なんでこうなった!?「Z字型」に折りたたまる主翼に着手【達人のプラモ術<フェアリーガネット>】

【達人のプラモ術】
エアフィックス
「1/48 フェアリーガネット AS.1/AS.4」
02/06

今回製作のフェアリーガネット、これまでも模型化されてはいるものの、どちらかといえばマイナーな機体でした。1950年代にフロッグ(FROG/世界で初めてプラモデルを発売した英国の模型メーカー。1973年に倒産)などプラモ黎明期のメーカーからキット化されて以降、ガネットはキット化されておらず、2000年代になりトランぺッター(Trumpeter/中国)、ソード(Sword/チェコ)が1/72でキット化により復活といった感じです。イースタンエクスプレス(ロシア)もまた1/72で発売していますが、中身はフロッグでした。

近年ではドイツレベルが1/72で、また今回エアフィックスに追随するようにソードが1/48でガネットAEW.3早期警戒機を発売しています。そしてエアフィックスは、今回キット化したAS.1/AS.4に続いて輸送機型のガネットCOD.4の発売を発表しました。(全6回の2回目/1回目

▲エアフィックスは、今回のAS.1/AS.4に続いてAS.4の輸送機型となるCOD.4の発売を発表。濃いブルーの機体が新鮮だ。発売時期、価格ともに未定

▲エアフィックスのガネットAS.1/AS.4 に続いてSword(ソード)も1/48でフェアリー ガネットAEW.3を発売。価格は1万4800円。胴体下面に大型のソナードームを装備した早期警戒機だ

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube
モデルアート公式チャンネル」
などでもレビューを配信中。

 

■機首のオモリに関しての補足

前回、胴体の製作で、尻もち防止のために67gのオモリを機首に積む必要があると書きました。しかしガネットを製作した知人モデラーから「インストに記されている67gはギリギリなので、80g位は載んだ方が良い」とのアドバイスをもらいました。そこで計器盤の後ろスペースにさらに10gほどオモリを追加しています。なおオモリの固定は衝撃に強いエポキシ系接着剤を使用するようにしてください。

▲計器盤の裏側にカットした板ナマリをさらに10g追加(矢印の部分)。黄色い部分は、万が一オモリの接着が剥がれた場合にガタつきを防ぐために詰め込んだマスキングテープ

▲オモリの重量をはかる際に目分量は禁物。達人は電子秤を使ってはかっている。電子秤はネット通販で1000円前後で購入できる。塗料の調合など使用頻度は高いので持っておきたいツール

▲釣り用板オモリ。釣具店やネット通販でも購入できる

 

■必要は発明の母と言うけれど

前回も書きましたが、第二次大戦後に就航していたイギリスの空母は小型で、1955年1月にガネットが初配備された空母イーグル(排水量2万1600トン)、ガネットの部隊が最も運用された空母アークロイヤル(排水量4万3340トン)と、6万トンクラスのアメリカ空母に比べるとかなり小型だったんですね。それゆえに大型のガネットの運用は大変だったようです。

ちなみにイギリス海軍でガネットと同時期に使われていたファントムFG.1は、アークロイヤルの甲板からの発艦を容易にするために前脚を40cm伸ばし機首の迎え角を大きく取らなければいけなかったし、甲板上のエレベーターのサイズが小さいため格納時は機首のレドームを横に折りたたまなくてはいけませんでした。

当時の映像を見ると、甲板でファントムFG.1やバッカニア攻撃機に混じって、窮屈そうに主翼をたたんだり広げたりしているのが分かります。

狭い空母での運用から考えられたガネットの主翼の折りたたみ機構なんだろうけれど、見るたびに「なんでこうなった?」と言いたくなります。まぁこの個性が英国面大好きモデラーにはたまらないんですけどね。

 

■主翼の製作

今回は、前回の胴体に続き主翼を製作していきます。

なんといっても主翼はガネットのアイデンティティとでも言いましょうか…、キットでは主翼を展開した状態、そして閉じた状態を選んで作り分けられるようになっています。作例は迷うことなく、折りたたんだ状態をチョイスしました。

