「他にはない、これまでにない製品」を叶える独自性にフォーカス!株式会社シグマ【GPジャーナル】

【GPジャーナル】

毎月、独自のイノベーションや情熱、モノづくりへのこだわりを持った“気になる企業”にズームアップ。その現場の裏側を深堀りします!

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【VOL.03】

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株式会社シグマ

設立年:1961年
従業員数:1827人

創業者は山木道広。神奈川県川崎市に構える本社と、福島県の会津工場を本拠地とし、交換レンズや、独自のコンセプトを持ったカメラなど“メイド・イン・ジャパン”を徹底した製品を開発・販売。熱狂的なファンを擁する。

■『他にはない、これまでにない製品』 それを叶える独自性にフォーカス!

2026年に65周年を迎えるシグマ。もとは光学メーカーの下請けとして製造に携わっていた技術者が、創業者・山木道広氏の周りに集まって誕生したのが始まり。その社名には、技術、知識、経験、英知、そして情熱の総和たる「Sigma」(記号のΣ)の名の下に、常に革新と挑戦を続ける人間集団であり続けたい、との想いが込められている。

今では国内外で知られる同社の歩んできた歴史の中でも、大きな存在となっているのが1961年に販売された業界初のテレコンバーターだ。

「それまでレンズの焦点距離を変える製品はありましたが、レンズとボディの間に装着し、しかもコンパクトなアダプターは革新的でした。ただ、特許を取得していなかったため、他社に模倣されてしまう事態に。しかしこれが逆に功を奏し、開発元であるシグマの名が広まる契機になったのです」(畳家さん)

そして1976年にはオリジナルのカメラ開発製造にも参入。

「交換レンズメーカーではなく“カメラ”メーカーとして認められたい」という想いが身を結び35mm一眼レフカメラ「Mark-I」が誕生。以降、世界初21mmをカバーした超広角ズームレンズや、世界初のフルカラーFoveon X3ダイレクトイメージセンサーを搭載した初のデジタル一眼レフ、世界最小・最軽量フルサイズミラーレスと革新的な製品を生み出してきた。

「弊社にはイノベーター精神が常にあり、他社と同じことをやっても仕方がない。独自なものをやっていくという姿勢が先代から継承されています。その上で一歩一歩、信頼を積み上げてきた結果が今へと繋がっているのだと思いますし、自分の感性や価値観に合うものだけを手元に置きたい。そんなこだわりを持つ方々から支持いただけていると感じています」(畳家さん)

最後に次なる課題について訊くと、『fp』の後継機や新たな三層イメージセンサー搭載カメラの要望も多く、その期待に応えられるように研究開発中とのこと。座して待つべし!

国際マーケティング部 主管
畳家久志さん
同社で商品企画などを担当する。2025年に発売され、その特異性から大きな話題を呼んだ新規軸ミラーレスカメラ「Sigma BF」の企画・開発にも携わる

 

■本社潜入! 洗練された製品は洗練されたオフィスで生まれる!?

神奈川県川崎市の工業団地・マイコンシティに本社を置くシグマ。同社製品の魅力のひとつに挙げられる“洗練されたデザイン”はどんな環境から生まれるのか。その秘密を探るべく訪れた取材班を待っていたのは、まるで美術館のようなスタイリッシュな空間だった!

▲古今東西の名だたる写真集が、独自の視点で選ばれ収蔵されているライブラリースペース。中には希少な本もあるとか。現在でも数千冊が並んでおり、さらに数を増やし続けている

▲巨大ショーウィンドウに来訪者が思わず息を呑む空間。その名はレンズセラー。これまで販売してきたレンズとカメラが一堂に会する。ベンチも備えられ、まさしく美術館の雰囲気

▲周囲を緑に囲まれた立地を最大限に生かしたフリースペースは、業務合間のひと休憩などで誰でも利用可能。インテリアがあえてバラバラなのも息苦しさを感じさせず居心地が良い

▲真っ直ぐ伸びる廊下は天井が通常よりも高く設計されており、開放感のある空間作りが行われている。壁には同社製品を使い撮影された写真作品が整然と並び、来訪者を出迎える

■業界の常識を塗り替えてきた SIGMAが誇る「革新機」たち!

1961年に開発したテレコンバーターを筆頭に、“世界初”の革新的製品を数多く生み出してきたシグマ。常にイノベーター(革新者)であらんとし、たゆまない研究開発と技術研鑽を重ねて進化を続けてきた。そんな同社の歴史に、今なお燦然と輝く革新機たちをご覧あれ。

▼1961年 業界初のテレコンバーター「TELEXTENDER」

▼1976年 Sigma初の35mm一眼レフカメラ「Mark-I」

▼1979年 世界初21mmをカバーした超広角ズームレンズ「ZOOM y21-35mm F3.5-4」

▼2002年 世界初のフルカラーFoveon X3 ダイレクトイメージセンサーを搭載&Sigma初のデジタル一眼レフ「SIGMA SD9」

▼2008年 世界初のデジタル一眼レフカメラ用 大型イメージセンサーを搭載したコンデジ「SIGMA DP1」

▼2019年 世界最小・最軽量フルサイズミラーレスカメラ「SIGMA fp」

■優れた品質の秘密は“会津”にアリ!

ほぼすべての部品の生産・組み立ては、川崎ではなく福島県の磐梯町にある自社工場と東北地方を中心としたサプライヤーの協力のもとで行われている。ここで熟練の職工による厳格な品質管理を徹底することにより、シグマの優れたクオリティは保たれているのだ。

▲組み立ては熟練の職工たちによる手作業で行われる。まごうことなくメイド・イン・ジャパン

©YUICHIRO FUJISHIRO

【光学性能と品質への矜持】
国産設計&生産にこだわった最新レンズを捉えた!

