ステーションワゴンは、夢のあるクルマでした。あのデカい荷室をフルに使える趣味的な生活がしたい、なんて思ってきた人もけっこういらっしゃるのでは。
もちろん、いまでもドイツ車を中心に、ステーションワゴンは健在。そのなかで、トヨタ自動車が2025年3月に発売した「クラウン・エステート」は、ユニークなデザインで、新世代のステーションワゴンといえる存在感があります。
クラウン・エステート(エステートとはおもに英国で使われてきたステーションワゴンの別名)におけるデザインの独自性とは、荷室の存在感をあえて控え目にしているところにあります。
■市場のニーズに合わせて復活!
ステーションワゴンの伝統的デザインは、荷室部分に大きなガラス窓をはめて、後席から後ろのスペースの大きさを強調するところにあります。
いまも中古車市場で人気のボルボ200シリーズとか700シリーズ、あるいはメルセデス・ベンツのTシリーズなどは、どっさり荷物を積み込める利便性がセリングポイントでした。
クラウンでは、ステーションワゴンボディが長い間作られてきました。ステーションワゴンをエステートと呼び換えたモデルは、第11世代のクラウンをベースに、1999年から2007年まで作られました。
そのあとはSUV人気に圧されてクラウンのラインナップからエステートは姿を消しました。それが今回、復活。クロスオーバー、スポーツ、セダンとあわせて4車種の展開となりました。理由は市場のニーズに合わせてとのことです。
■外観とは裏腹に荷室570リッターを確保
新型クラウン・エステートはリアクォーターピラーを太くして、先代(第11世代)のエステートとはまったくことなるイメージを盛り込んでいます。荷室部分がことさら目立つようなデザインではありません。
これが、トヨタ自動車の開発者の言う「さまざまなライフスタイルやライフスタイルに応えた」結果なのでしょう。しっかり今っぽくなって、ステーションワゴンとSUVのハイブリッド的なスタイルになっています。
▲後席バックレストを倒して生まれるフラットフロア(写真は撮影のためのカッタウェイ)
▲フラットフロアで2mのものまで収納可能(写真は撮影のためのカッタウェイ)
外観上は荷室が小さく見えますが、実際の容量は後席に人が乗った状態でも570リッターが確保されています。折りたたむと1470リッターに拡大。フラットな床面で、長さ2mの長尺ものも搭載可能です。
■リアコンフォートモードで後席の快適性も確保
ドライブフィールも印象に残ります。今回はハイブリッドの「Z」とプラグインハイブリッドの「RS」の2本立て。価格もちがいますが、街中で乗るならZでも十分。乗り心地もよく、使い勝手のよさが光ります。
いっぽうで、高速や山道なども走り、あるいは楽しみのために走りたい、なんてひとにはRSがおすすめです。加速時はモーターが積極的にトルクを積み増すのでパワフルな印象です。
もうひとつ、感心させられるのが、RSの乗り心地。電子制御技術をうまく使っています。とくにドライブモードに新設された「リアコンフォートモード」が注目です。
リアコンフォート、つまり後席の快適性を確保するのが主目的です。ひとつは、アクセルのオンオフでも車体がぴょこぴょこ動かないピッチング抑制機能。もうひとつは、車線変更時など強い横方向のGが発生しそうなとき、乗員が揺さぶられないようにする機能であります。
横Gが出そうなときは、ステアリングホイールの切り方や速度などさまざまな状況を勘案して、コンピューターが後輪を操舵。適切な舵角を与え、Gの発生を抑えるのです。
後席でなくても、ドライブしていても、リアコンフォートモードの恩恵を受けることができます。ステアリングホイールを操って走るとき、RSの車体のスムーズな動きはたいへん気持ちよいのです。
以前はステーションワゴンといえば、荷物がたくさん積めるぶん、足回りを硬めに設定して、と実用性が強調されたモデルでした。そのイメージを変えたのが、ポルシェが開発に携わったアウディRS2(1993年)で、スポーツワゴンの市場を開拓。ボルボも850T5-R(95年)で続きました。スバルも得意な分野です。
▲インプレッサ・スポーツワゴンWRX STiバージョンⅢ(1997年)
これからスポーツワゴンの市場が大きくなっていったら、クルマの世界がまた面白くなるような気がします。
【Specifications】
Toyota Crown Estate RS(カッコ内はZ)
全長×全幅×全高:4930×1880×1625(4080×1755×1515)mm
ホイールベース:2845mm
エンジン:2487cc直列4気筒 プラグインハイブリッド(ハイブリッド)
駆動:全輪駆動
最高出力:140kW(130kW)+モーターF134kW、R40kW
最大トルク:236Nm(219Nm)+モーターF270Nm、R121Nm
燃費 :20.0km@L(20.3km@L)
乗車定員:5名
価格:810(635)万円
>> トヨタ自動車
<文/小川フミオ>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/680473/
- Source:&GP
- Author:&GP
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