「世界一醜い軍用機」と呼ばれたフェアリーガネットを製作!【達人のプラモ術<フェアリーガネット>】

【達人のプラモ術】
エアフィックス
「1/48 フェアリーガネット AS.1/AS.4」
01/06

さてさて、達人は飛行機プラモが好きなのですが、どこの国の飛行機がいちばん好きかと問われれば、かの大英帝国の飛行機が好きと答えます。イギリスの軍用機といえば第二次世界大戦で活躍したスーパーマリン スピットファイア、デハビランド モスキート、ホーカー・タイフーン、ジェット時代ではE.E.ライトニング、ホーカーハリアー等々、個性的かつ、言うところの傑作機が顔をそろえております。

しかし英国機には、どうしてそうなった?と言いたくなるような独創的な飛行機も数多く存在しておりまして、それがまた試作機や実験機ではなく実用化しちゃいましたというところが凄いんですねぇ。そこが好きなんですよ。

プラモデル的にも魅力に溢れており。そんな英国機大好きモデラーは、スターウォーズの暗黒面に引っ掛けて「英国面に堕ちたモデラー」とも言われております。

さて達人を含めそんな英国面に堕ちたモデラーが喜ぶプラモデルが昨年末にイギリスの老舗プラモデルメーカーのエアフィックスから1/48スケールで発売となりました。それが今回紹介するイギリス海軍のフェアリーガネットAS.1/AS.4 であります。(全6回の1回目)

エアフィックス
「1/48 フェアリーガネット AS.1/AS.4」(1万3200円)
※G.S.Iクレオス扱い

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube
モデルアート公式チャンネル」
などでもレビューを配信中。

 

■世界位一醜い軍用機と呼ばれたガネット

フェアリーガネットは第二次大戦のあと、イギリス海軍で使われていた艦上対潜哨戒機です。大戦中、英国はドイツのUボートに手を焼いていたこともあり、戦後も空母に搭載する対潜哨戒機の開発に力を入れていたんですね。そして1953年に実戦配備されたのがフェアリーガネットです。ちなみに愛称の「ガネット(Gannet)」はカツオドリの意です。

▲フラップとアレスティングフックを下げて着艦体制に入るフェアリ―ガネットAEW.3

ずんぐりむっくりとした太い胴体は、内部に魚雷や爆雷を搭載するためで、大戦中アメリカ海軍で活躍したTBFアヴェンジャー雷撃機なんかも同様の理由から胴体が太くなっています。

またガネットはパイロットの後方に空中監視員(Aerial observer)が座り、さらに後部にもう1名が後ろ向きで搭乗し各種対潜機器の操作を行う3人乗りということもあり、艦載機としてはかなり大きな機体でした。

▲片翼をたたんだ状態の ドイツ海軍フェアリ―ガネットAS.1。どう見ても普通には見えない

しかし1950年代当時、イギリス海軍で使われていた空母アークロイヤルはアメリカの空母に比べるとかなり小さかったため、機体はコンパクトにしなくてはいけなかったワケです。そのためガネットは、設計段階から機体を空母のエレベーターサイズに収まるよう全長、全幅が制限されました。その一方で、胴体は武器を内装したため太く、操縦性を確保するために垂直尾翼は大きく、主翼は翼面積を確保するためW字型の逆ガル翼を採用していました。

艦載機なので当然ながら主翼は折りたたみ可能なのですが、一般的な艦載機によく見られる主翼途中から上方にたたむ、あるいはヒンジを軸にして主翼前縁が下になるように捻って折りたたむといった構造ではなく、2カ所のヒンジを介して胴体側に引き付けるように翼をZ型に折りたたむという、まさに「なんでそうなった?」な機構を採用しています。

▲主翼をたたんだフェアリーガネットAEW.3。胴体下面に大型のソナードームを装備しており、二重反転プロペラと相まってアニメに登場する架空の航空機みたいなイメージだ

さらに機首に設けられたプロペラは二重反転式で、胴体内にアームストロング・シドレーが開発したマンバ・ターボプロップエンジンを2基つなげたダブルマンバ・ターボプロップエンジン(2950hp)を搭載。エンジン上に位置するコクピットはパイロットの視界を確保するため機首の先端ギリギリに設けられ、これに魚雷や爆雷などの兵装を収容する大型の爆弾槽を機体下部に設けた結果、およそスマートとは言い難い、縦に長いずんぐりむっくりな機体形状となりました。性能的にはともかく、こんな外観をしていたため、ガネットは当時から「世界で最も醜い軍用機」と呼ばれています。

 

■いやカッコいいでしょ!

