もし、アナタのワガママな希望を叶えてくれるアパレルブランドがあるのなら?
「シャツの袖をもう少し短くしたモノがほしい!」「あの着心地の良い素材でロング丈のTシャツをつくりたい!」「あの肌触りのいい素材のシャツの身幅をもっとピチッとさせたい!」「この形のシャツの素材を変えたい!」などなど。
ファッションへのワガママな希望って十人十色の人それぞれで、まさに蓼(たで)食う虫も好き好き。そんなアナタの洋服へのワガママを叶えてくれる、夢のような受注生産型ファッションブランドがある。その名も『THE ME(ザ・ミー)』。
今回は、東京は恵比寿にあるオーダー専用店舗に伺ってワガママなオーダーをしつつ、ブランドの成り立ちやどんなシステムでこのワガママの実現を可能にしたのか? などを中心に、いろいろと話を聞いた。
■『THE ME』について
まずは『THE ME』についてのご紹介。
2020年7月にブランドを設立した『THE ME』は、恵比寿にあるオーダー専用店舗にて専門スタッフである“ナビゲーター”に相談しながら、素材選定から細かいサイズ補正、ディテールの変更まで、着る人の“ワガママ”を叶えてくれる、まさに自分だけの一着を作ることができるというファッションブランドだ。
▲恵比寿にあるオーダー専門のお店。まずはココでさまざまなワガママをオーダー
今回、ワタクシのワガママなオーダーを聞いていただくため、『THE ME』のお店に伺った。担当してくださったのは、同ブランドのナビゲーターである工藤主税(くどう ちから)さん。
▲もともとはドレス畑出身というナビゲーターの工藤さん
工藤さんによれば、テーラーのような体に合わせたジャストな採寸をしていくのではなく、実際にお客さんにサンプルを着てもらい、さまざまなコミュニケーションを取りながら、その人のワガママのイメージに対してちょうどいい感じをつくり出し(チューニング)、具現化させていくのだそう。
まずは、ワガママオーダーをする前に工藤さんに、『THE ME』というブランドについてのお話を聞いた。
--『THE ME』とは、一体どういうブランドなのでしょうか?
工藤主税(以下、工藤):『THE ME』は、ワガママにアイテムを選んでいただき、カスタムオーダーができるというブランドです。高品質で国産のものを、価格もお手頃に手に入れられるというのがこの『THE ME』の特徴ですね。
例えば、お気に入りのあのTシャツをもう一度買いたいけど、すでに廃盤になっていたりとか。あの時のあのブランドのあのサイズ感に近いシルエットのオーダーが可能で、シャツでも同じことが言えます。そういった消費者のワガママを可能な限り近づけるというブランドなんです。
名前の由来は、私(ME)に対して冠(THE)をつけて『THE ME』。「本当はどういう服が自分に似合うのか?」という、自分自身のテーマ探しみたいな意味もあるんですよ。
▲お店にはさまざまな種類のサンプルがたくさんならぶ。コチラは「THE SHIRTS」ライン
--「THE TEE」と「THE SHIRTS」というふたつのシリーズがありますね。
工藤:「THE TEE」はTシャツのラインで、「THE SHIRT」はシャツのラインです。どちらも半袖から長袖の袖丈、着丈も短めからワンピースまで、そして首回りも細かくサイズ補正可能で、お好みのデザインにカスタマイズが可能です。また、使用する素材も「THE TEE」は3種類、「THE SHIRT」は5種類の素材から選択可能なんですよ。
--どのような素材があるのでしょう。
工藤:「THE TEE」は、糸の段階から1本ずつガス焼きをした後にシルケット加工をおこなった毛羽のない上品な光沢が特徴のSupima Cotton(スピーマコットン)、適度な肉感やソフトな風合いがあり、肌にやさしくなじむStretch Rayon(ストレッチ・レーヨン)、そして、通気性と熱伝導率にすぐれ、夏でも肌離れのいい快適な着心地をキープするTwisted Cotton(ツイステッド・コットン)の3種類。
