ヴィブラムへのソール交換で、シューズも人生もバージョンアップさせてみた!【前編】

オシャレの基本は足元から。どれだけいい服を着ていても、足元がボロボロだったら、やはり足元を見られるコト間違いナシ。

なーんて、もっともらしいことを書いてみたが、かく言うワタクシも、歩きすぎてシューズはけっこうボロボロ気味だったりする。せっかくのお気に入りでも、やはり履きつづければソールはヘタれ、経年劣化の破損などでボロボロになってしまうのがシューズである。それはスニーカーも革靴も一緒。

しかもスニーカーにおいては、ソールがすり減っただけ、加水分解などの経年劣化だけでシューズ自体をポイっと捨ててしまうのは、なんともモッタイナイ!

「そうだ!この機会にヴィブラムのソールに交換してみよう!!」と、思ったが吉日。まずは相談しよう、そうしよう! というわけで今回は、東京は日本橋にある三越本店にお店を構える靴修理専門店「RESH.(リッシュ)」が運営する「Men's Shoes Care & Repair Counter 日本橋三越本店」に伺って、お気に入りのシューズの修理&バージョンアップを行った。

■相談からはじまった壮大なソールの世界

今回、ワタクシが「RESH.」さんにご相談したのは、ファッションブランド『MOUNTAIN RESEARCH(マウンテンリサーチ)』と、老舗スポーツブランド『MIZUNO(ミズノ)』とがコラボレーションした、「INFINITY RING MOC(インフィニティリングモック)」シリーズのホワイトカラー。

▲こちらが今回、ソールの交換をお願いした『MOUNTAIN RESEARCH』と『MIZUNO』とのコラボシューズ「INFINITY RING MOC」の修理前の画像

『MIZUNO』のランニングシューズ用ソール「INFINITY WAVE (インフィニティ・ウエーブ)」を搭載したリングモカシンタイプで、ちなみにアッパーの素材には野球グラブ用のレザーを採用したというシロモノ。

コチラ、10年ほど前に購入したモノだが、あまりの素晴らしい着用感に、じつは色違いでもう一足持っているホド。だが、気をつけていたものの履きつづけていたために、ついに劣化でソールのブラスティック部分の一部が割れてしまったのだ。

▲ご覧のように左足のかかと部分(写真上部)の茶色いプラスチック製ソールにヒビが

残念ながらすでに廃盤モデルのため、メーカー側での新規の購入や修理はむずかしい状況。しかし、アッパー部分はまだまだイケる感じなので、あっさり廃棄してしまうにはさすがにモッタイナイ。ということで、ソールを交換してみるコトを検討。それならば、せっかくなのでヴィブラムにソール交換してみようと。まずは出来るのか? 出来ないのか? を相談してみるコトに。

さっそく、東京は日本橋にある三越本店2階にお店を構える靴修理専門店、「RESH.」(リッシュ)が運営する「Men's Shoes Care & Repair Counter 日本橋三越本店」にシューズを持参した。

「RESH.」は、"靴を修理して履く文化を創る"をモットーに、34年にわたって有名ブランドのシューズをはじめとする、さまざまなシューズをリペアしている靴修理専門店である。

▲お店にはさまざまなヴィブラムのソールのサンプルモデルが展示されている

ちなみにコチラの店舗は、ヴィブラムが一般ユーザー向けのサービスとしてスタートさせたリペアカウンター、ヴィブラム(Vibram) 「ソールファクター(SOLE FACTOR)」で、イタリアのアウトソールメーカー、ヴィブラム(Vibram)公認のカスタマイズサービスだ。現在、日本国内でこのサービスを提供しているのは日本橋三越本店のみ。従来型のソールリペアにくわえ、ファッションや好みに応じてイメージチェンジしたり、機能性を高めるカスタマイズサービスを提供しているのだそう。

