寝るときのイヤホンこそANC対応に! Ankerの寝ホン「Soundcore Sleep A30」が良く分かってる

寝るときにイヤホンを使うこと、あるいは寝ながら使えるイヤホン自体のことを、俗に“寝ホン”と呼ぶようです。最近では、睡眠導入用に設計されたイヤホンについて、メーカー自ら「寝ホン」と名乗っていることも——。日の長さがグッと短くなって睡眠習慣が乱れがちな秋だからこそ、そんな寝ホンの存在が気になります。

そしてちょうど9月に、アンカー・ジャパンが同社の寝ホンの第3世代モデル「Soundcore Sleep A30」発売。これは気になる…ということで、その使い勝手を確認してみました。

※本稿の内容は、iOS 26を搭載したiPhoneで確認したものです。

 

■「Soundcore Sleep A30」とは

Ankerのオーディオブランドである「Soundcore(サウンドコア)」で展開される「Sleep」シリーズのイヤホンは、先述のように俗に”寝ホン”と呼ばれるジャンルの完全ワイヤレスイヤホンです。睡眠時の利用を主軸に想定したうえで設計されており、同ジャンルの競合製品と比べてもコンパクトさが際立つ一台。…と言うか、そもそも睡眠用を銘打って完全ワイヤレスイヤホンを展開しているブランドがまだまだ限られているので、モバイルバッテリーを中心に認知度の高いAnker製品というだけで、どうしても目を引きます。

同シリーズの系譜を軽くおさらいしておくと、2020年10月に第1世代モデルの「Soundcore Sleep A10」が、2024年7月に第2世代モデルの「Soundcore Sleep A20」が発売されていました。今回試用した「Soundcore Sleep A30」は、2025年9月に発売された、これらの機種の後継モデルです。

製品パッケージ ▲「Soundcore Sleep A30」(左)と「Soundcore Sleep A20」(右)

なお、メーカーの公式オンラインストアでは、「Soundcore Sleep A10」の販売は終了しており、現状のライアップとしては前世代の「Soundcore Sleep A20」(1万6990円)と、新製品の「Soundcore Sleep A30」(2万9990円)の2機種が併売されている状況です。両者には1万3000円の差があるので、新機能の必要性をチェックしたうえで比較検討することになるでしょう。

Soundcore Sleep A20とA30の充電ケース ▲「Soundcore Sleep A20」(左)と「Soundcore Sleep A30」(右)。充電ケースは新モデルの方が大きいが、基本的に屋外に持ち運ぶのではなく、寝室で使うことになる製品なので気にならない

Soundcore Sleep A20とA30の充電ケースを開いた様子 ▲「Soundcore Sleep A20」(左)と「Soundcore Sleep A30」(右)。イヤーピースは新モデルの方がわずかにスリムで、耳に固定するためのイヤーウイングの形状も若干異なるのがわかる

Soundcore Sleep A20とA30のイヤーピース ▲イヤーピースを取り出して比較してみると「Soundcore Sleep A30」(左)と「Soundcore Sleep A20」(右)でイヤーウイング(固定用のでっぱり)の形状が異なるのがわかる。ちなみに、どちらも柔らかさは同じくらいだ

 

■「A20」と「A30」は何が違う?

では、Soundcore A20とSoundcore A30では、何が異なるのでしょうか。最低限押さえておきたい主要なポイントは2つ。

1つ目は、環境音の低減の仕方です。環境音を低減するノイズキャンセリングには、装着することで物理的に耳栓としてノイズを遮断する「パッシブノイズキャンセリング」と、イヤホンから音波を出して環境音を相殺するように打ち消す「アクティブノイズキャンセリング(ANC)」があります。これに関して、A20はANCには対応していませんが、A30はANCに対応しています。

ノイズキャンセリングのイメージ ▲新モデルのSoundcore A30は、ANCに対応しているのが最も重要なポイント

2つ目は、「いびきマスキング」という機能の有無です。対応しているのはA30の方だけ。“マスキング”という表現になっているように、音を消すわけではないのですが、あえて雑音を混ぜることでいびきを目立たなくするという作戦ですね。仕組みとしては、“充電ケース”が家族のいびきなどを検知して、その音の大きさや高さに合わせてマスキング用のサウンドを調整してくれるようになっているそうです。

 

■「Soundcore A30」を使ってみて良かったところ

Soundcore A30を実際に使ってみて、良かったと思ったポイントを紹介しましょう。

まず、睡眠用イヤホンならではのメリットとして、横向きになっても枕でイヤホンが耳に押しこまれずに痛くないのは流石でした。一見地味なポイントですが、これだけを目当てに購入しても良いと思います。

筆者は普段から就寝時にイヤホンをつける派なのですが、手持ちのAppleのAirPodsシリーズやJBLのTour Proシリーズなどを使ってきたため、横を向いて寝るとどうしてもイヤホンが枕にゴリゴリ当たって耳が痛かったり不快感があったりするものだと諦めていました。心頭滅却すれば横向いても耐えられる、とはいえそのまま寝るのは厳しい…。

一方で、Soundcore A30の場合は、イヤホンがスリムで、横向きで寝てもイヤホンが枕に触れず、耳が痛くありませんでした。休憩しながらダラダラ動画を観るにも、ちょっとソファで昼寝をするにも、夜間にじっくり寝るにも快適でした。