▲コチラが光沢があるSupima Cotton素材のサンプルTシャツ
▲Stretch Rayon素材のサンプル
▲Twisted Cotton素材のTシャツ
そして「THE SHIRT」には、オーガニックコットンを高密度に打ち込んだタイプライター素材のOrganic Cotton(オーガニック・コットン)、インドでつくられる希少かつ最高級の綿を使用したSuvin Cotton(スビン・コットン)、Suvin Cottonと同素材を使用し、光沢感と張り感がある生地のSuvin Cotton Striped(スビン・コットン・ストライプ)、天然素材の風合いに近づけ、ナチュラルな凹凸感を演出したポリエステル100%生地のSoft Broadcloth(ソフト・ブロード)、そして、マシンウォッシャブルをはじめ、消臭、接触冷感、防シワといった“機能的な天然素材”を実現したTech Wool(テックウール)の5種類です。
▲左からOrganic Cotton、Suvin Cotton、Suvin Cotton Striped、そしてSoft Broadclothのサンプルシャツ
▲Tech Wool素材のサンプルシャツ
現在のバリエーションとしては、Tシャツ、シャツ、ジャケット、パンツ。レディースであればスカートワンピース、ショーツからお選びいただけますが、スウェットの展開も開始しています。
--どういった経緯でこのブランドが立ち上がったのでしょうか?
工藤:アパレル業界は、とくに環境破壊産業ワースト2という側面もあり、国内でも毎月着られずに廃棄される量というのもかなりある状態なんですよね。世の中的にSDGsへの高まりもありますし、シンプルに廃棄を減らすというが発端のひとつです。それが大義としてあって、余剰在庫を持つことなく運営できるアパレルブランドの形を模索した結果ですね。
--どのようなシステムで一着からという少ロットでの受注販売が可能になったのでしょう。
工藤:私たちの会社はもともとOEMを中心としたアパレル商社なんです。生産の作業工程の一部をデジタル化させ、連携させて、システムまですべて開発した上で動かせるようにしました。つまり、切って、縫う担当の工場さんと、「その手前まですべて準備しておきます!」という我々と、という形ですね。
すべてがデジタル化されていますので、例えば、お客さまのワガママを調整して打ち込んだもののパターンを自動で出力してくれる。だから、パターンオーダーに近い感じで、気軽に一着からつくれるというビジネスモデルなんです。工場さん側での頻雑な作業が減って、納期も短縮でき、基本的にセールもおこなわない分、価格も抑えられることがメリットです。
--実際にオーダーすると、商品はどのくらいで出来上がるのでしょうか?
工藤:Tシャツだと2週間ほど、早ければ2週間切るくらいでお届けできます。他のアイテムでも3週間くらい。もちろんアイテムによりけりですが、そういう短納期を実現しています。
--ちなみに…どこまでワガママに対応できるんですか?
工藤:それはアイテムによりますね。やはり、お客さまによってさまざまなオーダーがありまして、そこはうまくワガママを聞きつつ、そのなかで「こういう感じも似合うのでは?」みたいな我々からの提案もしながら、お客さまと一緒につくっていきます。でも、みなさん、袖を通すと頭の中のワガママスイッチが入られるみたいで、ご自身がナニを基準に服を選んでいたかの再整理をされる方が多いみたいなんですね。そこに関しては、まったくもって画一的ではなく、ひとそれぞれというのもおもしろいです。
--例えば、柄が違う生地の組み合わせも可能ですか?
工藤:それはできないです。廃棄ロスも考えているので、あまりにも趣向性が強いオーダーは残念ながらお断りしているんですよ。
--工藤さんはもともとドレス系ファッション畑のご出身とのことですが、サイズの採寸などの調整、補正はどのようにされていますか?