今回、ワタクシのシューズを担当してくださったのは、榊 圭(さかき・けい)さんと高田清貴(たかだ・きよたか)さんのおふたり。

▲向かって左が高田さん、右が榊さん

ちなみに、高田さんは「SOLE JACK」というスニーカーリペアに関するインスタグラムの運営もしている、いわばスニーカーリペアマスターだ。

そんなワケで、おふたりにシューズリペアやスニーカーのソール交換に関するお話を伺いつつ、可能であればヴィブラムへのソール交換でシューズのバージョンアップを図ってみるコトに。

まずはシューズリペアに関する質問をいくつかしてみた。

--コチラの店舗では、年間でどのくらいの足数がヴィブラムのソールに交換されるのでしょうか?

高田清貴さん(以下、高田さん) ココだけでいっても50足くらいですかね。

--男性と女性の割合的には?

高田さん コチラの店舗はメンズフロアーにあるということで、やはり男性の方が多いですし、「RESH.」全体で見ても男性のお客さまのほうが多いですね。レディースですと、伊勢丹新宿本店 婦人シューケアコーナーの店舗はレディースオンリーですので、女性のお客さまは増えています。ただ、婦人フロアーにあるのでスニーカーやトレッキングシューズには対応しきれないのですが、ご相談いただく機会はだいぶ増えています。

--女性のシューズリペアのイメージですと、ソール交換というよりはハイヒールなどの革靴の裏貼りが多いイメージですね。

高田さん たしかにヒールのかかとの貼りが多いですね。それに、まだスニーカーのソール交換自体をやれることを知らない女性の方が多い状況です。

2024年にatmos(アトモス)でのリペアイベント「Vibram SHOES REPAIR POP-UP」をおこなった際、女性のお客さまが「本当にできるんだ!」とそこで認知されていましたから。だから、もっと広めていきたいですよね。実はインスタの方でも、女性の方からのお問合せが増えている状況で、とくにトレッキングシューズはちょこちょこ来ています。母数は革靴の方が多いとはいえ、増えている段階だと考えていますので、訴求活動はつづけていきたいと考えていますね。

--消費者側として気になるところは、「これって本当に直せるの?」という部分だとおもうのですが。

高田さん そうですね。そこは難しいところでして、私たちとしては引き出しは持っていますのでどうにかするという感じです。それこそラバーブーツでアッパーももうバキバキになっていなければ、いくらでもやりようはある。ただ、おっしゃるとおり、たとえばかかとが少しちびた(靴底(ソール)がすり減って薄くなる状態)だけで「ダメだ!」となってしまう方もいらっしゃいますので。そこはさまざまな修理事例を発信しつづけるしかないのかなと。それが口コミになって、店舗に来ていただいて相談だけでもしてもらえるようなスタイルが確立できれば、あとはコチラでなんとかしますので、まずは「持ってきてください!」という感じです。

▲店頭カウンターにはヴィブラムへのソール交換、修理などさまざまな事例のほか、ヴィブラム「ソールファクター」の認定書が

--ワタクシ自身、今回のシューズに関しては、もともとのソールがかなり特殊なものというコトもあって、最初に「難しいのかな?」という考えが頭にありました。

高田さん ボクらはメーカーではありませんので、これとまったく同じスペアソールは持っていませんから、たしかに元通りとなるとちょっとキビしいですよね。特にスニーカーは、そういう考え方の方がまだ強いです。でも、逆をいえば「それ以外ならいけます!」という発想なんですよ。「できるの?」とか、「ちょっと不安」みたいな考えが生まれるのは当然ですので、まずはご相談いただくのが一歩という感じですね。来ていただいて、実際に「できるんだ!」となってもらえたらいいのかな。そして、それをご友人とかに話していただくことで、ちょっとずつ広まっていく、そういう感じを目指しているところです。でも、だいぶ増えてきたとおもうんですけれどね。

