新時代の「ホーネット」ってどうなの!? 750ccと1000ccに試乗して見えてきたもの

ホンダは昨年から今年にかけて「CB1000ホーネット」と「CB750ホーネット」を相次いで発売。新時代の「ホーネット」シリーズに興味を持っているバイクファンも少なくないようです。

「ホーネット」と言えば、1996年に発売された250ccモデルを思い起こすのは、ちょっとベテランのライダーでしょうか。「CBR250RR」譲りのカムギアトレーン4気筒エンジンを搭載し、高回転までスムーズに回る特性と、250ccクラスとは思えない180サイズの極太リアタイヤが特徴のマシンでした。

▲1996年式「ホーネット」

その後、1998年には「ホーネット600」、2001年には「CB900ホーネット」がリリースされ、ホンダのネイキッドマシンの顔となるシリーズとなります。共通するのはアップタイプのマフラーと、ボリューム感のあるガソリンタンクで、今で言う“ストリートファイター”に近い雰囲気を持っていました。

▲2001年式「CB900ホーネット」

 

■本格的なストリートファイターマシンに

新しく登場した「CB1000ホーネット」と「CB750ホーネット」は、ともにアグレッシブなLEDライトを採用したフロントフェイスと、短く切れ上がったようなテールデザインでストリートファイターの文脈に沿ったルックス。横幅があり、前後長を短くしたガソリンタンクには以前のシリーズモデルからの遺伝子が感じられます。

「CB1000ホーネット」は2017年型「CBR1000RR」のエンジンをベースとする999ccの4気筒エンジンを搭載。

▲「CB1000ホーネットSP」

スタンダードモデルで152PS、「SP」モデルでは158PSの最高出力を誇ります。「SP」モデルはマフラー内部に可変排気バルブが装備されていて、低回転域のトルクと高回転域の伸びを両立。ほかにもオーリンズ製のリアサスペンションと、ブレンボ製ブレーキキャリパーを採用し、クイックシフターも標準装備しています。

対して「CB750ホーネット」は754ccの2気筒エンジンを採用。

▲「CB750ホーネット」

最高出力は91PSとなっています。このエンジンとフレームの基本設計は、2023年発売の「XL750トランザルプ」と共通するもの。アドベンチャーモデルと共通の設計で開発されたという珍しい出自を持っています。

▲「CB1000ホーネットSP」のエンジン

▲「CB750ホーネット」のエンジン

フロントの足回りはともにショーワ製のSFF-BP(セパレート・ファンクション・フロントフォーク・ビッグピストン)倒立フォークにラジアルマウントのブレーキキャリパーという組み合わせ。「CB1000ホーネットSP」については、フォークはフルアジャスタブルでブレーキはブレンボという高品質なセットになっています。

▲「CB1000ホーネットSP」のフロント回り

▲「CB750ホーネット」のフロント回り

価格は「CB1000ホーネット」が134万2000円で「SP」は158万4000円。それに対して「CB750ホーネット」は103万9500円と、このクラスではお得感の高いプライスとなっています。実際にどのような乗り味の違いがあるのか、「CB1000ホーネットSP」と「CB750ホーネット」を乗り比べてみました。

 

■どちらもキビキビした走りが楽しめる

「CB750ホーネット」は2気筒エンジンらしく、またがってみるとスリムでコンパクトな印象。シート高は795mmですが、シートも絞り込まれているので足付き性は良好です。

エンジンの排気音は2気筒らしく歯切れが良く軽快です。あまり高級感はありませんがピックアップは鋭く、低中回転域からトルクがあるので加速はかなり俊敏。192kgという軽い車重もこの加速力に貢献しているようです。

ハンドリングも軽快で、街中の交差点などでもコンパクトに曲がれます。重量バランスが優れているようでライダーと車体の一体感が高く、高速コーナーでも安定しています。兄弟モデルである「XL750トランザルプ」と比較してもハンドリングについては、こちらの方が基準になっているのではと感じるほど完成度は高いものでした。

対して4気筒の「CB1000ホーネットSP」は車体もボリューム感があり、シート高は809mm。排気量の差から想像するより大きく感じます。ハンドル回りのメーターやスイッチ類のデザインは「750」と共通なのですが、高級感があるように感じるのが不思議なところ。排気音も4気筒らしく重厚感があり、走りへの期待感が高まります。

スパルタンな外観デザインやスーパースポーツ譲りのパワートレインなど、過激な走りを予感させますが、走り出してみると扱いやすいネイキッドマシンという印象。もちろん、アクセルを大きめに開ければ212kgの車体を軽々とダッシュさせるパワーは持っていますが、レスポンスは過敏過ぎないので街乗りでもギクシャクするようなことはありません。

試乗した「SP」は足回りも高品質なものが採用されているため、サスペンションの動きやブレーキタッチも高級感があるもの。少し前のスーパースポーツ並の動力性能を持っていることと相まって、ワインディングを軽く流しているだけでスポーツライディングを堪能することが可能。スーパースポーツのライディングポジションが少しキツく感じるようになってきたベテランライダーを満足させるだけの性能を持っています。

対して「CB750ホーネット」は軽量コンパクトで扱いやすい車体なので、大型免許を取ったばかりの人や、久々にバイクに乗るリターンライダーにもおすすめできる仕上がり。どちらもキビキビしたストリートファイターらしい走りを楽しめる点は共通しています。新時代の「ホーネット」を象徴する2車種ですが、ストリートファイター的なデザインで食わず嫌いをしているライダーには、一度乗ってもらいたいと思える完成度でした。

>> ホンダ「CB1000ホーネット」

<取材・文/増谷茂樹

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

 

 

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