近年のエアフィックスのキットは、パーツ分割が巧みで組みやすく、なおかつ完成後の剛性などもしっかりと確保できる構造になっているので好感が持てます。

折りたたんだ状態の主翼は、片翼それぞれ3ピースで構成(Z字型に折りたたむため)されており、それぞれがヒンジで繋がります。金属パーツなどは使われておらず、全てプラパーツですが、完成後にはガタや強度不安もありません。折りたたみ部分のディテール再現も文句なしのレベルです。サクサクと組んでいけます。

主翼付け根部分には脚収納部の隔壁が、中央部分と翼端部分には内部に補強用の桁が入るので、厚みある主翼ながら強度的な不安もありません。

▲素材のプラが柔らかいこともあり、左右胴体の合わせ目、主翼の前縁の合わせ目の処理には高切削性の瞬間接着剤を使用する

▲レーダー席後方の凸モールドが合わせ目消しの研磨で消えたしまったので、0.5ミリプラ板をカットして貼り付け再現

 

■キットがふたつあれば…

組み上げた主翼は、胴体側の2本の桁に差し込む構造になっており、角度もピタリと決まり不自然な隙間もできません。

で、仮組みをしたところ、キットの構造的に主翼ユニットを差し替えるだけで、展開状態とたたんだ状態のどちらもイケるということが分かりました。2機作らずとも1機でどちらも楽しめるのです。

まぁ脚や収納部、フラップなどの動翼類のパーツは1機分しかないので、そのままでは差し替え主翼の製作は無理なんですけどね、要するにキットが2個あれば、1機で主翼差し替えバージョンの製作はできるというワケなんですが…。

今回、偶然にも知人のモデラーがアクシデントで「キャノピーを破損させてしまいジャンク状態のガネットあるからパーツ譲るよ」との連絡があり、なんと1機で2度楽しい“主翼差し替えモデル”の製作の製作が可能となりました。

というワケでジャンクキットが届くまで、とりあえず今回は折りたたんだ状態の主翼の製作を進めます。

▲主翼は胴体側に組み込んだ2本桁に差し込む構成となっており、接着しなくてもしっかりと固定できる

▲ガネットは逆ガルウイングを採用しているので、内翼は下反角がつく

▲水平尾翼は動翼が別パーツ。差し込みタブがしっかりしているので取り付け後の強度は高い

▲垂直尾翼のラダーは別パーツ化されている。可動はしない

▲胴体下面の収納式ソナードームの外板はわずかに段差が生じるので溶きパテで接着面を修正した

 

■主翼の合わせ目を消す

エアフィックスのキットに使われているプラ材は樹脂がやや柔らかく、プラ用の接着剤がよく効くという特徴があります。そのためパーツの合わせ目消しの処理でラッカーパテを使うと、一時的には消えても時間が経つと溶剤の揮発により接着面が肉痩せをおこして、継ぎ目が再び出てきてしまうことがあります。

ガネットは左右分割の胴体上接着面、そしてぶ分厚い主翼前縁の接着面がかなり目立つので、継ぎ目消しは必須作業になるのですが、ここは切削性の高い瞬間接着剤を使って合わせ目を研磨処理することで、効率的に継ぎ目を消しつつ、修正後に合わせ目が浮き出てくるといったトラブルを防げるようになります。

▲折りたたみ状態の主翼は組み上げた3ピースで再現

▲折りたたみ状態で露出する翼断面のディテールもシャープに再現されている

▲主翼中央部にはボックス状の補強パーツが入る。ロケット弾パイロン取り付け用の穴を開けるの忘れないこと

▲指定では脚収納部はシルバーとなっているのだが、実機写真ではほとんどの機体は機体下面色あるいはグレーに塗装されていたので、作例は下面色となるダックエッググリーン(Mr.カラー26番)で塗装している

▲GSIクレオス「Mr.カラー C26 ダックエッググリーン」(220円)

▲アルテコ「CA-07 高切削性・中粘度瞬間接着剤」(1199円) 中粘度タイプの瞬間接着剤。硬化後もプラに近い硬さなので切削作業や研磨が楽におこなえる。隙間埋めや小さな気泡埋めも可能

次回も機体の製作、さらに塗装も進めていきます。お楽しみに!

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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