--スニーカーだと、加水分解などでソール自体が剥がれてしまうコトも多いですよね。それが「壊れた!」というイメージの方がまだ強いとおもうんですよ。

高田さん 男性でもそうなのですが、例えば『NIKE(ナイキ)』の「Air Max(エアマックス)」が加水分解したから「捨てちゃった!」みたいな例って多いと思うんです。オリジナルのソールがなくなったらもう終わりみたいな。でも、ボクらとしてはアッパー部分が生きていれば「まだイケる!」という見方で、見ている部分がまったく違う。基準としては「また履けるようにしようぜ!」というところです。もちろん「別のソールはもう「Air Max」じゃない!」という方もいらっしゃるので、ソレはソレという感じなのですが…とはいえ、気に入っているシューズをもう一回現役に復活させたい、復活させられる、という部分が革靴よりもスニーカーはちびたら捨てるという概念が強い。もちろん、全部が全部そういう考え方の修理屋さんではありませんし、そこに予算も生じてくる。ただ、ボクらは「修理して履くことができるんだぜ!」というところを伝えたい、それが理念にもありますので。だから…。

--まずは相談してほしい!と、そういうコトですね。

高田さん そうです! ほかのお店で断られても「ウチならなんとかするから持ってきて!」って。

--持ってくるという行為が結構ハードルが高いのカモしれませんね。たとえば、お問い合わせで写真を送ってくる方はいますか?

高田さん 写真を送って来られる方は多いです。逆に言うと、文章よりも写真の方がご案内もしやすいので、画像でやりとりする場合もあります。店舗によっては、LINE(ライン)で手順に沿って入力していただければ、見積もりまで取れるようにしていまして、ソチラは結構お問い合わせをいただいています。

--けっこう来るんですね!

高田さん 来ます! それは街の修理屋さん的な業態で、いい意味でざっくりと決めているんですよ。ただ、実際に持ってきていただいたけれど、「イメージと違う!」とか、「高い!」みたいな感じになってしまう場合もあります。やはり、インスタで「気軽にDMください!」みたいなスタンスの方がいまはいいのかな。ココの店舗に関しては、実際に来ていただいて、気になるところをコチラで見ておまかせみたいな、そういう方もいらっしゃいます。

▲シューケア用品も充実の品ぞろえ

--昨年、atmosとのポップアップイベント「Vibram SHOES REPAIR POP-UP」をやられたとのことですが、どんな感じだったのでしょうか?

高田さん そのイベントでは、スニーカーオンリーのリペアポップアップをやりまして、私が担当だったのですが、ソール交換のオーダーをいただいた足数は最終的に74足でした。

--えー!そんなにですか!?ちなみに、どのブランドのスニーカーが多かったのでしょう。

高田さん やはり『New Balance(ニューバランス)』や『NIKE(ナイキ)』が多い印象でした。でも、持って来られた方のシューズもボロボロになってしまったモノというよりは、比較的キレイな状態のモノの方が多かったです。あとは、新品のシューズを持って来られて、「ガラっと雰囲気を変えたい!」という方もいました。

--それでは、ワタクシのシューズのお話になりますが、今回はお世話になります!

高田さん さて、実際にコチラのシューズを拝見させていただきまして、やはり劣化が見られますね。お直しに関してですが、特徴的なソールの上、割れもあるので、やはりソールの交換がベストとおもいます。メーカーにも近しい素材のソールはありませんので、ヴィブラムのソールでボリュームを出したり、カラーチェンジをしたりなど、いろいろと対応はできるとおもいますが、「こうしたい!」などのイメージはありますか?

▲まずは、シューズの状態から「ナニができるのか?」を高田さんに診断していただき、イメージの希望などの相談へ

--とくにイメージはないですね。

高田さん 承知いたしました。では、その場合ですと最初にお話させていただくのが色味やシルエットをどうされたいのかとか、ボリューム感を出すのか、似たようなものにしたいのか、逆に変えたいなどですね。もうちょっとワイドにしたいとか、薄くしたいとか、色味を入れたいとか、などをお聞きしているのですが、いかがでしょう。イメージ的には元に近い方がいいのでしょうか?