工藤:実際にサンプルを着ていただきますね。おそらくそれが一番イメージつきやすいんですよ、お客さまにとっても、自分にとっても。だから、まずは着ていただいて、お互いコミュニケーションをとりながらイメージを整えていくという感じです。
▲コチラが「THE TEE」ライン」
--コチラの店舗は、どのような感じで運営されているのですか?
工藤:このお店は予約制で、基本的には60分と90分という時間設定の中で補正──我々はそれをチューニングと呼んでいるのですが──チューニングさせていただきます。ジャストがいい人、ダボダボがいい人、好みも人それぞれですので、自分自身の好みを体験してもらうというのがこのお店のスタイルです。
--今後のビジネス面における目標や展望は?
工藤:まずは知ってほしいというのが第一の目標ですね。ビジネスとして、あらたか規模はつくりたいと考えていますが、まだこういうオーダーへの価値観がより普通になってほしいというフェーズですので、「こんなのもあるよ!」くらいで構いませんから、いろいろな人におもしろさを知っていただきたいです。そこがスタートですね。
■チューニング開始
ワタクシのワガママなイメージテーマをもとに、さっそく工藤さんにチューニングしていただきました!
▲チューニング中の工藤さん
工藤:さて、本日はどのようなワガママオーダーを考えていらっしゃったのでしょうか?
--とりあえず、ロングシャツの形がいいかなと思っていまして…イメージ的には映画の『酔拳2』かなと。
工藤:ちょっとまってください(笑)!全然イメージがつかないんですけれど。酔拳ですよね? キョンシーではなく??
--キョンシーじゃないです(笑)。ジャッキー・チェン的な、カンフーシャツ的なロングシャツですね。
工藤:では、まずは素材と色の選択ですが、どういたしましょうか。
--生地を触ってみた感じで、素材はTech Woolが良さげですね。
工藤:Tech Woolは形状記憶性もあるのでシワになりづらく、接触冷感だから夏先までは着られるので最適かと思います。まずは、ロングシャツのサンプルを着ていただきますが、色はどうします?
▲コミュニケーションをとりながら、クリップを使用して裾部分のアップする長さをチューニングしていく工藤さん
--黒か白か…悩み中です。
工藤:黒の方が見た目的に落ち着いた雰囲気になるのと、ロング丈なのでシルエットがキレイになるかとおもいます。ではまず、黒のサンプルを着ていただきますね。
裾はフラットの方がカンフー感が出るのかなと。あとはAラインのコートみたいにした方が、着た感じでほどよい男感が出るかとおもいます。幅感は広めにして、ちょっとゆったり目にしましょう。襟はスタンドの方がいいですよね。
こんな感じでいかがでしょう?
▲工藤さんとのコミュニケーションによって「こんな感じ!」という雰囲気が、とりあえず完成
--太ももあたりにフロントポケットはつけられないんですか?
工藤:つけられないです(笑)。
--ワガママすぎてスミマセン(笑)!
工藤:私のなかでも今回のワガママは予想外でした。やはり服を知っている方はこっち方面にいくんでしょうね。
もし、失敗だったら、メルカリで買ったカンフーシャツをお渡しします(笑)。
--えーっ(笑)!!
とりあえず、仕上がりが楽しみです!
(後編につづく)
【店舗情報】
THE ME
営業時間:11:00-19:30
住所:東京都渋谷区恵比寿南 1-17-15 VORT 恵比寿 VI 2F-B
定休日:月曜日/火曜日
<写真&文/カネコヒデシ(BonVoyage)>
カネコヒデシ|メディアディレクター、エディター&ライター、ジャーナリスト、DJ。編集プロダクション「BonVoyage」主宰。WEBマガジン「TYO magazine / トーキョーマガジン」編集長&発行人。ニッポンのいい音楽を紹介するプロジェクト「Japanese Soul」主宰。 バーチャルとリアル、楽しいモノゴトを提案する仕掛人。http://tyo-m.jp/
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- Original:https://www.goodspress.jp/columns/689905/
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