デザインに惹かれて、写りで納得。「SIGMA BF」は決して所有欲を満たすためだけの存在ではなかった

【趣味カメラの世界 #23】

前回は、「Sigma BF」(38万5000円 ※ボディのみ)のミニマルなデザインや操作感についてレビューしました。今回はその続編として、“実際に撮ったらどう写るのか?”という部分にフォーカス。

街スナップやポートレートの作例を交えながら、フルサイズミラーレスカメラが持つ描写力の高さと魅力をひも解いていきます。

監修・執筆:田中利幸(たなかとしゆき)|ファッション誌などでブツ撮りやポートレートを中心に活動するフォトグラファー。カメラ・ガジェット好きで自身で運営するブログ「Tanaka Blog」において、カメラやガジェットに関するちょっとマニアックなことを書いている。

 

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■大きなボケ味と豊かな階調。フルサイズらしい描写に、思わずうっとり

本モデルの一番の魅力は、あのコンパクトなボディにフルサイズセンサーを積んでいるところです。

実際に街でスナップを撮ったり、自然光のなかでポートレートを撮ったりしてみると、「あ、やっぱりフルサイズなんだな」と思わせてくれる描写に、ちょっと驚かされました。

▲Sigma BF+50mm F2 DG、シャッタースピード1/500秒、F4、ISO100、カラーモード:CALM

ハイライトからシャドウまでのグラデーションがとてもなめらかで、階調も豊か。今回使った「50mm F2 DG」は、逆光になると少しフワッとやわらかく描写してくれて、なんでもない風景にも、夕暮れ前ならではの情緒をそっと添えてくれます。

▲Sigma BF+50mm F2 DG、シャッタースピード1/80秒、F2、ISO1000、カラーモード:RICH

なお、今回使ったのはSigmaの「Iシリーズ」。開放でもピントが合った部分はキリッとシャープで、小ぶりなレンズなのに描写力はバッチリ。前後のボケも自然で、スッと溶けてくれる感じです。

最近のスマホも、AIなどによるボカシ処理が自然になってきましたが、大きいセンサーを持つカメラならではの奥行きや立体感って、やっぱり一味違うなぁと実感しました。

■カメラまかせでここまでキレイ。“撮って出し派”にうれしい「カラーモード」が秀逸

魅力的だったのが、「Sigma BF」に用意されている豊富なカラーモード。クラシックトーンやティール&オレンジ風の色味、モノクロームなど、どこかフィルムっぽさを感じさせるトーンが揃っています。

JPEG撮って出しでも、十分に「これでいいかも」と思えるほど仕上がりがきれいで、ちょっとした撮影でも気軽に楽しめるのがいいところです。

操作画面からカラーモードを簡単に切り替えることができて、仕上がりを確認しながら撮影できます。モードの種類も豊富で、自然なトーンのスタンダードなものから、ちょっとクセのある個性的なものまでさまざま。同じ被写体でも、選ぶモードによってガラッと印象が変わるのが面白いところです。

さらに、それぞれのカラーモードに対して、効果の強さやコントラストなどを細かく調整することも可能。自分好みに仕上げたい人には、かなり自由度の高い設定が用意されています。

▲Sigma BF+35mm F2 DG、シャッタースピード1/125秒、F2.5、ISO4000、カラーモード:FOV CLASSIC YELLOW

クラシックの名がついたカラーモードは2種類ありますが、こちらはそのうちのひとつ。全体的にアンティークな雰囲気に仕上がるので、シャビーシックな背景やちょっと古びた街並みにすごくよく合います。

