“本当に好きなことは仕事にしない方が良い”といった論調の延長線上によく聞くのが、メーカーなどモノづくりを行う側の人間として、“マニアは不要”という意見である。マニアは採算を度外視して自分が好きなモノを作りたがる、あるいは視野が狭いといったネガティブな見地からによるものである。
今や、自動車も白物家電化が進み、車内が広くて燃費が良ければ見てくれなんてどうだっていいい、という意見が大多数を占めるようになりつつあるのも事実。自動車に趣味性やステイタス、速さ、あるいは運転する楽しみを求める層は減りに減り、かつての花形であったスポーツカーたちも、すでに看板を下ろして久しいという車種が多数存在する。
そう聞くと、前述したように自動車メーカーの“中の人”がクルマ好きやカーマニアである必要性も薄らいでいくようにも思え、実際にそうした傾向は強まりつつあると聞く。
しかし、古くからのクルマ好きであれば、せめて趣味性の強いスポーツカーだけでも、クルマ好きやカーマニアが開発に携わっていて欲しいと願うのは至極当たり前のこと。数ある日本の自動車メーカーの中でも、そんな願いをしかと受けとめているのが、ここのところ何かと話題に上る日産である。
■R35やRZ34にもこのクルマのDNAは受け継がれている
日産は10年ほど前から、GT-R(R35)や現行フェアレディZ(RZ34)のチーフ・プロダクト・スペシャリスト(商品企画責任者)である田村宏志氏を比較的柔軟な姿勢で“ひとり歩き”させてきたイメージがある。田村氏は日産自動車入社後、オーテック(現在の日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社)の出向時代にスカイラインの父と言われる名エンジニアの櫻井眞一郎氏の薫陶を受け、プライベートでも免許取得後すぐに自身の手で愛車のスカイラインやフェアレディZのチューンナップを手掛けるなど、大のクルマ好きとして知られる人物。その経歴や、愛車遍歴などは雑誌やネットニュースなどにも広く開示されており、日産スポーツ車ファンにとっては、氏の存在がある意味、日産の良心として心の拠り所になっているといっても過言ではない。
現在は開発の現場を退き、日産のブランドアンバサダーという立場にある田村氏だが、氏の愛車として多くの人が知るのが、一見ノーマル然としていながら、実はクローズドの高速周回路で310km/h以上の最高速度を叩き出したモンスターR32 スカイラインGT-Rである。
新車時から保有し、自分の手で設計した高効率マフラーの装着他、種々のチューンナップを行いながら現在まで乗り続けているという。新車時からの横浜ナンバーも継続されており、「もしかしたら湾岸線に出没した個体では」という噂もありながら、それを否定も肯定もしない氏がR35やRZ34のチーフ・プロダクト・スペシャリストを務めたこともまた日産スポーツ車ファンを喜ばせたのである。
今回、メイクアップがモチーフに選んだのは、田村氏が新車時から最高速310km/hオーバーマシーンへと育て上げたR32 スカイラインGT-Rである。綿密な実車取材を行い、R34スカイラインGT-R用のホイールやそのスポーク越しに覗くN1耐久仕様(現・スーパー耐久)のブレンボ製ブレーキやNISMO用エアダクト付きバンパー、フードトップモール、氏自らが設計を行ったとされるワンオフマフラー、大容量インタークーラーの他、やや下げられた車高など細部まで再現されている。
ステッカー類も、エンジンチューンを行ったペントルーフ、首都圏の高速道を駆け抜けたとも言われるチーム「MID NIGHT」のものなど、がしっかりと確認できる。
田村氏を知る方には待望の、知らない方には知る価値のある1台を是非机上に1台飾ってみたいところだ。
>> メイクアップ
<取材・文/モデル・カーズ編集部、写真提供/メイクアップ>
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- Original:https://www.goodspress.jp/columns/680866/
- Source:&GP
- Author:&GP
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