で発売されていたファーウェイのスマホもEMUIでした。HUAWEI Mate XTはGMSには対応しておらず、アプリはファーウェイ独自の「HUAWEI AppGallery」から入手する仕組み。しかし、GMSなしで日本でも発売された「HUAWEI Mate 30 Pro 5G」のように、Androidアプリを導入する方法は用意されているはずです。
▲筆者はマレーシア航空でクアラルンプールに行ったが、マレーシア航空のウェブサイトにアクセスすると、アプリのダウンロード元として「HUAWEI AppGallery」も記されていた。こうした表記が当たり前になるか注目だ
ファーウェイは昨年、Androidからの脱却を目指す次期OS「Harmony OS NEXT」を発表しています。同OSに移行すると、Androidアプリは使えなくなります。中国以外のユーザーがAndroidアプリを使わず、HUAWEI AppGalleryだけで不便を感じない環境を作れるのか? Harmony OS NEXTが、iOSとAndroidと並ぶ “第3のOS” になれるのか否かは注目したいところです。
■日本で発売される可能性はゼロではない!?
HUAWEI Mate XTの発表に合わせて、クアラルンプールでは、あちこちでHUAWEI Mate XTの広告が掲出されていました。誰でも気軽に買える価格ではないので、販売促進というよりも、技術力をアピールし、ブランド力を向上させるのが狙いでしょう。
発表会の翌日からは、クアラルンプールを代表する大型商業施設「パビリオン」のサイネージにも広告を映し出し、施設内の最も目立つ場所で実機に触れられるイベントを開催。ファーウェイの “本気” を感じました。
▲クアラルンプール最大の繁華街ブキッ・ビンタンにある商業施設「パビリオン」に、HUAWEI Mate XTが飛び出して見える動画広告が映し出されていた
▲施設内でHUAWEI Mate XTのローンチイベントを開催
▲一般客もHUAWEI Mate XTの実機に触れるように展示されていた
日本ではスマホはiPhoneとAndroidの二択で、多くの人にとってGoogleマップやGmailなどのGoogleサービスも欠かせないものになっています。しかし、iPhoneのシェアは国によって差があり、Googleサービスの浸透にも差があります。
「パビリオン」内のファーウェイのショップを覗くと、最新のスマホがずらりと並び、賑わうとまでは言えないものの、お客さんもそれなりにいました。ファーウェイの製品開発力を見ると、中国だけでなく、他の国でもシェアを回復していく可能性は十分にあるでしょう。
近年、日本でのファーウェイは、オーディオグラス「HUAWEI Eyewear」、オープン型イヤホン「HUAWEI FreeClip」、血圧計付きスマートウォッチ「HUAWEI WATCH D2」などをクラウドファンディングに出品し、成功してから一般発売するという手法も取っています。HUAWEI Mate XTの海外での反響によっては、日本で再びスマホが発売される可能性はなきにしもあらず…と期待したいところ。そういう意味もあって、日本のメディアも今回の発表会に招かれたのではないか? 筆者は勝手にそう思っています。
>> ファーウェイ
<取材・文/村元正剛(ゴーズ)>
村元正剛|iモードが始まった1999年からモバイル業界を取材し、さまざまな雑誌やWebメディアに記事を寄稿。2005年に編集プロダクション「ゴーズ」を設立。スマホ関連の書籍・ムックの編集にも携わっている。
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- Original:https://www.goodspress.jp/columns/661762/
- Source:&GP
- Author:&GP
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