クルマの走行の根幹を担う“タイヤ”。安心・安全なカーライフを送るために知っておきたいこと

【知っておきたい!今更聞けない!クルマのAtoZ】

クルマの走りの土台を担うタイヤに今回はフォーカス! 何の気なしに乗っている人も多いでしょうが、実はタイヤの世界って奥深いものなんです。また、劣化や異変に気付かずに乗り続けてしまうと大きな事故に繋がることも…。秋の行楽シーズンに向けて今一度学んでおいて損はなし! ということで、「タイヤ館 小平」にお邪魔して今更聞くに聞けないタイヤのアレコレについて伺ってきました。

教えてくれたのはこの方!
タイヤ館 小平 石川淳一店長
2001年に入社し、店長業務はおよそ10年。若い頃からクルマ好きで、自分の愛車をイジれたら…という思いからタイヤ館へ。ユーザーのニーズに寄り添うメンテナンスの提案がモットー

 

■今更聞けない“タイヤ”のアレコレ!

クルマの消耗部品の中でもとりわけ走行性能に直結しやすいのがタイヤ。ただ、価格もピンキリで種類も無数にあるため「正直何を選べば良いのやら…」と迷子になってしまい、結局あまり知識がないままおすすめされたタイヤに交換するというユーザーも少なくないはず。今回はそんな人にもしっかり理解できるように初歩的なギモンに答えていただきました。

Q. タイヤの標準的な交換時期や交換の目安を教えてください

A. 年数であれば3〜4年、走行距離では約3万kmが目安

タイヤはゴムという素材の性質上、2つの軸から劣化を判断しています。まずひとつが“年数劣化”。これは単純に時間経過とともにどうしても劣化が進んでしまうためです。そしてもうひとつが“使用劣化”で走ることによる摩耗等の劣化を指します。タイヤ館では年数にして3〜4年、距離では約3万kmを目安に交換したほうが良いとお伝えしています。

【タイヤの主な摩耗・劣化】

▲全体的にタイヤの摩耗が進み、溝が浅くなっている状態。雨を逃すための溝が浅くなることでスリップなどの危険性が高まるおそれも

▲いわゆる“片減り”と呼ばれるタイヤの片方のみすり減ってしまう偏摩耗。空気圧の不足・過多や急なハンドル操作、アライメント(タイヤ取り付け位置や角度)の崩れが原因とされています

▲こちらはヒビ割れ。原因としては使用というよりもタイヤのゴムの経年劣化によるもの。走行頻度が少ないことや雨ざらしの環境などによりヒビ割れは出やすくなってしまうそう

Q. 夏の猛暑など気温によっても劣化は進むもの?

A. 路面の温度も多少関係するかもしれませんが大きな原因にはなりにくい

今年の夏もとても暑かったためご心配される方も多くいらっしゃいました。もちろんゴムの特性もあるので温度による劣化もあるにはあるのですが、走行中のタイヤは高速で回転するものなので回転数と摩擦で気温以上の温度になります。その熱でも耐えられるように作られているので基本的には問題ありません。ただ、高温の路面駐車場に長らく停車させてしまうと劣化は進みやすくなってしまうおそれはありますね。

Q. 日常的にできるメンテナンスやタイヤを長持ちさせる秘訣は?

A. 普段から気にかけてほしいのは“空気圧”

まずはタイヤの空気圧を気にかけるところから始めましょう。車種によって指定圧があるのですが、それを理解して定期的に空気圧をチェックしてください。可能であれば最低でも1か月に1度。また、長距離運転の前も欠かせません。空気圧が適正でないとタイヤの偏摩耗に繋がりますし、特に基準値よりも下がった状態で高速走行するとスタンディングウェーブ現象というタイヤが波打ってしまう状態に。最悪の場合バーストする危険性もあるので注意が必要です。

【空気圧のチェック方法】

▲多くのクルマの規定空気圧は運転席側のドア横にラベリングされています

▲タイヤ館などの専門店やガソリンスタンドにある専用の器具を使うことでタイヤの空気圧を確認できます。また、多くのものがそのまま空気圧を調整可能

▲空気圧は自然漏れによる空気圧低下を考慮して基準値の0〜+20kPaの範囲で調整・管理することがおすすめ。また、高速運転する際にはやや多め(基準値+10kPa程度)にしておくと安心だとか

Q. タイヤ交換の際、選ぶポイントはありますか?

A. 大きく3種類のタイヤからご自身の走行スタイルに合わせて選びましょう

タイヤには「サマータイヤ」「スタッドレスタイヤ」「オールシーズンタイヤ」と大きく分けて3つの種類があります。それぞれに特性があり、どういったクルマライフを送っているかによって選ぶべき種類が変わってくるんです。

・サマータイヤ(夏タイヤ/ノーマルタイヤ)

新車時に標準装着されているノーマルタイヤを指します。サマータイヤという名前から夏だけのものと捉えられがちですが、通常の路面であれば1年中装着しても問題はありません。ただし、凍結や積雪に対しては弱く、スリップする危険があるため雪の降る季節や地域ではスタッドレスタイヤ、あるいはチェーンの装着が必要です。

・スタッドレスタイヤ(冬タイヤ)

