ホンダが6月20日に発売した電動スクーター「CUV e:(シーユーブイ イー)」。ホンダは2023年に原付一種の「EM1 e:」を一般販売モデルとして導入していますが、今回の新型は原付二種に分類されます。昨今は原付一種よりも原付二種の方が販売台数が伸びており、いわばこちらが“本命”といえるモデル。どんなマシンに仕上がっているのか試乗してきました。
■初期費用を抑えて購入も可能
「CUV e:」の定格出力は0.98kWで最高出力は6.0kW(8.2PS)。原付二種らしく十分なパワーがあり、最高速度は83km/hとアナウンスされています。バッテリーは交換式の「ホンダモバイルパワーパックe:」を2個搭載。航続距離は60km/h一定走行(国土交通省届出値)で57km、欧州届出値であるWMTCクラス1では72km走行後、最高速度を抑えることで79.8km走行できるとのことです。
注目したいのは価格です。「ホンダモバイルパワーパックe:」2個と充電器を含む価格は52万8000円。全国で利用できるCEV補助金3.5万円が適用され、さらに東京都では15.7万円の補助金が利用できるので、33万6000円で購入可能です。
また、バッテリーを含まない車両のみの価格は20万200円。これにCEV補助金3.5万円、東京都の補助金6.7万円を利用すると9万8200円と、10万円を切る価格で入手が可能です。もちろん、走るためにはバッテリーを入手しなければなりませんが、メーカー各社とエネオスが設立した「Gachaco(ガチャコ)」というサブスクサービスを登録すれば月額5060円〜(バッテリー2本分)で利用できます。ちなみに、この利用料についても1400円×36ヶ月という助成が利用可能です。
「ガチャコ」のサービスは、街中に設置されたステーションに行けば充電済のバッテリーと交換できるので、充電時間を気にせず走行できるというもの。ステーションは東京と大阪を中心に現在53箇所設置されていて、今後も拡大が見込まれています。
サブスクを利用して導入費用を抑えられるというのは電動バイクならでは。バッテリーを購入すると劣化も気になるところ。その点を心配せずに済むのも利点です。東京都のみですが、10万円を切る初期費用で購入できるとなると、かなり魅力的に感じられるのではないでしょうか。
■キビキビした走行性能も魅力
実際に走らせてみると、乗った感覚もかなり高級感のあるものでした。電動なのでエンジン音がせず静かに走行できるのは当然ですが、サスペンションも減衰力が効いていて、荒れた路面や段差などを乗り越えても底突きすることなくシットリとした乗り心地。静音性が高い電動バイクだと、サスペンションの底突き音や車体のきしみが気になってしまったりしますが、そうした音が耳に届くこともありません。スマートキーを採用している点も高級感に一役買っています。
動力性能は街乗りには十分以上。電気モーターは低回転域で最大トルクを発揮できるので、8PSという最高出力から想像するより発進加速はかなり俊敏です。特に、3種類から選べる走行モードを「スポーツ」にしておくと、信号ダッシュで他車を置き去りにするようなことも可能。最高速度も高速道路に乗れない原付二種としては不満を感じることはないでしょう。
こういうスクータータイプの電動バイクでは、ホイールに組み込まれたインホイールタイプのモーターを採用することが多いですが、「CUV e:」はエンジン付きスクーターのようなスイングユニット部分にモーターを搭載。しかも、モーターそのものまで自社で開発しているとのことで、ホンダの力の入れようが感じられます。
また、モーターはエンジンのような振動がないことから、フレームとパワーユニットの間にあるリンク機構を廃止しているとのことで、それもダイレクトな加速感やハンドリングに効いているようです。毎日の通勤などにはもちろん、休日にはちょっとしたツーリングに出掛けても楽しそうな走行性能といえます。
■ナビゲーションも利用できる
もうひとつ魅力的に感じたのが、このマシンから採用された「Honda RoadSync Duo(ホンダ ロードシンク デュオ)」というコネクテッド機構。
車両とスマートフォンを連携させることで、フルカラーの7インチディスプレイにナビゲーションを表示したり、インカムを繋いで音楽を再生したりできる機能です。
ナビゲーション機能では、近くの「ガチャコ」ステーションを検索できるので、出先でバッテリー残量が少なくなってきても安心。実際にナビゲーションを利用しながら走ってみましたが、案内も正確でわかりやすく(インカムで音声案内も聞ける)、リルートも早いので実用性は高いと感じました。
最近はスマホのナビアプリを利用するライダーが多いですが、筆者はハンドルまわりにスマホを取り付けるのがあまり好きではないので、車体のディスプレイに表示できるのはスマートに思えます。スマホを収納できるボックスも装備されていて、内部にUSBポートもあるので充電も可能。ちなみに、スマホの充電が切れたとしても目的地まではナビゲーションを続けてくれるそうなので、その点でも安心できます。
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原付一種の「EM1 e:」に試乗した際、「完成度は高いけれどこれで原付二種だったら」と感じたのですが、同様の声は結構多かったとのこと。それもあって原付二種の「CUV e:」には期待していたのですが、実際に乗ってみると期待以上の完成度でした。走行性能が高いことに加えて、電動ならではの購入方法がある点や、ナビゲーションが利用できること(しかも完成度が高い)など、従来のエンジン車にはなかった魅力も備えています。単なるエンジン車の置き換えではない、新たな電動車の楽しみ方が味わえるマシンです。
>> ホンダ「CUV e:」
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/685844/
- Source:&GP
- Author:&GP
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