【達人のプラモ術】
エアフィックス
「1/48 フェアリーガネット AS.1/AS.4」
05/06
達人のプラモ術、前回は静岡ホビーショーのレポートのスペシャル回だったので、ガネットの製作はお休みでした。
お待たせしました! 今回は1/48フェアリーガネットの製作第6回(完成編)をお送りします。
前回は主翼の製作、ロケット弾や魚雷といったウエポン類を機体に取り付けました。完成編となる今回は、キャノピーやアレスティングフックといった艤装パーツをサクサクと機体に取り付けて完成…のはずが、ここにきてお約束のトラブル発生であります。さて何があったかと言えば…(全6回の5回目/1回目、2回目、3回目、4回目、5回目)
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeチャンネル「
モデルアート公式チャンネル」などでもレビューを配信中。
■爆弾層内部の工作
ガネットの胴体下面に設けられた大型爆弾倉は、907kgまでの爆弾あるいは機雷もしくは航空魚雷、さらにはソノブイ(※1)を搭載できます。作例では航空機用の短魚雷(Mk37?)2発と、ソノブイ5発を搭載しました。短魚雷はシルバーにライトブルーの帯、そしてソノブイは赤×黒というカラーリングなので、機体色に映えて良いアクセントになります(まぁ機体を裏返しにしないと見えないんですけどね…飛行機モデルあるあるです)。
※1「ソノブイ」潜水艦の探知など航空機から水中に投下して使用する航空機投下式の小型ソナー。水中聴音または反響定位で水中音響信号を電波で母機に送信する
▲大型の爆弾倉内部はディテールも細かく再現されている
▲キットには、爆弾をはじめ魚雷など爆弾倉に搭載するウエポン類も付属。作例では短魚雷2発と、潜水艦探知に使われるソノブイ5発を積んでいる。主翼下面のロケット弾、引き出されたファウラーフラップと、機体下面は情報量がハンパなく高い
▲左右に開いた状態の爆弾倉扉は、接着のためのタブの面積が大きく取ってあり、角度が決めやすく、取り付け後の強度も高い。ありがたい配慮だ
■主翼差し替えでトラブル発生!
今回製作したガネットは、パーツを2機分使用することで、主翼を差し替え式にして、展開状態と特徴的なZ型に折りたたんだ状態のどちらも再現できるようにしています。主翼は胴体側の2本の桁に差し込む構造なので、改造も必要ありません。
作例は、展開した主翼で製作を進めたのですが、キットは超がつく位テールヘビーな機体です。実機は機首に重いエンジンを搭載しているので問題ないのですが、模型的にはそうもいかないので、機首に67gオモリを積むように指示されており、作例では釣り用の板鉛をカットしてやや多め機首に詰め込みました。
この時点で胴体に主翼を仮組みして、オモリが足りているか、尻もちを着かないかをチェックはしています。問題は折りたたんだ状態の主翼を取り付けた状態でチェックしなかったことです。
どちらの主翼にも主脚を組み込み、ロケット弾等のパーツ取り付けなどを済ませ、完成させた折りたたみ状態の主翼を仮組みしてみたところ、なぜかテールがカタンと下がって尻もちを着いてしまったんですね。
▲展開主翼を胴体に仮組みした状態。この時点ではちゃんと前脚が接地していたのだが…
■折りたたみ状態では重心位置が変わってしまう!
展開状態の主翼ではちゃんと前輪が接地するのですが、翼をたたんだ状態に換装するとテールが下がって尻もちを着いてしまいます。思わず「なんでぇ?」と声が出ちゃいました。
尻もちを着く原因は、折りたたんだ状態の主翼を胴体に取り付けると重心位置が後ろに下がってしまうためなのですが、アレスティングフックやソノブイ、後席のキャノピーなど、わずかな重量ですが重心位置から後ろに取り付けるパーツの重量を計算に入れていなかったのがダメでした。
こうしたパーツの重量は、プロペラや魚雷の重量(重心位置より前に取り付ける)で相殺できるだろうと憶測のみで製作を進めたのが敗因でした。
▲折りたたみ状態の主翼でも尻もちはチェックはしていたのだが、ロケット弾などを取り付けていないアバウトな状態で大丈夫だと判断したのがいけなかった
▲ロケット弾や爆弾倉内部のソノブイなども接着し、折りたたみ状態の主翼を取り付けてみたら、重心位置が変わったことでテールヘビーとなり尻もちを着いてしまった
■オモリを追加
文句を言っていてもガネットは完成しないので、早々に対応工作をします。要はオモリを追加すれば良いワケなんですが、組み上げてしまった機首にはもう追加できません。
そこで、胴体の爆弾倉内に取り付ける魚雷(2本)の先端、さらにスピンナー内部、そしてダメ押しで爆弾倉のトビラ裏側にも板鉛を張り付けました(約12g追加)。これでようやく尻もち問題が解決しました。機体を持つとズシッと重さを感じます。
「重量感があっていいじゃん」とか思いましたが、オモリはトータルで100g近い重量となり、いちばん負荷がかかる前脚を補強をしていないでので、後々の変形破損が心配です。
▲爆弾倉に搭載される短魚雷(主脚より前に位置する)を作り直し、先端にカットした板鉛を詰め込んだ
▲苦肉の策として二重反転プロペラのスピンナー内部にも小さくカットした板鉛を貼り付けている
▲さらに爆弾倉扉の内側に板鉛を貼り付けている(矢印の部分)。実機には存在しないディテールだが、扉の内側なのでほとんど目立たないというか、言われなければ分からない
▲機体の後部から飛び出しているアレスティングフック。艦載機には欠かせない装備で、通常は収納されるものが多いが、ガネットでは後部に飛び出したままである
■最終組み立て!機体に艤装を施して完成!
