日本が暑すぎるから、暑い国のサンダル事情を見にベトナム・ハノイへ

【アジア サンダル紀行/ハノイ前編】

もはや温帯ではなく亜熱帯と化した日本の夏。35℃超えの日も当たり前になった今、暑さ対策グッズが次々と登場し、日陰を求めながら道を歩くことも増えた。

暑い、おそろしく暑い。なぜこんな日に自分は靴を履いているのだろう。そう思うこともよくある。

仕事で出かけているのだから靴を履くのは当然なのだが、強烈な日差しで明るく照らされる靴に目をやると、思わず愚痴をこぼしたくなる。サンダル履きたい…。

そう、暑い日はサンダルを履きたいのだ。

アスファルトから立ち上る陽炎を見た時にふと「暑い国の人たちってサンダルだよな。どんなサンダル履いてるんだろう」と考えてしまった。暑くなった国に住む者として、暑い国の人たちの足元が気になってしまったのだ。

思いついたら行くしかない。行けば何か暑い日の過ごし方のヒントが見つかるかもしれない。見つからないかもしれないが…。

ということで向かったのはベトナムの首都ハノイ。

▲チケットが安かったので、エアチャイナ上海経由でベトナムへ

常夏のホーチミン市とは違い、冬はしっかり寒くなるベトナム北部の都市の人々は、いったい普段何を履いているのだろうか。

 

■クラクションがお出迎え

5月中旬の夕方。ハノイ郊外にあるノイバイ空港の建物から出ると、思ったより暑くなかった。小雨模様だったこともあり、同じ日の東京と比べるとたしかに湿気はあるが、そこまで暑さは感じない。

▲ノイバイ国際空港

天気予報では、この日の最高気温は34℃。日本なら立派な真夏日だが、東南アジアに来ているという感覚があるからだろうか、そこまで暑いとは感じなかった。しかも翌日以降の最高気温は29℃、30℃、31℃と、暑いがそこまでつらくはないだろう日が続く。

サンダルを見に来た者としては少々不安になったわけだが、そんな気持ちはすぐさま吹っ飛んだ。周りを見るとサンダルの人だらけだったのだ。さすが東南アジア。こうでなくっちゃ。

86番の路線バスに乗り込み、旧市街近くの宿へ。

▲旧市街に行くには便利な86番バス。なぜ国旗が飾られていたのはわからない

何もない郊外の景色から市街地へと入ると、目に飛び込んでくるのはバイクバイクバイク、バイクだらけの道。そして間断なく響くクラクションがベトナムへ来たと感じさせてくれる。

ボーッと外を眺めていると、ごちゃついた街の横でバスが停まり、運転手がガラガラの車内を歩き、最後部に座る自分の近くまで来て話しかけてくれた。

「Here is Old Town」

あ、そうなんだ。じゃあ降りるか。サンキュー、カムオン、とお礼を言いバスを降りる。Googleマップを確認すると、旧市街の東の端らしい。終点のハノイ駅まで乗ろうと思っていたが、せっかく教えてくれたんだから、そこで降りるのも悪くない。

宿は旧市街を突っ切って逆側になる。どうせこちらはリュックひとつ。プラプラ散歩しながら向かうことに。

少し暗くなってきた旧市街は、バイクと観光客でごった返していた。世界中からやってきた観光客と、人混みを縫うように走るバイク。建物の前にはプラスチックの小さな椅子とテーブルが無造作に置かれ、おいしそうに食事をする人たち。東南アジアの混沌とした空気を浴びて、テンションが上がるのを感じる。

▲ホアンキエム湖にあったベトナム戦争終結50年のモニュメント

有名なホアンキエム湖の横を歩いたりしながら30分ほどかけてゆっくりと宿に到着。荷物をおろしひと息ついたら、リュックに忍ばせたビーサンに履き替えて、食事をするべく街へ出た。

▲ホアンキエム湖周辺は夜になっても人が多い。象徴的な建物である通称“サメの顎ビル”は取り壊される予定らしく真っ暗だった

宿の近くの適当に入った店でブンチャーを食べ、その後旧市街をぶらりしていたが、雨が強くなってきたのでこの日は終了。

 

■観光地から住宅街に移動

2日目。この日から本格的にサンダルリサーチを始めることに。

まずは宿の人から。

▲この建物の3階が宿。バルコニーから下の交差点を眺められる

ちなみに宿は民泊のような部屋で、1階で雑貨などを販売しているアーティストの女性が貸し出している。

部屋からおりて出かける前に、挨拶ついでにサンダルについて話を振ってみた。

「ベトナム人はおしゃれが好きだから、サンダルも靴もどっちもたくさん持ってるよ」

彼女の足元を見ると編み上げブーツ。たしかにおしゃれだが、アーティストということを考えると…。

お礼を言い、街へ。この日は旧市街だけではなく、さまざまな場所を歩き回ってみることに。

有名なトレインストリートの横を抜け、一路西へ。

歩道の床屋やレーニン像を眺めつつ、街の人々の足元をチラ見しているが、そもそも旧市街を抜けると、さほど歩いている人がいないのだ。おそらくみんなバイクに乗っている模様。あとで調べてわかったのだが、昨年の調査によるとベトナムのバイク保有率はなんと77%! 全人口の3/4がマイバイクを持っているのだ。そら、バイクだらけの道になり、そこらじゅうでバイクが停まってるような状態にもなるわけだ。

