ヒョンデ・モビリティ・ジャパンが、実に扱いやすいサイズのコンパクトEV「インスター」を2025年4月に発売。クルマの車体大型化が進む昨今(衝突安全性のため)全幅1.6mのこのクルマの存在は貴重です。
■コンパクトながら数字以上に活発な走りが魅力
インスターのベースは、韓国の軽自動車規格にのっとって開発されたガソリン車「キャスパー」。基本プラットフォームを使ってホイールベースを延ばして駆動用バッテリーを搭載するなどしたのが「キャスパー・エレクトリック」で、韓国以外では「インスター」の名で販売されています。
コンパクトな車体のクルマへのニーズは高いはず、というのがヒョンデの思惑だったそうで、実際、フタを開けてみると、欧州でも好調なセールスだとか。日本の道路は、1970年代以前に幅員など規格が決まったとかで、当時の日本車と近いサイズのインスターの使い勝手はよさそうです。
インスターの魅力は、ボディディメンションにとどまりません。小さな駆動用バッテリーで、モーターの出力も85kWとそれなりですが、数字よりも実際の走りは活発です。
発進がスムーズなのは、これまでバッテリー駆動のEVを体験したことがあるかたならご存知でしょう。すいーっとという感じで出ていき、インスターはそのあとも、気持ちよい加速を味わわせてくれます。
高速道路でパワー不足感を体験したこともありません。その気になれば、交通の流れをリードすることも可能です。
直進安定性はよく、乗り味も、サイズから考えていた以上に快適でした。聞くところによると、日本法人のヒョンデ・モビリティ・ジャパンの開発担当者(現地の事情に合わせて改良などを担当するひと)は、継ぎ目が多かったり、パッチワークのように舗装が荒れている日本の路上でも、気持ちよく走れるよう、足回りの調整をしたとのこと。
実際に、乗っているひとは大きなショックを感じることなく、狙いどおり、いい乗り心地です。一方で、ふわふわとしすぎることもなく、カーブを曲がるときの姿勢安定性も確保されています。
■3種類のグレードを用意
エクステリアデザインは上手。全長3.8mにすぎないサイズですが、ピラーが太く見えるデザインで、それでいて、Bピラーとルーフの間にアクセントを入れることで、背高感を回避。前後フェンダーは、かつてのアウディ・クワトロを連想させるブリスター型で、全幅は1.6mしかないのに、力強さ感があります。
もうひとつの魅力は、インテリアです。明るい色調でまとめられていて、気持ちよさを感じさせるのと同時に、前席シートはくっついたようなベンチタイプ、後席シートは左右独立して前後に160mmもスライド可能。しかもバックレストはリクライニングします。
さらに、&GPをチェックしている方へのいい情報としては、大人2人での車内泊が考えられたデザインなのです。前席シートのバックレストが前に倒れるので、車内はほぼフルフラット化。ここにマットレスを敷けば、意外に快適そうです。AC電源も備えているのも便利で、オートキャンプなどにも行けそう。
ラインナップは「カジュアル」「ボヤージ」「ラウンジ」の3グレード。出力や装備にちがいがあり、「ボヤージ」と今回の「ラウンジ」は、バッテリー容量が大きくなります。一充電あたりの走行距離は458km。カジュアルはまだ認定されていないので未発表です。
「カジュアル」に対して、「ボヤージ」は出力が上がるだけでなく、装備も充実。運転支援システムとして「NSCC(ナビゲーションベース・スマートクルーズコントロール)」や「HDA(高速道路ドライビングアシスト)」、それにサラウンドビューモニターなどが装備されます。
さらに今回乗った「ラウンジ」では、ロードホイール径が17インチになり、電動スライディングルーフ、前席シートヒーターおよびベンチレーション、それに、デジタルキーなどがおごられます。
価格は、「カジュアル」が284万9000円、「ボヤージ」が335万5000円、「ラウンジ」は357万5000円。国のCEV(クリーンエネルギー自動車導入促進)補助金の対象車両でもあります。装備でいうとボヤージかラウンジ、いろいろ快適そうなのはラウンジでしょう。補助金を得られれば、300万円そこそこで入手可能なので、魅力的なEVなのです。
【Specifications】
Hyundai Inster Lounge
全長×全幅×全高:3830×1610×1615mm
ホイールベース:2580mm
出力:電気モーター1基
駆動:前輪駆動
最高出力:85kW
最大トルク:147Nm
駆動用バッテリー容量:49kWh
乗車定員:4名
一充電走行距離:458km(WLTC)
価格:357万5000円
<文/小川フミオ>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/672729/
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