一般的なイヤホンとの比較 ▲筆者が常用しているイヤホン(左)と比べてみると、Soundcore A30のイヤーピース(右)は薄さが半分くらいだった

そのうえで、同機を駆使する勘所としておさえておきたいのが「ローカル再生モード」の存在。Soundcore A30には、スマートフォンと接続して使う「Bluetooth再生モード」と、スマートフォンとは接続せずにイヤホンにダウンロードした音源を再生する「ローカル再生モード」という2つのモードが用意されています。デフォルトの設定では、左のイヤホンを指先でトントンッとダブルタップすることで(あるいは専用アプリ内からの切り替え操作で)、2つのモードを切り替えられます。

このローカル再生モードに切り替えると、指定しておいた睡眠導入用の音源が自動ですぐに再生されるので、「ちょっと昼寝したいなぁ」みたいなときになかなか便利。音源選びでスマホを触らずに、パッと耳栓のように装着するだけでスピーディに使えます。ちなみに、アラームをイヤホンから鳴らすこともできますが、アプリから時刻や適用する曜日などを設定しておく必要があります。

アプリ画面 ▲専用アプリ「soundcore」の画面にて。「リスニングモード」の欄から「Bluetooth再生モード」と「ローカル再生モード」を切り替えられる。イヤホン本体の操作では、デフォルトの設定だと左のイヤホンのダブルタップで同様の切り替えを実行できる

そして、「イヤホンを探す」機能が用意されていることも安心できるポイント。完全ワイヤレスイヤホンを装着して寝たときあるあるですが、起床時にはイヤホンが耳から外れて、そのまま高確率で枕の下や布団の隙間へ入ってしまい、見失うんですよね。起きたときにアワアワするのは必至…。そんなときに、アプリ内からの操作でイヤホンから音を出せるのはもはや必須機能です。

アプリ画面 ▲例えば、左のイヤホンを探すとき、右上の設定アイコンから「イヤホンを探す」を選び、Lの再生アイコンをタップする。アプリのUIについては少々階層が深くてわかりづらい気もするが、寝ホンとしては必須機能なのでありがたい

要するに、だらだらとYouTubeを見て休憩して、ちょっと眠くなってきたら睡眠モードに切り替えてそのまま寝落ちして、起きてイヤホンが見当たらなかったら音で探せる。ずっと寝る時に普通の完全ワイヤレスイヤホンを着ける生活をしてきた筆者からすると「そうそう、こんなイヤホンが欲しかった」と思える特徴が詰まっていました。ANCをオンにすれば、「寝る前にスマホを見ないほうが良い」という正論も聞こえません。

 

■その他のチェックできたポイントなど

Soundcore A30の音質については、とても良いというわけではないですが、動画を楽しんだり、入眠用に楽曲やサウンドを視聴するには十分だと感じます。ポップスやクラシックの演奏を楽器の音まで解像感高く楽しみたかったり、映画やゲームの音を重低音を効かせて楽しみたかったり…といった使い方には向かないかもしれませんが、寝る前に聞く柔らかい音楽や、ホワイトノイズなどを聴く分には、特に音質で不満点は感じませんでした。

ノイズキャンセリングについては、パッシブノイズキャンセリング(要するに耳栓効果)が高いので、装着するだけで大抵の環境音は睡眠の邪魔にならないレベルまで低減されます。そこからANCをオンにすると、さらに低減の度合いが高くなる、といった印象です。

同梱のイヤーピース ▲ちなみに、同梱イヤーピースのサイズも充実。カラーも2色だ

リビングでテレビがついている状態でSoundcore A30を装着すると、隣の部屋でテレビがついているくらいまで音量が小さくなります。そしてANCをオンにすると、さらにテレビのナレーションが何を話しているかわからなくなるまで、音の解像感が下がります。夜勤シフトで家族と寝る時間が異なる、といった方ならば、安いSoundcore A20ではなく、ANCがあるSoundcore A30を選んだ方が絶対良いと思いました。

一方、「いびきマスキング」については、筆者の試用環境ではリアルな検証条件が確保できなかったので、とりあえず動画でいびきの音源を再生しながら、マスキング音を再生して擬似的に試してみました。同機能は、先述した通り、“マスキング”とあるように、聞こえてくるいびきの音を低減するわけではなく、あくまでサウンドを同時に再生して、「いびきの音だけが聞こえる状態」ではなくする。つまり、「いびき+サウンドが聞こえる状態にする」というものです。

確かに、いびきが聞こえなくわけではありませんでしたが、意識がいびきに向かなくなる気はしました。家族やパートナーのいびきに本気で悩んでいて、寝る時にBGMやヒーリングミュージックは聴きたくない、という人ならば、試してみる価値はあると思います。

アプリ画面 ▲アプリで「いびきマスキング」の項目をタップすると、詳細画面が開く

アプリ画面 ▲同機能の説明について

*  *  *

完全ワイヤレスイヤホンなら、複数台を持って使い分けるのもアリですよね。予算的にも手を伸ばしやすいアイテムだと感じます。

「寝っ転がってイヤホンを使うと耳に当たって痛い」「最近、夜についついスマホを見てしまって寝不足気味」「気持ちよく昼寝をしたい」「家族がうるさくて、うまく寝られず困っている」なんて方は、「Anker Soundcore A30」は堅実な検討候補になるんじゃないでしょうか。

>> Anker「Soundcore」

<取材・文/井上 晃

井上 晃|スマートフォンやタブレットを軸に、最新ガジェットやITサービスについて取材。Webメディアや雑誌に、速報、レビュー、コラムなどを寄稿する。X

 

 

 

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