--ボリューミーな雰囲気の方が、このシューズには合うのかなと考えています。

高田さん それではいくつかヴィブラムのソールサンプルを持ってきますね。

--よろしくお願いします!

高田さん まずは「Project X(プロジェクト エックス)」。丸みとボリュームがあって、グリップ力も長けているラバーに、なおかつクッション性もいい。フロントガードがついているのでタウンユースでもけっこう使い勝手がいいソールですね。

▲さまざまなサンプルから、なんとなくのイメージに合ったモノをピックアップしてドサッと持ってきた高田さん、手に持っているのは「Project X」というモデル

高田さん そして、ランニング系でソールに厚みがあるタイプの「SPHIKE(スパイク)」というモデル。普通のランニングシューズより高さを出せるソールで、カラーは白黒コンビがあります。あとは、ボックス型のような形で「KAKKOII(カッコイイ)」というモデルです。いわゆるバッシュ的(バスケットボールシューズ)な感じですが、これも白黒カラーとか、あえてブラックもありかと。このあたりがけっこうボリュームを出せるソールになっていますね。

--ひとことでソールといっても、いろんな種類があるんですね。

高田さん そうなんです。いまとシルエットを近しくするなら「SPHIKE」ですかね。フラットですが、ちょっと厚みがあるソールで、つま先もあって、これはライトグレーですが、このソールであれば白黒とか、グレー黒だったりとか落ち着いた色もあります。というところが、最初のご案内になります。

▲ひとつひとつ丁寧にソールの特徴を説明してくれる高田さん、手に持っているのは「SPHIKE」というモデル

--んー、、、どうしようかな。

高田さん ヴィブラムで言うと、ゴム質、滑りにくいとか、減りづらいとかいろいろあるのですが、見た目とか、好みもあるとおもいます。実際、アッパーが乗ったイメージはつきづらいですよね。

--そうですね。でも、好みでいうと、、、コレ(「Project X」)ですかね。

高田さん 雰囲気的には合うとおもいます。このソールであればサイズもありますし、ほかに手を加えなくてもすんなり乗るとおもいますね。これは大丈夫かなとおもいます。

▲出来上がりのイメージがしやすいように、シューズにかさねたり、いろいろ工夫をして説明してくれる高田さん

--ちなみに、ほかのカラーはどんな色があるんですか?

高田さん 現在4色出ていまして、これは白黒グレーで、あとはオールブラック、オールホワイト、オールグレーですね。オールグレーは少しポップなグレーになります。

--白黒グレーが一番合っている気がしますので、コレでお願いします!

高田さん 承知しました。納期的には1ヶ月くらいになります。

--大丈夫です!楽しみです!!

高田さん よろしくお願いします。

▲というコトで、高田さんとのいろいろと相談の結果、ヴィブラム「Project X」モデルの白黒グレーカラーに決定

(後編へつづく)

【今回、訪れたお店】
Men’s Shoes Care & Repair Counter 日本橋三越本店
住所 東京都中央区日本橋室町1-4-1日本橋三越本店2F紳士靴売場
営業時間 10:00~19:00
定休日 年中無休
TEL 03-6225-2078
メール nihonbashi@resh.tv

>> 「RESH」オフィシャルサイト

>> 「SOLE JACK」インスタグラム

<写真&文/カネコヒデシ(BonVoyage)>

カネコヒデシ|メディアディレクター、エディター&ライター、ジャーナリスト、DJ。編集プロダクション「BonVoyage」主宰。WEBマガジン「TYO magazine / トーキョーマガジン」編集長&発行人。ニッポンのいい音楽を紹介するプロジェクト「Japanese Soul」主宰。 バーチャルとリアル、楽しいモノゴトを提案する仕掛人。http://tyo-m.jp/

 

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