ホーチミン廟を遠目に眺めつつ、バイクファーストな状態の道を歩きながら、2021年に開通したハノイ・メトロ2号線の駅へ。

ここまでの道行く人のサンダル率は約50%といったところ。まだそこまで暑くないからなのか、歩く人はサンダルじゃ不便だからなのか、予想より少なくて少々困惑。

▲こんな道多し

とはいえ、たしかにバイクではなく歩く人にとっては、ハノイの道はたしかに靴を履きたくなる。なにせボロボロなのだ。この状態の道をある程度の距離歩くとすると、サンダルじゃしんどい。そもそも歩く人自体が少ないわけだが…。

ハノイ・メトロ2号線の始発駅であるカットリン駅(Ga Cát Linh)から、真新しい車両に乗り込む。駅も車内もガラガラ。まだ先行開業という部分もあるので仕方ないのだろうが、少々さびしい。

そんな中、向かい側に座った大学生らしき若い男性4人組の足元はすべてサンダルだった。

いかにも学生っぽい雰囲気にはサンダルはよく似合う。いいね。でも東南アジアだからというよりは、学生だからという気もするが(笑)。

どこまで乗るかも決めていなかったので、途中のフンコアン駅(Ga Phùng Khoang)で下車。ちなみにハノイ・メトロ2号線、メトロだけどずっと高架です。

駅の周辺はどうやら住宅街の模様。上をメトロが走る幹線道路から横に入ると、3~4階建ての集合住宅がずらっと並んでいる。1階はなにかしらの店舗だ。

観光地である旧市街周辺とは異なり、ハノイの人々が暮らす街に来ても、バイクはバンバン通るがやはり歩く人は少なかった。いやホント、バイク天国だ。

住宅街を彷徨っている途中で見つけたベトナムのカフェチェーン、コンカフェ(Cộng Cà Phê)で休憩。

チェーン店なのでスタッフはみな制服&靴だ。コーヒーを持ってきてくれたスタッフの男性につたない英語でいきなり「ちょっと質問していいですか?普段は何を履いてますか?」と聞いてみたが、まっすぐ困惑の表情をされたので、即座にカムオン(Cảm ơn)とお礼を言い視線を外した。この質問、案外難しい。

▲吹き抜ける風が気持ちいいテラス席にて休憩

ちなみにおそらくだが、ベトナム語でありがとうという意味のカムオン、そのまま言うとまったく通じない。どうも「カムゥン」ぐらいの発音らしいということを、その後知った。おそらくコンカフェの彼も、なんか外国人がわけわからんこと言ってて困った、ぐらいの感じだったのだろう。ごめん。

 

■ベトナムの人がサンダルを履く理由を考察

そろそろ宿のある旧市街に戻ろうかとGrab(東南アジアでは定番の配車アプリ)でバイクを呼ぼうとしたが、そこで思いついたのがバスだ。路線バスの車窓から街を眺めてみると、いろいろとわかることがあるかもしれない。

そこでGoogleマップの経路検索をしてみたところ、どうやらバス1本で宿の近くまで戻れることがわかった。

▲幹線道路はクルマが多いが、バイクも結構走っている

路線バスの乗り方はたぶん昨日空港から乗ったバスと一緒だろうと、バス停へ。

バス数本をやりすごし、10分ほどで目当てのバスがやってきた。

▲その街の雰囲気を感じられる路線バスが好きだ

一番後ろの席に座り、車窓を眺める。とにかくバイクが多い。クルマもいるが、その隙間をバイクが縦横無尽にすり抜けていく。これぞカオス。

そして信号待ちで停まっている時にふと気がついた。バイクに乗ってる人がみなサンダルだということに。道端のカフェで座っている人たちの足元もみなサンダル。

歩いている人は半分ぐらい靴を履いていたが、さほど歩かない人にとってはやはりサンダルなのだろう。言われてみれば当たり前のことだが、そりゃあサンダルのほうがラクに決まっている。それにベトナムの家は靴を脱いで上がるところがほとんどだそうだ。さらに雨季がある。

▲老若男女、誰にとっても移動手段はバイク

ほぼバイク移動、家では脱ぐ、雨が降る、暑い。この4つから考えるとサンダル、しかもつっかけタイプのモノを履くのは当然の話なのだ。そしてバイク以外は今の日本にも当てはまるわけだが、日本の場合、都市部では移動に電車を使うわけで、満員電車にサンダルで乗り込むというのはなかなか勇気がいる気もする。とはいえ女性にはミュールを履いている人もいるわけで、だったら男性がサンダルを履いてもよさそうなものだが、朝のラッシュ時に見かけることは少ない。そこはやはり仕事でサンダルはNGという部分が大きいのだろう。

40分ほどで旧市街近くのバス停に到着。料金は1万ドン(約60円)。やはり街の雰囲気を見るには路線バスはいい。

ここまでさまざまな場所でサンダルをチラ見してきたわけだが、せっかくなら一足ぐらい買ってみようかという気分になってきた。

とはいえ、どこに売っているのかわからないので、宿のオーナー(アーティスト)に聞いてみると

「たぶんあっちのほうじゃないかな」

とざっくりとした答えが。うん、そうなんだね。じゃあちなみに、人気のサンダルってどういうの?

「男性モノはよくわからないけど、やっぱりブランドものが人気なんじゃないかな。ナイキとか」

うん、そうなんだね。ありがとう。とりあえずごはんでも食べに行くか。

*  *  *

サンダル店で困惑し、あるサンダルを偶然発見して興奮する様子は後編にて。

<取材・文/円道秀和(&GP)

円道秀和|&GP編集部所属。担当ジャンルはITデジタル、オーディオビジュアル、ホビー他。好きなものはコーヒー、旅行、キャンプ、乗り物全般、カレー、ラーメン、アジア料理、小さいギア。好きが高じてSCAJコーヒーマイスターの資格を取得。

 

 

 

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