アドベンチャーの王者「GS」とはちょっと違う!? BMWのレトロな「R12G/S」に乗ってみた

今年5月に発表されたBMWの新モデル「R12G/S」。レトロなオフロードスタイルの車体は、かつてパリ・ダカールラリーなどで活躍した「R80G/S」を思い起こさせます。こんなマシンでツーリング、いや“冒険”に出掛けたいと感じるライダーは多いことでしょう。

BMWには「R1300GS」「R1300GSアドベンチャー」というアドベンチャーマシンの王者と呼べるマシンが存在しますが、それとはまた違った魅力を持ったモデルです。実際にワインディングや林道に持ち込んで、「GS」シリーズと「R12G/S」を乗り比べてみました。

 

■「GS」と「G/S」はどう違う?

「R1300GS」と「R1300GSアドベンチャー」は大排気量アドベンチャーマシンの市場で1、2を争う人気モデル。この2車種で同カテゴリー6割以上のシェアを持っています。

▲BMW「R1300GSアドベンチャー」

「R1300GSアドベンチャー」は30Lの大容量ガソリンタンクを採用し、足回りもスタンダードモデル「R1300GS」に比べて20mm長いストロークを持つサスペンションを装備しています。ホイール径はフロント19インチ、リア17インチで共通ですが、よりオフロードでの走破性や長距離走行を見据えた作りになっているのが「R1300GSアドベンチャー」だといえます。

▲BMW「R1300GS」

BMWのアドベンチャーシリーズに与えられている「GS」という名称は「ゲレンデシュポルト」の頭文字で「オフロードスポーツ」を意味します。これに対して「R12G/S」の車名には、GとSの間に「/」スラッシュが入っています。これはルーツである「R80G/S」に習ったもので「ゲレンデ/シュトラッセ」を表しています。意味としては「オフロード/ストリート」。オフロードもストリートもどちらも走れるマシンという意味が込められています。

▲BMW「R12G/S」

といっても「R12G/S」、足回りなどの装備はかなり本格的なオフロード寄りのものです。フロントホイールはオフロードマシンと同じ21インチ。リアホイールはスタンダードは17インチですが、今回試乗したエンデューロ・パッケージには18インチが装着されています。BMWで18インチのリアホイールを採用しているのは、このマシンが唯一です。

ベースとなっているのはレトロ・クルーザーモデルの「R12」ですが、オフロード向けの足回りを装備するために、フレームの構造から見直されています。オフロードの走破性に関わる最低地上高はスタンダードモデルで240mm、エンデューロ・パッケージでは255mm確保されています。

搭載するエンジンは、空冷の水平対向(ボクサー)2気筒。排気量は1169ccで109PSを発揮します。「R1300GS/アドベンチャー」に搭載されるのは水冷の1300cc水平対向2気筒で145PSを発揮するので、それに比べると抑え気味ですがオフロードを走るのであれば十分以上といえるでしょう。

 

■オンロードもオフロードも楽しめる

実際にワインディングや未舗装の林道で3車種を乗り比べてみましたが、共通するのは圧倒的な快適性と走る楽しさが両立されていることです。見通しがあまり良くない狭い峠道でも不安なく走れるだけでなく、低い速度域で流しているだけでも“バイクを操っている”楽しさが感じられます。

3車種を比較すると「R1300GS」と「R1300GSアドベンチャー」は、どちらかというと快適性が印象に残ります。対して「R12G/S」は“楽しさ”に重きが置かれているようなマシンでした。「R1300GS/アドベンチャー」はフロントにテレレバーというBMW独自のサスペンションシステムが採用されていますが、これは前後のピッチングを抑え路面からのショックもライダーにあまり伝えない構造。対して「R12G/S」は一般的なテレスコピック式のフロントフォークを採用しているので、ブレーキングでフロントを沈み込ませてコンパクトに曲がるようなコーナリングが可能です。

未舗装の林道を走っても「R1300GS/アドベンチャー」は路面の凸凹を乗り越えてもショックがあまり伝わってこなくて快適。結構荒れた路面も走りましたが、緊張することなく通過できました。ただ、少し大きめなギャップを通過すると、ややフロントが振られるシーンもあり、前輪が19インチであることを思い出す感じでした。

対して「R12G/S」は21インチホイールの恩恵で、ギャップの乗り越え性能はオフロードマシン並み。タイヤからの情報もライダーに伝わりやすく、よりオフロードを楽しめるマシンという印象でした。車重が3車種の中で一番軽い(といっても234kgありますが…)のも効いているようです。

シート高は「R12G/S」が860mmで「R1300GS」が850mm、「R1300GSアドベンチャー」は840mmあるので、足付き性にはどれも不安が付きまといますが、「R1300GS」と「R1300GSアドベンチャー」には停止時にシート高が30mm下がる機構が装備されています。「R12G/S」にはそれがないので、オフロードを走るのであれば、ある程度の体格があったほうがいいでしょう。

3車種を乗り比べてみて、BMWの誇る「GS」シリーズの底力を感じることができました。大陸を横断するような長距離ツーリングをするライダーたちが、こぞってこのマシンを選ぶ理由が実感できた気がします。ただ、国内での日帰りや1泊でのツーリングを考えると「R12G/S」の持つ“楽しさ”はかなり魅力的。街中で映えるレトロなデザインも相まって、多くのライダーから支持を集めそうです。

【SPEC】
BMW「R12G/S」
サイズ:2285×900×1240mm
シート高:860mm
車両重量:234kg
エンジン:1169cc空油冷水平対向2気筒
最高出力:109PS/7000rpm
最大トルク:115Nm/6500rpm
価格:245万1000円〜

>> BMW「R12G/S」

<取材・文/増谷茂樹

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

 

 

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