ズングリムックリの胴体、斜め上をいくZ型に折りたたむ主翼、ターボプロップエンジンに二重反転プロペラ…、いやカッコいいですよ! 変態デザイン…、あ、いや、個性的なデザインの多いイギリス軍用機の中でも実に秀逸なフォルムだと思うんですよ。カッコいいじゃないですか! 二重反転プロペラは男のロマンですよ~。ガネットを開発したフェアリー社は第二次大戦中もフルマーとかヘンな飛行機作っているけど、ガネットは別格です。

これを世界一醜い航空機と呼ぶの意味わかりません。まぁ確かに主翼を折りたたむところを動画で見ると「なんで?」とはなりますけどね(YouTubeとかで観られます)。

でもって、ガネットはプラモデル映えするんですよ(異論は認めませんww)。とは言うものの、これまでのキットは発売時期が古いものばかりで、スケールも1/72のみと良キットに恵まれていませんでした。

それが昨年、英国のプラモデルメーカー、エアフィックスから1/48スケールでガネットキット化のアナウンスがあり、英国面に堕ちている飛行機モデラーは、俺のターンキター!(意味不明)と喜んだワケです。

 

■キットに関して

ここ数年勢いのあるエアフィックスは、自国イギリスの飛行機は出来が良いとの言葉とおり、1/48ガネットも期待を裏切らず、細部までこだわりを感じられる優良キットです。価格が1万円超えといささか高価ではありますが、機体のボリュームとディテールを考えると、昨今の輸入プラモの中では許容範囲内の価格と言えるでしょう。

新しいキットということもありパーツの精度も高く、またコクピットなどディテールが集中している部分は組みやすさを重視しています。ガネットの特徴でもあるZ型に折りたたむ主翼は、展開状態と折りたたん状態の選択式となっており、翼断面のディテールもしっかりと再現されているのがありがたいですね。また胴体後部のソナードームも下げた状態を再現できるなどこだわっています。作るのであればやはり主翼はたんだ状態で作りたいところです。

強いて難点を挙げるなら、塗装指示が相変わらずハンブロールカラー(イギリスの模型塗料メーカーでエナメル塗料)での色名表記なので、タミヤカラーやMr.カラーで塗装するには色の互換表を自身で作る必要があるのがちょっと面倒です。

デカールは部隊違いで3タイプ用意されています。またキットの発売に伴い、社外メーカーから専用デカールとディテーアップ用のエッチングパーツなども発売されています。

▼メーカーの完成見本

▲塗装図。ガネットと言えば、やはりダークシーグレーとダッグエッググリーンのツートン、言うところのペンギンカラースキムが良く似合う。デカールは3種類が付属している

 

■製作開始!まずはコクピットから

さっそく製作をスタート。飛行機プラモのお約束でコクピットから進めていきます。先にも書いたようにインストの各パートで塗装の色名指示がされているのはありがたいのですが、馴染みのないハンブロールカラーで書かれているので、インストにMr.
カラーの番号を書き込んでおくと、塗装作業が楽になります。

 

■尻もち防止用オモリを忘れないこと!

キットは非常にテールヘビーなので、コクピットフロアの下側とエンジン後方に尻もち防止用のオモリを積むスペースが設けられているのはありがたい。今回は釣り用の板ナマリを収納スペースサイズにカットしたものを詰め込みました。大手模型店で販売している模型用粒状のオモリも小さな隙間に詰め込めるのでお勧めです。指定では12g+55gの67gを積めとなっていますが、念のため70gを積んでいます。ただし、1/48スケールのモデルとしてはかなりの重量があるので、前脚にかかる荷重が不安です。

▲製作に際して、事前にインストにMr.カラーの色名を書き込んでおくと、塗装の際にいちいちハンブロールカラーとの互換表をチェックせずに済む

▲尻もち防止ための合計67gのオモリを載むように指示が書かれている

▲67gは1/48スケールの飛行機のオモリとしてはかなりの重量だ

▲コクピットフロア下のオモリスペースに板鉛をカットして詰め込んだ

▲コクピットは基本、黒が指定色だが、作例ではブラックグレーを塗装してミディアムグレーでドライブをかけ、パーツのディテールのエッジを際立たせている

▲ウェポンベイ内部など機体内は明るいグリーン系だが、黒を下地に塗装することで使い込まれた雰囲気を再現

▲ウェポンベイの隔壁も細かなディテールが入っているので、細かく塗り分けておく

▲計器盤のメーター類は付属のデカールで再現。スイッチ類は筆塗り。乾燥後にクリアーをメーターに塗ることでガラスの質感を表現

▲計器盤、隔壁、操縦桿、シートなどを指定色で塗り分ける

▲ガネットの主翼は中翼配置なので、コクピットフロアとウェポンベイの間に主翼取り付けのための桁が組み込まれている

▲機体内にコクピットフロアを組み込んだ状態

▲胴体内部を貫通する桁は剛性が高いので、主翼をしっかりと接着できる

▲コクピットフロアを胴体に仮り組みした状態。まだシートベルトを取り付けていない

 

■次回は主翼を製作

というわけで今回はここまで。いや~今回キットを組んでみて、ガネットはやっぱりカッコいいと飛行機だと再認識しました。個人的な意見ではありますが、端麗なフォルムのスピットファイアより、超個性的なフェアリーガネットに惹かれるんです。ビバ!英国面!

次回はガネットのアイデンティティともいえる主翼の製作を進めます。お楽しみに!

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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