キヤノン「PowerShot V1」は写真好きも満足できる“動画コンデジ”という絶妙な一台だ

【趣味カメラの世界 #26】

動画撮影向けのコンパクトカメラとして展開されている、Canon(キヤノン)の「PowerShot V」シリーズ。今回はその最新モデル「PowerShot V1」(14万8500円)を紹介します。

Vlog用途を意識したモデルではありますが、広角から標準域をカバーするズームレンズに加え、軽量なボディ、そして精度の高いAFや操作性など、スチール撮影にも応用できそうなスペックを備えています。

そこで今回は、フォトグラファーの田中さんにスチール撮影を中心に試しながら、動画撮影も含めてその可能性を探ってもらいました。

監修・執筆:田中利幸(たなかとしゆき)|ファッション誌などでブツ撮りやポートレートを中心に活動するフォトグラファー。カメラ・ガジェット好きで自身で運営するブログ「Tanaka Blog」において、カメラやガジェットに関するちょっとマニアックなことを書いている。

 

*  *  *

■動画向けと思いきや…スチール派にも響く“隠れた実力”

動画機として注目されがちな「PowerShot V1」ですが、スペックをよく見てみると、スチールでもけっこう頼りになるポイントがちらほらあります。

まず気になったのが、35mm換算で16-50mm相当のズームレンズ。広角から標準域までをカバーしていて、風景やスナップはもちろん、ポートレートにもなかなか向いている画角です。特に広角側の16mmは、背景をうまく取り込めるので、ダイナミックなポートレートを撮りたいときに重宝します。

開放F値はワイド端でF2.8、テレ端でF4.5。スペック表だけ見るとちょっと控えめかな? と思うかもしれませんが、1.0型より大きい1.4型センサーが入っているので、意外としっかり背景もぼかせます。いわゆる“スペック以上に写る”タイプ、というやつかもしれません。

レンズの根元にはコントローラーリングが付いていて、これを絞り調整に割り当てておけば、マニュアル撮影時に絞りリングのように操作できるのが便利です。

ボタン類はかなり絞られていて、最初はちょっと物足りないかな? と思ったんですが、カスタマイズの自由度が高くて、結果的には使いやすく感じました。

コンパクトなサイズ感にしては、よく考えられた操作系だなという印象です。

レンズは沈胴式で、電源を切るとスッと縮んで、厚みは約52.5mm。ちょっと深めのパンツのポケットなら、すっぽり入ります。

Vlog向けのカメラではあるけれど、広角〜標準までカバーできて、しかもこの小ささ。正直、日常の“なんか撮りたい欲”を満たすには、すごくちょうどいい気がするんですよね。

■ ポートレートで実感。「PowerShot V1」は写真用途でも想像以上に“アリ”でした

このサイズのカメラで、きちんとポートレート撮影をするのはちょっと新鮮でしたが、軽さのおかげで撮影中のストレスが少なくてすごく快適でした。

一眼に大きなレンズを付けていると、それだけで相手が少し身構えることもあります。でもこのカメラは、スマホをひとまわり大きくしたくらいのサイズ感。

カメラの存在を主張しすぎないから、被写体も自然体でいられて、表情もやわらかくなりやすいんです。ポートレートでは、そういう“撮りやすさ”が意外と大事だったりします。

▲ PowerShotoV1、シャッタースピード1/320秒、F4、ISO100、8.2mm(約16mm:35mm判換算)

写りに関しては、広角側で背景までしっかり入れつつ、パースを効かせたちょっと大胆な一枚に仕上がります。

超広角って、構図が決まればそれだけでインパクトが出せるので、広がりを活かしたカットを撮るときにはけっこう頼りになるんですよね。

▲ PowerShotoV1、シャッタースピード1/320秒、F4.5、ISO100、25.6mm(約50mm:35mm判換算)

テレ端の開放F値は4.5と、そこまで明るいわけではないんですが、しっかり寄ってあげれば背景もちゃんとボケてくれます。そのぶんモデルが引き立って、ポートレートっぽさもちゃんと出せるんですよね。

