アナログとデジタルの“ちょうどいい間”を楽しめるFUJIFILM「X half」の魅力

【趣味カメラの世界 #24】

2025年の6月下旬に発売を控えるFUJIFILM(富士フイルム)の新モデル「X half(エックスハーフ)」(予想実勢価格:10万8000円)。フィルムカメラの懐かしさとデジタルの利便性を融合させた、これまでにないアプローチのカメラです。

コンパクトかつ軽量なボディに、独自の撮影体験をもたらすギミックが詰まっており、単なる記録用ツールを超えた「写真体験」を提供してくれます。

本記事では、フォトグラファーの田中利幸さんが実際に使用し、その外観や操作性をレビュー。FUJIFILMがこの製品に込めた意図を、実際の使用感とともにひも解いていきます。

監修・執筆:田中利幸(たなかとしゆき)|ファッション誌などでブツ撮りやポートレートを中心に活動するフォトグラファー。カメラ・ガジェット好きで自身で運営するブログ「Tanaka Blog」において、カメラやガジェットに関するちょっとマニアックなことを書いている。

 

*  *  *

■操作も見た目もワクワク。“遊び心”が詰まったデザインとギミック

「X half」を手にしてまず思ったのは、なんて小さいんだろう、ということ。ボディの質感がほどよくて、ちょっとした“おもちゃ感”があるのもいい。なんだか撮る前からワクワクしてきました。

この連載でも何度か言ってますが、筆者は「小さくて軽いは正義」だと本気で思っているタイプなので、この時点でもう、かなりポイント高めです。

レンズのところはちょこんと出っ張ってるけど、それでも厚みは約45.8mm。ポケットにもちゃんと収まるくらいのサイズ感です。

軍艦部には、大きめの露出補正ダイヤルと電源スイッチ。それに加えて、このカメラならではのギミックであるフレーム切り替えレバーもついています。

このあたりだけ見ていると、ちょっと昔のフィルムカメラみたいな雰囲気です。

コンパクトなレンズながら、ちゃんと絞りリングとフォーカスリングがついていて、手でじっくり操作する楽しさがあります。

こういうアナログなギミックって、ただの操作手段じゃなくて、「撮ること」そのものをちょっとワクワクさせてくれるんですよね。

そして特徴的なのが、2画面の液晶。これはデザイン面のアクセントになるだけでなく、実は操作性の面でもしっかり役立ってくれます。

背面ボタンが最小限に抑えられた「X half」では、スワイプ操作で設定を呼び出す場面も多くなりますが、液晶が2つあるおかげで、そうした操作もスムーズ。

撮影中には、小さいほうの液晶に設定中のフィルムシミュレーション名が表示されるのですが、それがまるで、昔のフィルムカメラにフィルムの箱を差し込んでいたあの感じ。ちょっと懐かしい気持ちになります。

■“ひと手間”が楽しい。撮ることに夢中になれる仕掛け

「X half」の最大の特徴は、「写真を撮る」という行為そのものへのアプローチにあります。なかでも印象的なのが、「フィルムカメラモード」と呼ばれる機能。好みのフィルムを選んで、撮影枚数を36枚・54枚・72枚のいずれかから選択。すると、そこから撮影がスタートします。

一度始めたら、設定した枚数を撮り終えるまで、撮った写真を確認することはできません。そして撮るたびに、カメラ上部のレバーをカチッと引いて、次のフレームへ。

まるで昔のフィルムカメラのような仕様に、最初はちょっと戸惑うのですが、この“手間”が意外と心地よかったりします。すぐに結果が見えないからこそ、シャッターを切る瞬間にちょっとだけ緊張感があって、「ちゃんと撮ろう」って気持ちにもなる。この便利さとは少し離れたこの仕様が、かえって撮影そのものの楽しさや、ノスタルジックな空気を運んできてくれるのです。

レンズは35mm判換算で約32mm。この焦点距離、実は「写ルンです」と同じなんです。そんなところにも、FUJIFILMがこのカメラに込めた、“ライフスタイルに溶け込むカメラ”という意図が感じられる気がします。

やや広めの32mmという画角は、スナップにもポートレートにも使いやすいちょうどいい広さ。スマホからのステップアップでも戸惑うことなく、すんなりと楽しめると思います。

「X half」は、縦構図が基本のカメラです。スマホのおかげで縦の写真もすっかり当たり前になったので、SNSとの相性もばっちり。

顔検出とか瞳AFとか、ちゃんと今どきの機能も入っていて、ピント合わせもスムーズです。そういうところは、きちんと現代っ子。

さらにユニークなのが、「2-in-1」機能です。「X half」という名前の通り、一枚撮影してからフレーム切り替えレバーを引くと、2枚1組の写真として記録されるしくみで、まるでハーフカメラのような楽しさがあります。

あとからアプリ上で、好きな写真を組み合わせることもできます。分割線の太さやデザインも選べるなど、機能面もかなり充実。

ハーフカメラのような2枚1組の構成は、ちょっとした物語を感じさせてくれたり、思いがけない組み合わせにクスッとしたり。撮っているときも、撮ったあとも、楽しみが続く仕掛けです。

■一枚の写真にたどり着くまでの時間ごと、まるっと楽しめるカメラ

「X half」は、写真を撮ることだけじゃなくて、その前も、後も、まるごと楽しませてくれるカメラです。見た目のかわいさや、撮るときのワクワクはもちろん、写りを確認するまでの“ちょっとしたドキドキ”や、誰かに見せたくなるような気持ちまで。そんな全部が、ちゃんとひとつの流れになっていて、気づけば「写真っていいなぁ」と思わせてくれます。

次回は、フィルムモードで撮った写真を見せながら、このカメラがどんなふうに“写真の時間”を広げてくれるのか、お話ししたいと思います。

>> FUJIFILM「X half」

>> 趣味カメラの世界

<取材・文・写真/田中利幸 モデル/久木田帆乃香(@honoka_kukita)  取材協力/富士フイルムイメージングシステムズ>

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