凍結路(氷で覆われた路面)や圧雪路(積雪が踏み固められた状態)で特に性能を発揮するタイヤ。特徴としてはタイヤのトレッド部分に特殊な形状を採用することで滑りにくい構造にしている点。スタッドレスタイヤも夏場の走行は可能ですがサマータイヤに比べて制動距離が長くなる傾向があったり、タイヤの寿命が短くなったりするため基本的には夏場にはサマータイヤがおすすめ。

・オールシーズンタイヤ

季節を問わずに1年通して使用ができるユーティリティタイヤ。凍結路面は厳しいものの多少の雪でも問題なく走行でき、夏の乾いた路面や雨などで濡れた路面にも対応可能。サマータイヤとスタッドレスタイヤの長所を併せ持っていますが、それぞれの長所よりは劣るため気候条件や路面状況を踏まえて検討が必要。ただし、季節ごとに保管・交換をする必要がないためコストが抑えられます。

Q. スタッドレスを履き続けるのはやっぱり良くない?

A. 一般的には変えたほうが良いですが、使い方にもよるのかなと

非常によく聞かれる質問です。最近だとなかなか自宅にタイヤを保管するスペースがない方も多いですし、場合によっては近所への買い物や送り迎えだけなどの街乗りを基本とする方も多くいらっしゃるのでコストをなるべく抑えたいというニーズがあるのも事実です。そんな方々にお伝えしているのが、まずはデメリットとしてゴムの性質が柔らかいため摩耗しやすく、あまり長持ちしないということ。ただ、年間5000km未満など走行距離が少ない方にとってはゴムの劣化を踏まえたとしてもそこまで大きく変わらないと思います。それを踏まえれば、実はどんな路面環境でも対応できる理想のタイヤではあるんです。もちろん、その地域の気候状況にもよるので一概にはおすすめできませんが、そのように提案をさせていただいています。

▲タイヤ選びにはどのような走行をするか距離や使用頻度などを詳しくヒアリングし、ユーザーに沿った1本を提案しているという石川店長

Q. 走行中にタイヤの異変を感じることもある?

A. 突然のトラブルはノイズやハンドルで異変を感じ取れます

タイヤのトラブルはほかのパーツに比べてダイレクトに感じやすいことが多いです。ロードノイズが強くなったり、ハンドルがブレてしまったり。特にパンクした場合はハンドルを一気に取られることも。怖いのは急な異変に驚いてしまい、パニックに陥ってしまうこと。少しでも異変を感じたら安全な場所に停めてタイヤをチェックしましょう。ポイントとしては空気が抜けていないか、あとはコブができていないかを確認してみてください。タイヤ自体に何か異変があればJAFなどに連絡をしましょう。くれぐれもそのまま乗り続けることは避けてください。

Q. タイヤ交換って時間や費用はどれくらい?

A. タイヤの履き替え作業は60分〜、料金は約1万円〜が基本

タイヤの履き替え、例えばホイールはそのままでタイヤのみ新品に交換するなどの場合ですと組み替え・バランス調整・取り付け作業となります。タイヤの料金を除くと1本あたり2695円〜が基本料金となります。サイズや車種、時期、また持ち込み等で工賃が変化するため、まずはお気軽にご相談いただければと。作業時間は60分〜としていますが、こちらもタイヤの種類やサイズなどで変わってくる場合があるのでお問い合わせいただくのがベストです。

■実際にタイヤ交換作業を少し覗かせていただきました!

まずは付いている古いタイヤをホイールから外します。バルブを緩め、空気を抜いてベコベコの状態へ。

続いて古いバランス調整用のオモリを丁寧に取り外します。シール糊まで細かく綺麗に落としている様子。

専用の機具でホイールからタイヤを外します。

また、古いタイヤは回収してくれるとのこと。

続いて同じ機具で今度は新しいタイヤを組んでいきます。

組替専用の空気入れ。膨らむ際にホイールの淵に強い勢いでぶつかり、大きな音が響く。

適正の空気圧になったらバランス調整へ。タイヤを進行方向へと回転させながら偏摩耗を防ぐために左右のバランスを見ています。

グラム単位で差異を表示。この数値に合わせてオモリを加えていきます。

赤い光で示されたオモリの位置に算出されたグラム数のオモリを貼布。

数値がいずれも0を指しており、左右でしっかり均一が取れている状態。バランス調整はこれで完了。これを4本繰り返し行い、クルマへの取り付けを行っていきます。

【最後に】タイヤについて伺って…

今回は「タイヤ館 小平」にご協力いただき、タイヤについて教えてもらいました。クルマの足となる大切なパーツであり、定期的に交換しなければならない消耗品でもありますが、筆者自身そこまでしっかりと知識を蓄えるシチュエーション自体あまりありませんでした。きっと読者の皆さんの中にも同じような方は多いのではないでしょうか? しかも今回の取材も奥深いタイヤの世界のほんの“触り”だったわけで…(実際にはさらに専門的な内容もあるというお話でした)。これを機に愛車のタイヤと向き合い、もっと日々見てあげるところから始めましょう!

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<取材・文/小林大甫 写真/稲澤朝博 協力/タイヤ館 小平>

 

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