1.4型センサーって、このサイズ感のカメラとしてはなかなか頼れる存在だなと思いました。

▲ PowerShotoV1、シャッタースピード1/320秒、F5、ISO100、25.6mm(約50mm:35mm判換算)

AFの追従も思った以上に優秀で、モデルが動いていてもちゃんと追いかけてくれました。逆光気味のカットだったのにも関わらず、迷わずピタッと合焦。こういうときに、カメラ任せで安心できるのって大事だなあと、改めて実感します。

▲ PowerShotoV1、シャッタースピード1/320秒、F4.5、ISO100、25.6mm(約50mm:35mm判換算)

▲ PowerShotoV1、シャッタースピード1/320秒、F4.5、ISO100、25.6mm(約50mm:35mm判換算)

▲ PowerShotoV1、シャッタースピード1/320秒、F4.5、ISO100、25.6mm(約50mm:35mm判換算)

▲ PowerShotoV1、シャッタースピード1/320秒、F4.5、ISO100、17.5mm(約35mm:35mm判換算)

▲ PowerShotoV1、シャッタースピード1/320秒、F4.5、ISO100、17.5mm(約35mm:35mm判換算)

本格的にモデル撮影で試してみましたが、想像していた以上に使いやすいカメラでした。1時間ほど街を歩きながらの撮影でも、軽くて小さいから、いつもよりもずっと楽でした。ズームの幅も扱いやすくて、「あ、ここも撮っておこうかな」と、寄ったり引いたり。自然といろんな構図に挑戦したくなります。

スマホみたいなサイズ感なのに、写りはしっかりしていて、背景のボケ感や立体感もちゃんと出てくれる。高感度でもノイズは気にならず、写真としてのクオリティは十分でした。

■せっかくなら動画も。撮ってわかった“V1らしさ”

今回は写真撮影をメインに使ってきましたが、「PowerShot V1」といえば動画が得意なカメラ。というわけで、最後におまけとしてVlog風のショートムービーも撮ってみました。

 

ムービーは、モデルと一緒に街をぶらぶら歩きながら、ポートレート撮影の合間に軽く撮ってみたもの。特に手ブレ補正の効き方がとても自然で、「思ったよりブレてないじゃん」と、ちょっと感心。

10bit Log撮影にも対応しているので、あとから色をしっかり整えれば、映画っぽい雰囲気にも仕上がりそうです。

ちなみに、冷却ファンも内蔵されているので、ちょっと長めの撮影や暑い時期の使用でも安心感があります。

動画撮影時、地味に便利だなと思ったのが、カメラ前面の“タリーランプ”。今まさに撮影してるってことが被写体にも伝わるので、Vlogだけじゃなく人物動画のときにも、ちょっとありがたい機能でした。

動画まわりの機能はさすがにしっかりしているので、写真も動画もまとめて撮りたいときには、こういう一台があると頼もしいです。

■スチール派も思わず手が伸びる。気楽で頼りになる相棒

「PowerShot V1」は、どちらかというと動画用のカメラというイメージがあって、スチールメインの自分にはあまり関係ないかな…と思っていました。しかし、実際に使ってみるとその印象は一変。

広角から標準域までちゃんとカバーできるズームレンズに、ポケットにすっと入るサイズ感。ボタンは最小限だけど、カスタマイズの自由度が高くて、静止画メインでも不便さは感じませんでした。

AFの精度も高くて、写りも文句なし。静止画と動画、その境目をいい感じにゆるく飛び越えてくれるカメラだなと思います。

街をぶらぶらしながら写真を撮って、気が向いたらちょっと動画もイケる…。そんな気軽なスタイルにハマる器用なカメラでした。

>> Canon「PowerShot V1」

>> 趣味カメラの世界

<取材・文・写真/田中利幸 モデル/手塚雄大(@yudai_tezuka)  取材協力/Canon>

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