【達人のプラモ術】
ゲッコーモデル
「1/35 米海軍 パトロール エアクッション ビークル(PACV)後期型」
04/08
前回、苦労した艇体上部と艇体下部となるスカート部分の接着でが、本キット組み立てのキモになるので、もう少し詳しく解説しておきます。問題は、そのまま組むと艇体上下の接着時に、キャビン床面が艇体の下部となるパーツKの底板に干渉してしまい、上手く収まらないこと。キャビンの組み方も確認しましたが、間違いはないので、本キット特有の問題のようです。しかしそのままではスカートの間に不自然な隙間と段差が生じてしまうので、なんとかしなくちゃいけませせん。(全8回の4回目/1回目、2回目、3回目)
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube「
モデルアート公式チャンネル」などでもレビューを配信中。
■艇体の製作 その2
上手くパーツが収まらないのは、キャビンの床面が約1mm下側にはみ出していて、底板と干渉してしまうことが原因でした。CAD設計のプラモデルではたまにあるのですが、どうやらプラの厚みを計算し忘れているようです。
対応策としてパーツK側の底面をカットして、キャビンの床板が干渉しないようにしました。
▲艇体下部となるパーツKの中央部分を切り抜くことで、キャビン床板部分の干渉を解決できる。パーツKは厚みがあり剛性はしっかりとしているので、大きく切り抜いても強度不足になることはない
▲パーツの厚みがあるため、切り抜きに際しては、今回は超音波カッターを使用している。リューターなどに比べて格段に作業が早く、曲線部分も楽にカットできる
▲中央部分をカットしたパーツKに艇体上部を取り付けたところ。明るいグレーの部分がキャビンの床板だ。裏側から見ると中身が丸見えになってしまうが、今回はジオラマで製作するので問題なし
▲エコーテック「ホビー用小型超音波カッター ZO-41Ⅱ」(参考価格:4万4800円) 超音波カッターは、刃・ヤスリ・砥石などを超音波振動の微振動を伝えることで、刃+振動+摩擦熱を利用して力を入れずに素材をカットできるので、“プラスチックをバターのように切断”することが可能で、切断作業の手間を大幅に短縮できる。カットだけで、多彩な替え刃で様々な加工にも対応できる。
■スカート部分の製作も難易度高し!
パーツKをカットしたことで、スカートパーツの爪も位置が微妙にズレてくるので、こちらも全て切り落としておくのは、前回も解説した通りです。パーツKを囲むように取り付けるスカートパーツも曲者で、強度が出しにくく、各パーツのサイズがタイトすぎて、艇体上部を組むとスカート同士の接着面に微妙な隙間と段差が生じます。なので擦り合わせ修正が必要となります。
艇体の上下を接着したあとは、接合面に隙間が生じないようにマスキングテープなどで固定し、しっかりと乾燥時間を取ります。
いやはや、なんにしても艇体の組み立てにこんなに苦労させられるとは想定外でした。
▲艇体の上下を接着に際しては矢印の部分は隙間が生じやすいので、マスキングテープ等でしっかりと固定しておくこと
▲艇体後部の張り出した部分がスカートと干渉してしまい、艇体がうまく収まらないため(右側が浮いている)、スカート側を若干削って修正
▲艇体下部パーツKに、6分割されたスカートパーツを組んだ状態。しかし艇体上部が収まらなという問題が生じたため、いったんバラして艇体上部との嵌合面を擦り合わせしつつ再接着している
■キャビントップの製作
キビシ~!と叫びつつ、なんとか艇体を組み上げたら、キャビンのトップ(カバー)の製作を進めます(製作工程21)。内側をグレー、外側をオリーブグリーンで塗装したのち、ウインドパーツを接着していきます。パーツは13枚もあるのでなかなか手間が掛かります。
クリアパーツは透明度が高いのですが、接着しろが少ないので、接着の際に曇らせないように注意が必要です。作例では硬化後も透明度を維持できる「アロンアルファ光」を使用しています。
クリアパーツは、接着後にマスキングをして窓枠を塗装しなければいけないので、この時点ではワイパーを取り付けていません。
同時に、キャビントップの前面に設けられている折りたたみ式の乗降用ブリッジを製作していきます。この部分は、展開した状態か、折りたたみ格納された状態かを決めてパーツを選択する必要があります。
ブリッジを展開した方がキャビン内部が見えるのですが、今回の作例はジオラマで水上走行中を製作するので、格納状態で製作しています。
当初キャビントップは取り外し可能もするつもりでしたが、ルーフ上にエンジンが搭載されるため、取り外しは諦めました。6個のパーツで製作してデカールまで貼った4つの弾薬箱がほぼ見えなくなるなー、などとボヤキつつ製作を進めます。
キャビン内部にフィギュアを乗せるので、現時点ではキャビントップは接着していません。
▲ウインドウパーツは13点、透明度も高く歪みもない。また全てキャビン外側から接着するようになっているのはありがたい
▲曇りを防ぐため、クリアパーツの接着には、光硬化タイプの瞬間接着剤「アロンアルファ光」を使用。万が一はみ出ても硬化後に曇らず透明のままなのでウインドウパーツを汚さずに済む
▲ウインドウパーツの取り付けが完了。この後マスキングを施して、窓枠部分を塗装する
▲キャビンにはフィギュアを乗せるため、この時点では艇体に接着していない
▲キャビン前面に乗降用のブリッジが折りたたまれている。水上から一気に地上まで走行可能なPACVならではといった特徴だ
▲キットでは乗降用のブリッジが格納した状態か展開した状態の選択式になっており、それぞれパーツも異なる。作例は格納状態をチョイス
▲乗降用ブリッジを格納した状態(画像は仮組み状態)で製作
■ジオラマベースの製作その1
艇体の組み立てに四苦八苦しつつ、パーツの乾燥時間を利用してジオラマベースの製作を進めます。ボックスアートを参考に、派手な水煙をあげながら水上から上陸してくるPACVといったイメージです。
水面ジオラマは本連載「達人のプラモ術」ではお馴染みですよね。今回もスタイロフォームをベースに水面を製作していきます。
しかし1/35のPACVはそれなりに大きいので、ベースは四つ切パネルサイズ(424×348mm)となりました。
▲四つ切パネルサイズにカットしたスタイロフォームが水面のベースになる。艇体は斜めに配する
▲キットのスカート下回りが収まるサイズにスタイロフォームをカット。スタイロフォームの端切れ利用して水面の波頭となる部分を貼り付けている。左側の盛り上がっている部分は陸部分となる
▲走行中のホバークラフトは艇体のほんとんどが水面に浮いた状態となるので、スカ―トが沈み込み過ぎないように注意
■最大の難所は切り抜けた…はず
前回続き艇体の組み立て編でしたが、思っていた以上に難儀させられました。最近は海外メーカーのキットの精度や質も向上しているのですが、今回のようなトラブルは良くも悪くも海外製キットあるあるです。
次回はエンジンやラダーの製作など艇体の艤装を進めつつ、海面ジオラマの製作を進めます。それにしても海外メーカーに直接注文したフィギュアが予定日過ぎても届かないんですよ…。一抹の不安を感じつつもPACVの製作、次回をお楽しみに!
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
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- Original:https://www.goodspress.jp/howto/664902/
- Source:&GP
- Author:&GP
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