長らく教習車としても親しまれたホンダ「CB400 SUPER FOUR」が生産終了となったのは2022年のこと。その兄貴分的な存在である「CB1300 SUPER FOUR」と「CB1300 SUPER BOL D’OR」の「Final Edition」が2月に発売され、このシリーズも幕を閉じることになってしまいました。
有終の美を飾るモデルの中から“SP”の名を冠した「CB1300 SUPER FOUR SP Final Edition」に試乗し、「CB1300」そして「SUPER FOUR」シリーズの魅力を振り返ってみます。
■初代モデルをイメージさせるデザイン
このシリーズのルーツとなる「CB1000SUPER FOUR」が発売されたのは1992年のこと。水冷の直列4気筒DOHCエンジンを大柄な車体に搭載し、市街地からワインディングロードまで幅広く楽しめるマシンとして生まれました。
▲1992年式「CB1000 SUPER FOUR」
まだ大型2輪免許を教習所では取れず、大きなマシンを自在に操ることがステイタスだった時代。大きなエンジンを260kgという重量級の車体に搭載し、それでいて運動性能も高い「CB1000 SUPER FOUR」とそれを操るライダーは憧れの存在だったといえます。
▲1998年式「CB1300 SUPER FOUR」
1998年には排気量をアップした「CB1300 SUPER FOUR」へと進化。それから27年、1000cc時代から数えると33年の歴史を刻んできたことになります。
今回発売された「Final Edition」では、初代モデルをイメージしたキャンディレッドとホワイトのカラーを採用。スイングアームやトップブリッジはシルバーとされました。
ボリュームのあるガソリンタンクの上面には“Final Edition”のステッカーが貼られています。
搭載されるエンジンは113PSを発揮。現代においては特筆するほど高い数値ではありませんが、112Nmの最大トルクで重量のある車体を難なく加速させられます。そして何より幅があり、DOHCヘッドの存在感も強いエンジンは、見た目の迫力が抜群です。
重量が266kgある車体も大柄で迫力があるもの。鋼管パイプを用いたフレームや正立式のフロントフォーク、2本タイプのリアサスも、現代的なネイキッドモデルとは一線を画していて、どこか旧車っぽい雰囲気すら持っています。
今回乗った「SP」モデルでは、前後サスペンションがオーリンズ製となっていて、ゴールドのアルマイトのアウターチューブとされたフロントフォークとイエローのリアサスペンションが目を引きます。
■大きいバイクを操る楽しさが味わえる
大柄な車体は重量もあって、サイドスタンドから直立させるだけでも重さを感じます。ガソリンタンクもボリュームがあり、またがってみても“大きなバイク”に乗っていることを実感します。
ただ、足付き性は790mm(スタンダードタイプは780mm)というシート高から想像するより良好で、前方に向かって絞り込まれたシート形状が効いているようです。
エンジンを始動させると、迫力ある排気音が響きます。大排気量の4気筒エンジンらしい低音の効いたもので、スーパースポーツベースの4気筒とは少し違った雰囲気。回転の上がり方も、ヒュンヒュン回るというより大きなピストンがシリンダーの中で動いているのが伝わってくるような感覚です。
重量のある車体ですが、クラッチをつないで走り始めると不思議なことにその重さがスーッと消えていくように感じます。ただ、車体そのもののサイズ感は変わらないので“大きなもの”を操っている手応えは確実に残っているのが面白いところです。
ハンドリングもスムーズですが、近年のストリートファイター系のネイキッドマシンとは異なり、バイク任せに曲がるのではなくライダーの操作に着実に応えてくれるような動き。フロントを軸にクイックに曲がるというより、リアタイヤを軸に動くようなライディングの基本を思い出させてくれる曲がり方です。
エンジンの存在感も強く、パワフルなのですが、高回転まで回すよりも低回転域のトルクを活かして操るのが面白いような特性。右手のひと捻りで他車を置き去りにする動力性能は持っていますが、ライダーが急がされる感覚はなく、低速で走っていてもストレスを感じません。その気になれば他車をぶっちぎれる動力性能を持ちながら、飛ばさなくても操っている感覚を味わえるマシンです。
* * *
“新しい時代にふさわしいホンダのロードスポーツモデルはどうあるべきか”を追求した「プロジェクトBIG-1」のフラッグシップとして生まれたマシンが生産終了することは、ひとつの時代の終焉を感じさせます。大きくて重いけれど、それがいいと思えるようなマシンは、今後はなかなか出てこないかもしれません。歴史に名を残すことは確実な名車といえるでしょう。
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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