ジョナサン・アイブ氏が語る、創造的チーム作りとデザイン哲学

AppleでiPhoneやiMacなどの製品を送り出し、最高デザイン責任者を務めたジョナサン・アイブ氏が対談に登壇しました。創造的な成果を挙げるチーム作りや、製品デザインにおける哲学、デザイナーが持つべき覚悟、自身の失敗、現在進行中のプロジェクトなどについて語りました。

ジョナサン・アイブ氏が公に語った、貴重な機会

ジョナサン・アイブ氏は、AppleでiPhoneなどの製品のみならず、ソフトウェアやApple Store店舗も含む、Appleのデザイン全体を統括する最高デザイン責任者を務めたのち、2019年に退職し、デザイン集団LoveFromを設立しています。

今回、アイブ氏は、インターネット金融サービス企業Stripeが米サンフランシスコのモスコーニ・センターで開催したイベントで、Stripeの共同創業者パトリック・コリソン氏の対談に臨みました。

なお、Appleは以前、モスコーニ・センターでMacworld Expoや世界開発者会議(WWDC)などのイベントを開催しており、初代iPhoneの発表会場としても使っています。

Appleを去って以降、ジョナサン・アイブ氏が公の場に姿を現すことは珍しく、約1時間にわたって自身の考えを語った今回の対談は、貴重な機会です。

ジョナサン・アイブ氏 Stripe Sessions 2025

学生時代、Macと出会って感じたもの

イギリス出身のジョナサン・アイブ氏は、美術学校の学生時代にMacと出会った時、デザインから人を思いやる精神や、文化への愛情を感じ、人類の進歩のために作られた製品だと確信し、Appleに関心を持ったそうです。

アイブ氏がAppleに入社した、1990年代初頭のシリコンバレーには、人類に奉仕するという目的意識があったものの、現在は、金と権力という企業中心の動機に偏ってしまっている、と懸念を示しています。

ジョナサン・アイブ氏 Stripe Sessions 2025

創造的な仕事で成果を挙げるチームを作りとは

Appleでデザインチームを率いていたアイブ氏は、創造的な仕事で成果を挙げるチーム作りの経験談についても語りました。

チーム作りにおいて重要なことは、信頼関係と愛がある小さなチームだ、と語っています。

アイブ氏のデザインチームでは、毎週金曜日にメンバーの1人が交代でメンバー全員のための朝食を作り、皆で食べることを通じて、お互いのために何かをする、という文化を育んだエピソードを明かしています。

また、オフィスではなくメンバーの自宅で共に作業することで、仲間意識が強化されるだけでなく、チームメンバーへの配慮がユーザーへの配慮をもたらし、共感と深みのある製品を生み出すことに役立った、と振り返っています。

ジョナサン・アイブ氏 Stripe Sessions 2025

製品の「美しさ」とは

ジョナサン・アイブ氏は、デザイナーとしての使命は道具を作ることであり、ユーザーの生活の質を向上させることだという哲学を語っています。

Apple製品の箱に入れるケーブルの巻き方にもこだわって何時間も費やしたことを明かし、些細なことでもユーザーへの愛情と配慮を表現する方法として、大切にしてきたことを明かしました。

製品デザインの「美しさ」についてアイブ氏は、外見がどんなに美しくても使いにくいものは醜い、と断じ、使いやすさの重要性を強調しています。

数値化できない、ユーザーへの思いやりや丁寧さが最終的にユーザーに伝わることから、誰にも見えない内部にも決して手を抜かない、という同氏の哲学も語っています。

デザイナーに必須の覚悟、自らの失敗も告白

アイブ氏は、イノベーションには意図しない結果がつきものだ、としつつも、製品が何か有害な事態を招いた場合、デザイナーはその結果に責任を負うべきだと、製品を世に送り出すデザイナーが胸に刻むべき覚悟についても語りました。

また、アイブ氏自身が関わった製品の中にも、心から誇れるものだけではなく、予想外に好ましくない結果をもたらしたものもあった、と失敗を告白しています。

ジョナサン・アイブ氏 Stripe Sessions 2025

テクノロジーやSNSへの懸念、進行中のプロジェクト

アイブ氏は、最近のテクノロジー業界は、変化のスピードが速すぎてる社会制度や構造が追いついておらず「危険だ」と懸念を表明しています。

ソーシャルメディアは、大きな影響力があるにもかかわらず、十分な検証が行われる前に広まってしまった、として危機感示しています。

人工知能(AI)については、早い段階から安全性や倫理について議論されてきたことには希望が持てると述べました。

そして、具体的には語れないものの「自らが責任を感じているがゆえに、現在取り組んでいるプロジェクトがある」として、倫理的な配慮を踏まえたプロジェクトが進んでいることを示唆しています。

最近の目撃情報、OpenAIとのコラボについては触れず

今回の対談では、先日サンフランシスコで目撃された撮影のことや、OpenAIと組んでのプロジェクトについては語られませんでした。

対談の映像はこちら

ジョナサン・アイブ氏と、パトリック・コリソン氏の対談の映像はこちらでご覧くささい。再生時間は、約59分04秒です。

Source: Stripe/YouTube via MacRumors


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