シグマの中核を担ってきた交換用レンズの製造・開発。ここでは3つに大別されるラインアップから、各カテゴリーの最新注目モデルを紹介する。すべてに共通するのは徹底的に管理された品質と優れた機能性、そして誰もが扱えるユーザビリティの高さである。

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シグマの主幹事業が、創業時から展開してきた交換用レンズであることはご存知の通り。同社ではレンズを3つのラインに分類し、それぞれ明確な設計コンセプトに基づき開発している。

1つ目は圧倒的な光学性能と、高い表現力を追求した“アート”。2つ目は、光学性能と携行性を高い次元で両立させ、幅広い撮影シーンに対応する“コンテンポラリー”。3つ目は動きの速い被写体や過酷な環境条件下でも、要求に応える“スポーツ”。

そのすべてに共通するのが、高機能&高品質であるという点。これはシグマならではの開発・生産体制に拠る部分が大きい。

「すべては会津工場との連携があって実現するものです。もっとも重要なレンズの精度に関してもそう。生産現場で常に改善の取り組みを行っており、そこで挙がった修正点はすぐに設計者にフィードバックして、日々アップデート。これこそが設計から製造までを国内で行う強みであるといえます」(畳家さん)

そんなこだわりは品質管理においても同様だ。最終検査を全数1本1本行い、同社基準値をクリアした製品のみが出荷される。どんなに生産数量が増えようと揺るがないこの姿勢こそが、“クオリティの追求”において重要なのである。

▼ART 「35mm F1.2 DG II|Art」(24万7500円)

2019年に世界初のミラーレス用35mm F1.2として発売された「Sigma 35mm F1.2 DG DN|Art」の後継機。より高い光学性能に加え、約30%軽量化と大幅なサイズダウンを実現。高い解像力と大きく美しいボケによる唯一無二の描写性能を、より気軽に持ち出して楽しめる。

▼CONTEMPORARY 「20-200mm F3.5-6.3 DG|Contemporary」(14万3000円)

世界で初めて広角端20mmと10倍ズームの両立を実現したフルサイズ用高倍率ズームレンズ。徹底した小型・軽量設計とリニアモーターHLAによる高速・高精度AFにより、多彩なシーンに快適かつ柔軟に対応。幅広い表現力が、旅行や日常のスナップで威力を発揮する。

▼SPORTS 「200mm F2 DG OS|Sports」(55万円)

フルサイズミラーレスカメラ用交換レンズとしては世界初の200mm F2を実現した望遠単焦点レンズ。大きなボケと圧縮効果、そして卓越した光学性能が生み出す精緻な描写が撮影者の表現力を引き出す。防塵防滴構造と堅牢な設計により、あらゆる環境下での撮影に対応。

【SIGMAが積み上げてきたカメラづくりの“現在地”】
「BF」に見たプロダクトデザインの本懐

創業時からの主幹事業である交換用レンズと並ぶ、もう一方の柱が1976年にスタートし、独自性を追求してきたカメラである。2009年からはデジカメ市場にも参入し、新作発表のたびに話題を集めてきた同社。そのカメラづくりの現在地たる、最新モデル「BF」を紐解く!

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スタイリッシュな外貌で話題を集めた「BF」。革新的スタイルの根幹にあるシグマのデザイン哲学について、先述の畳家さんに訊ねると、「実は、会社としてのデザイン哲学を持たないようにしています」という回答が。

“既成概念が可能性を狭めてしまうこともある”というのがその理由で、2012年以降は、製品デザインのすべてをイワサキデザインスタジオと一緒に行なっている。そこで興味深いのが、デザインにおける外観と内部構造の関係性だ。通常、エンジニアが設計した内部構造に合わせて外観をデザインするが、同社ではエンジニアとデザイナーが何度も議論を重ねる中でデザインと構造を両立させていくのだという。

「BFがまさにそうです。カメラの本質である“撮ること”を追求し、『より直感的に操作するためには、デザインも究極のシンプルを目指すべき』という考えのもと、操作系の部材を最新のデジカメとして求められる機能性がギリギリ成立するまで削減。外装構造に合わせて操作性も極限までシンプルにしました」

このように“枠組みに囚われない”姿勢を体現しているからこそ、BFはガジェット好きからカメラに興味がなかった新たな層までをも虜にするのだ。

「BF」(38万5000円)

約2400万画素のフルサイズセンサーによる高精細な表現力と、信頼性の高いハイブリッドAFシステムで被写体を正確に捉え、シンプルで明快なユーザーインターフェイスが直感的な操作を可能に。Lマウントを採用し、同社製の多彩なミラーレス用レンズに対応する。

▲金属の心地よい重量感と、余計な要素を排したソリッドなデザインが最大のストロングポイント。考え抜かれたボタン配置による洗練された操作部が、直感的な操作を可能とする

▲7時間をかけてアルミニウムインゴットから削り出した、継ぎ目のないユニボディ構造。前面部に刻まれたローレットなど、快適な操作性とホールド感を両立させる配慮も光る

▲BFの特長であるボディの質感と好相性なのが、同じく金属削り出しのボディを持った「Iシリーズ」レンズ全9機種だ。組み合わせることで統一感のある撮影システムが構築できる

>> 連載【GPジャーナル】

※2025年11月6日発売「GoodsPress」12月号108-111ページの記事をもとに構成しています

<取材・文/TOMMY 写真/田中利幸(P108、P109) イラスト/福島モンタ>

 

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