PostgreSQLを業務システムに導入している開発者にとって、SQLインジェクションは無視できない重大なセキュリティ課題です。
本記事では、SQLインジェクションを防ぐための方法として広く使われているプレースホルダーの正しい使い方を解説します。
特に、$の後の数字は連番でないといけないのか?という疑問に答えながら、プレースホルダーに関するルールや間違えやすいポイントを丁寧に紹介します。
プレースホルダーとは
プレースホルダーとは、SQL文の中に値を直接書かずに、あとから変数として渡すための仕組みです。
これにより、外部から渡された入力値がそのまま実行されてしまうリスク、つまりSQLインジェクションの脅威を回避することができます。
PostgreSQLにおいては、次のような形式でプレースホルダーを使用します。
SELECT * FROM テーブル名 WHERE カラム名1 = $1 AND カラム名2 = $2;
この$1
や$2
がプレースホルダーです。
プレースホルダーの基本ルール
PostgreSQLのプレースホルダーには、以下のような厳密なルールがあります。
必ず連番であること
プレースホルダーは、$1から始まり、使用するごとに$2, $3…と連続した番号でなければなりません。
正しい例
SELECT * FROM 社員 WHERE 社員ID = $1 AND 状態 = $2;
間違った例
SELECT * FROM 社員 WHERE 社員ID = $1 AND 状態 = $3;
このように番号を飛ばすと、文法エラーになります。
位置と値が一致している必要がある
クエリに使われているプレースホルダーの順番と、実際に渡す値の順番は完全に一致していなければなりません。
例:クエリとバインド値の対応
SELECT * FROM 顧客 WHERE 顧客ID = $1 AND 地域 = $2;
bind_values = [1234, '関東地方']
このとき、1234が$1
、‘関東地方’が$2
に割り当てられます。
実装例(シェルスクリプトや独自アプリケーションからの接続)
例えば、プログラムの中からプレースホルダーを使用して安全なクエリを実行する場合は以下のようになります。
実装例(PostgreSQLクライアントの使用)
psql -U ユーザー名 -d データベース名 -c "SELECT * FROM 顧客 WHERE 顧客ID = \$1 AND 地域 = \$2;" --set=1=1001 --set=2='関東'
この例では、$1
と$2
にそれぞれ値をバインドして実行しています。
命名型のプレースホルダーは使えるのか?
PostgreSQLの純粋なSQL構文では、命名されたプレースホルダー(例::顧客ID
)は使用できません。
そのため、$1
, $2
, $3
といった位置指定方式のみが許容されます。
ただし、命名型パラメータを使いたい場合は、外部のライブラリなどを用いることで、より読みやすく柔軟な記述が可能です。
命名型プレースホルダーを使いたいときの選択肢
- SQLビルダーを利用する
- 接続ライブラリ(例:pg-promiseやDjango ORMなど)を利用する
例(pg-promiseを使った場合)
db.any("SELECT * FROM 顧客 WHERE 顧客ID = ${id} AND 地域 = ${area}", { id: 1001, area: '関東' });
このように、位置ではなく名前で値を渡すことで、クエリの可読性が大幅に向上します。
よくある間違いと注意点
間違い内容 | 解説 |
---|---|
$1 と$3 のように間を飛ばして使う | エラーの原因になります。連番を守ること。 |
値の順番を間違えてバインドする | 意図しない結果になる可能性があるため、順番に注意。 |
$ の後に名前をつけようとする(例:$顧客ID ) | PostgreSQLでは数値のみが認識されます。命名型は使えません。 |
まとめ
安全で信頼性の高いシステム構築のためには、基本的なルールを正しく理解し、確実に実装することが欠かせません。
PostgreSQLを利用する際には、今回紹介したようなプレースホルダーの仕様と使い方をしっかり押さえておきましょう。
- SQLインジェクションを防ぐには、プレースホルダーの利用が効果的です。
- PostgreSQLのプレースホルダーは、$1から始まる連番でなければなりません。
- 命名型の指定はできないため、連番と値の順序を正しく対応させることが重要です。
- 命名指定をしたい場合は、専用のライブラリやツールを使うことで実現できます。
今後も、システムエンジニアとして間違いにくく、再利用しやすい実装方法を模索しながら、安全なコード設計を心がけていきましょう。
- Original:https://minory.org/postgresql-placeholder.html
- Source:minory
- Author:管理者
Amazonベストセラー
Now loading...