2つのクラシックモードのうち、肌の色味が落ち着く「CLASSIC YELLOW」の方が、個人的には人物撮影と相性がいいかなと思いました。

▲Sigma BF+35mm F2 DG、シャッタースピード1/500秒、F5、ISO100、カラーモード:FOV CLASSIC YELLOW

「FOV CLASSIC YELLOW」は、何気ない日常のスナップにも、少しレトロなムードを添えてくれるカラーモードです。

コントラストはやや高めなんですが、全体的にほんのりくすんだような色味があって、その独特のトーンが個人的にすごく気に入りました。

▲Sigma BF+50mm F2 DG、シャッタースピード1/640秒、F4、ISO100、カラーモード:POWDER BLE

淡くハイキーな「POWDER BLUE」は、青空との相性が抜群。シアンがかった空とやわらかな雰囲気が重なって、どこかノスタルジックな印象を与えてくれます。

▲Sigma BF+50mm F2 DG、シャッタースピード1/800秒、F2、ISO640、カラーモード:POWDER BLUE

肌の色がちょっと不自然に見えがちなので、人物を撮るときにはあまり向かないかも…と、つい避けていた「POWDER BLUE」。でも、実際にこうして撮ってみると、シチュエーションとうまくハマったのか、この独特の色味もアリだなと思いました。

▲Sigma BF+50mm F2 DG、シャッタースピード1/640秒、F4、ISO100、カラーモード:TEAL AND ORANGE

こちらは、映画みたいな雰囲気を演出してくれる「TEAL AND ORANGE」。ちょっとクセが強めで、正直いつ使えばいいのか悩むカラーモードのひとつです。

ですが、このカットは実際の色とは少し違うけれど、なんだか“記憶の中の夕方”がそのまま写っているような感じがして、ちょっとじんわりしました。独特な色味は、シネマティックでノスタルジック。そんな1枚になったと思います。

▲Sigma BF+50mm F2 DG、シャッタースピード1/800秒、F2、ISO800、カラーモード:CALM

名前のとおり、全体をやさしく包んでくれる「CALM」というカラーモード。コントラストは控えめで、ほんのりアンバーがかった色合いが、落ち着いた雰囲気をつくってくれます。

ふんわりとした柔らかさのなかに、クラシックな趣きもあって、ちょっと特別な空気をまとった1枚に仕上がりました。

▲Sigma BF+50mm F2 DG、シャッタースピード1/500秒、F4、ISO400、カラーモード:MONOCHROME

▲Sigma BF+24mm F3.5 DG、シャッタースピード1/800秒、F3.5、ISO100、カラーモード:MONOCHROME

ややコントラストを高めたモノクロで撮ってみると、いつもの日常もどこか不穏な雰囲気に。モノクロだからこそ、写真の本質である「光と影」に自然と目が向きます。

ということで、今回は特に気に入ったカラーモードをいくつかご紹介しました。本モデルのカラーモードは、現場で“色を作る”楽しさが味わえるのが何よりの魅力。コントラストをちょっと変えてみたり、モードを切り替えたり…。難しい知識や設定がなくても、仕上がりにこだわれるのは、カメラに慣れていない人とってもうれしいポイントだと思います。

ちなみにRAWで撮影しておけば、あとからカメラ内でカラーモードを含めて現像もできるので、そのときの気分で調整を楽しむこともできますよ。

■“美しい”が詰まったカメラとともに、写真のある日々を過ごす

「Siguma BF」は、たとえ“見た目100%”で購入したとしても、全く後悔しないカメラだと感じました。ミニマルで美しいだけじゃなく、実際にシャッターを切ってみると、ちゃんとフルサイズならではの描写が楽しめます。

特に印象的だったのは、「必要なものしかない」という潔さ。それがかえって、“写真を撮る”ということそのものに集中させてくれる感覚です。難しい設定や多すぎる機能に気を取られることなく、ただ光を見つけて、ただ写すことに夢中になれる。

この体験は、むしろ「これからカメラをはじめてみようかな」と思っている人にこそ意味があるように思います。

JPEGの撮って出しでも満足できるカラーモード、迷いなくシャッターが切れる快適なレスポンス、そして、毎日持ち歩きたくなるサイズ感。その全部が、改めて“写真って楽しい!”と思わせてくれるポイントでした。

デザインに惹かれて手に取るのも、もちろん正解。でもその先にある“写り”の深さにも、ぜひ目を向けてみてください。「Sigma BF」は、その期待に、ちゃんと応えてくれるカメラです。

>> SIGMA「Sigma BF」

>> 趣味カメラの世界

<取材・文・写真/田中利幸 モデル/田淵瑚都(@tako_ism)  取材協力/SIGMA>

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