まさかの尻もち問題を何とか解決して、機体の完成を目指します。
キャノピー(クリアパーツ)は4点。薄く透明度も高いのですが、強度はいささか不安ありで、Ω型をしている可動風防は、マスキングや研磨の際に不用意に左右から力を加えてしまうとクラックが入りやすいので、扱いには注意が必要です。
そして前部操縦席の可動風防は成型の関係から上面にパーティングラインが入っているので、研磨して消す必要があります。キットのキャノピーは開状態と閉状態を選べる仕様となっています。作例は出来が良いコクピットを見せたいので開状態としました。
特徴的なプロペラは前後で逆回転といったギミックはないのが残念。にしても二重反転プロペラは文句なしにカッコ良い! 男のロマンです。
▲キャノピーは丁重に塗装して機体に接着。作例は開状態で製作
▲機体最前部、操縦席の可動風防は、成型の関係でセンターに実機にはないパーティングラインが入っているため、研磨して消している
■エアフィックス 1/48 フェアリーガネットAS.1/AS.4の完成!
キャノピーやアンテナ等の艤装パーツを取り付けて、主翼をはめ込んでフェアリーガネットの完成です!
最近のエアフィックスキットは組みやすさを重視しており、ガネットも当初、機体の形状が形状なので製作は苦労するかなと思っていました。でも製作を進めていくと、パーツの精度は高く、パチパチと組んでいくことができ、また形状的に強度に不安を感じていたZ型に折りたたまれた主翼もヒンジパーツがよく考えられた構造で、組み上げた後もしっかりと強度が出ているのには感心しました。
好きな機体ということもありますが、ストレスなく組める、作っていて楽しいキットでした(尻もちを付きましたが…)。エアフィックスからはバリエーションとして「ガネットCOD.4」(AS.4を改修、機内装備を取り去った輸送機型)も発売になりました。こちらも作ってみたいです!
▲完成したガネットAS.1 太く幅のある胴体に大きな逆ガル翼、特徴的な二重反転プロペラと、実に個性的な機体。ペンギンカラーの迷彩とインベンションストライプがよく似合う。これが世界一醜い軍用機なんて大間違いだと思う。いや実にカッコ良い機体だ
▲主翼を展開した状態で後ろから見ると、大きく展開するファウラーフラップのおかげで怪鳥が翼を広げているようだ。迫力満点である
■これがガネット!主翼を折り畳んだ異形の姿をどうぞ!
▲主翼をZ字型に折りたたむことで、狭い空母アークロイヤルのエレベーターにも収容できた。赤いステーは収納時の固定用
▲翼をたたむとなんとも言い難いフォルムとなる。8枚ブレードの二重反転プロペラのインパクトも大きい
▲正面から見たインパクトも強烈である
▲この角度から見ると、鳥が羽をたたんだように見える。胴体後部から長く突出したままのアレスティングフックがなんとも個性的ではある
■主翼を差し替えのメリット
キットの主翼は、展開状態か折りたたんだ状態かの選択で製作する仕様となっているので、ガネット好きとしてはどちらで作るかを悩んでしまうんですねぇ。展開した主翼と折りたたんだ主翼と2機作ることも考えましたが、今回の作例はモデラー仲間から譲り受けたガネットのジャンクパーツを使うことで、1機の機体ででどちらの主翼も再現できるようにしました。
▲主翼を差し替え式にしたことで、片翼のみを畳んだ状態も楽しめる
▲実機では片翼のみたたむということはできないらしい
■オマケ
▲以前製したスオード製「1/72 ガネットAEW.3」と並べてみた
▲ガネットAEW.3は対潜哨戒仕様なので胴体下部に大型のレドームを装備
と言うワケでガネット編は今回で終了です。さて次回は何を作りましょうか?
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
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- Original:https://www.goodspress.jp/howto/681391/
- Source:&GP
- Author:&GP
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