残暑が終わるのはいつも唐突で、気づけば朝の空気がひんやりしてきました。そんな季節になると、ランニングや低山を歩くとき、毎回悩むのがウエア選びです。動くと暑い、止まると冷える。わざわざ途中で脱ぐのも面倒で、無理して着ていると休憩中に汗で濡れた服が風を吸って、一瞬で体温が下がる。そんな経験、覚えがある人も多いはず。
ここ数年で特に耳にするようになった「アクティブインサレーション」は、そんな悩みから生まれたウエアです。行動中でも蒸れにくく、休憩時も汗冷えしにくい。動いても止まっても快適でいられるよう、中綿が呼吸するように空気を出し入れしてくれるのが特徴です。
素材によって性格はさまざま。通気性をとにかく重視したタイプ、軽量さや速乾性を優先したタイプ、高い伸縮性で動きやすさを狙ったタイプなど、狙いが少しずつ違います。どれも“保温しながら蒸れにくい”ことを目指していますが、通気と保温のバランスの違いだけで印象は変わります。なので、「長く走るなら通気性を重視」「立ち止まることが多いなら保温寄り」といった用途や、自分の体質で選ぶのが正解への近道。

そんなアクティブインサレーションの中で、この冬少し気になっているのがCiele Athletics(シエル シエルアスレチックス)の「M IBTHoody」(2万4750円)。
カナダ・モントリオール発のシエルは、ランナーが“自分のペースで動くこと”を軸にモノづくりを続けているブランド。寒い季節のランやハイクに向けたこの1枚は、アクティブインサレーションの理想形にかなり近いように感じます。
最大の特徴は、Ciele独自の素材「brushed COOLmatic | EXP DIAMAfleece lite」。リサイクルポリエステルに33%のカーボンファイバーを織り込んだ生地で、軽さと柔らかさを保ちながら機能性、耐久性を高めたモノ。カーボンファイバーが汗をすばやく吸い上げて拡散し、湿気を逃がしながら体温を整える“温度調整素材”として働くのですが、ここが他のアクティブインサレーションとの明確かつ大きな違いです。
まず、カーボンを織り込むことで得られる効果は4つ。汗をすばやく吸い上げる吸湿性、空気を通して湿気を逃がす通気性、動きながら体温を整える冷却性、そして臭いを抑える防臭性。どれも冬のアクティブウエアに欠かせない要素ですが、汗かきハイカーとしては“冷却性”が特に気になりますが、この中でキーとなるのは“吸湿性”でしょう。

多くのアクティブインサレーションが“蒸気を外に逃がす”ことを重視するのに対して、このフーディは“汗そのものを吸い上げて動かす”構造。原理としてはカーボン表面の細かな溝を通って水分が毛細管現象で移動し、ベースレイヤーの汗をスッと吸い取ってくれるというもの。いわば能動的に吸湿してくれるわけです。
実際、熱がこもるような場面でも、汗が生地に吸われていく感覚を想像すると納得がいきます。こうしてウエア内の水分が効率よく外へ引っ張り出されることで、蒸れによるオーバーヒートを防ぎ、表面で気化した水分が体温をちょうどよく下げてくれる。カーボンが吸湿性を持つからこそ、通気により身体の熱を冷ますことにまでつながっているんですね。

冬のウエアで“熱を冷ます”というと違和感がありますが、蒸れによる体温上昇は冬のアクティブシーンではよくあること。そして汗が汗を呼ぶ事態になって、休憩中に汗冷え、なんてことになるので、そう考えると効果的な熱吸収はむしろ冬にこそ嬉しい機能かも。ランならこれ1枚、低山ハイクならウィンドシェルを合わせるとちょうど良さそうです。
ちなみにカーボン繊維を織り込んだことで、防臭性も期待。カーボンがにおいの元を吸着してくれるので、行動中はもちろん、活動後も含めて快適に過ごせるのは嬉しいポイント。
最後にもう1つ印象的なのが耐久性。通気性を重視するアクティブインサレーションは、どうしても繊維がゆるく、摩耗に弱い印象があります。その点、「M IBTHoody」は、リサイクルポリエステルにカーボンを織り込むことで、軽さと柔らかさを保ちながらも強度をしっかり確保。軽量インサレーション特有の心もとない印象がなく、日常のランやトレイルはもちろん、ザックを背負ってのハイクでも安心して使えそう。

その他の仕様としては首まわりを包むバラクラバフード、手首の冷えを防ぐニンジャカフス、夜間ランでのリフレクターを装備。約290gという軽さながら、動くための工夫が随所にあります。
冬のウエアは、寒さを防ぐためではなく、動きを止めないためのもの。走ってもムレにくく、止まっても冷えにくいというアクティブインサレーションを、吸湿性と冷却性から実現した「M IBTHoody」の設計思想は、汗に悩む人たちの新しい選択肢と言えるでしょう。
<文/山口健壱(&GP)>
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- Original:https://www.goodspress.jp/news/704336/
- Source:&GP
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