街でよく見る“アウトドアシューズ”、なぜ人気? スニーカー&アウトドアのプロが語る最新事情

【“いまどき”アウトドアシューズ解体新書】

最近、街中でアウトドアブランドのシューズを履いている人をよく見かけませんか? “デザインはかっこいいけれど、山に行かない自分にはオーバースペックでは?”、“そもそも、普通のスニーカーと何が違うの?”と疑問に感じている人も多いはず。 実は今、アウトドアシューズとスニーカーの境界線は驚くほど曖昧になっています。では、ズバリ“何をもってアウトドアシューズと呼ぶ”のでしょうか。

この素朴な疑問を整理するため、スニーカー専門店「mita sneakers (ミタスニーカーズ)」とアウトドア専門店「石井スポーツ」に話を伺いました。立場の違う2つの売り場から見えてきた“いまのアウトドアシューズ”の現在地と選び方のヒントを整理していきます。

Q1. 各専門店の考える“アウトドアシューズ”とは?

▲ミタスニーカーズ プレス 草ヶ谷 駿さん/1994年生まれ。小学校~高校でサッカー部だったこともあり、プーマ「パラメヒコ」や「クライド」に出合いスニーカーに目覚める。地元企業に勤めた後、「ミタスニーカーズ」で働くことを決意し上京。2020年からPRを担当

ミタスニーカーズ 草ヶ谷さん(以下、草ヶ谷):元々は悪路や山道を走るための靴という認識はありますが、当店ではカテゴリーを明確に分けてはいません。メーカーが打ち出した用途をあえて崩すことに面白みを感じており、お客様の「何をしたいか」に合わせて提案しています。結果として、ライフスタイル向けのスニーカーとアウトドアシューズの境目はかなり曖昧になってきていると感じています。 ただし、トレッキングなどの本格的な領域までいくと、それは“楽しむための靴”ではなく“ゴールに向かうためのギア”としての側面が強くなります。細分化されたカテゴリーの中でもそこはしっかりと見極めてチョイスするようにしています。

▲石井スポーツ吉祥寺店 笠高知彦/1998年生まれ。大学時代に石井スポーツでのアルバイトをキッカケに、登山を始め、現在はトレイルランニングを中心にアウトドアを楽しむ。安全に快適にアウトドアを楽しめるような接客を心がけている。

石井スポーツ 吉祥寺店 笠高さん(以下、笠高): 天候の変化や過酷な環境でも足を守り、長時間歩き続けられる耐久性と機能性を備えたシューズだと定義しています。スニーカーとの境目は薄まってきているものの、現在も一定の基準として残っているのが“足を守るための硬さ”です。最近は柔らかい素材のシューズも増えていますが、柔らかすぎる靴はよくない事もあります。未舗装路を歩く際の足への負担を考えると安定感のためにある一定の硬さは必要です。このあたりは“アウトドアシューズ”ならではの要素だと考えています。

Q2. なぜ今、街履きとして人気?

草ヶ谷:生活様式の変化や、ゲリラ豪雨や猛暑といった日本の気候の変化が大きな要因ではないでしょうか。防水・透湿性を備えたGORE-TEXなどの機能素材が求められ、“日々の生活を快適にするために必要だから身に着けている”という人が増えたように感じます。私自身、アウトドアは全くしませんが、今のアウトドアシューズは“アウトドアをしない人のための実用靴”としても機能しています。なので、自分の生活に合うかどうかの実用性ベースで選ばれている方が多いですね。

笠高:これまでに比べて、屋外フェスや普段履きとして購入する層が非常に増えていますね。急な雨や泥などの環境に対応するため防水性が強く求められている、という印象があります。また、靴自体の軽量化が進み、ガチガチのミドルカットよりもスニーカー感覚で履けるローカットを選ぶ人も増えました。こうした変化が街履きとして取り入れられる理由のひとつになっています。ハイキングや軽い登山まで使える信頼性の高さもその流れを後押ししています。

Q3. アウトドアシューズのトレンドは?

草ヶ谷:現在のトレンドを語る上で欠かせないのが、KEENの「ユニーク」やHOKAの「TOR ULTRA」です。アウトドアブランドの靴を街で履く流れや、“アーバントレイル”といったスタイルはこうしたモデルをきっかけに広がっていきました。最近はハイキングベースからトレイルランニング由来のモデルへと移行し、よりミニマルで落ち着いた色味が選ばれる傾向にあります。例えばHOKAの「スピードゴート2」(2万7500円)や「マファテスピード2」(2万4200円)のように、派手な色ではなくスタイリングに馴染むブラウンのワントーンなどが選ばれるケースが増えています。これは、手持ちのワードローブにそのまま馴染む点が理由です。

笠高:アクやスポルティバといった老舗登山ブランドからローカットモデルが、ザ・ノース・フェイスやアークテリクスからはスリッポン型などが登場し、各社から普段履きしやすいスマートな靴が続々と発売されています。また、接客現場のリアルなトレンドとして、若い世代を中心に細身の足型の方が増えているという実情もあります。こうした足型の変化に加えて、アウトドアシューズ自体もシャープで洗練されたシルエットへと進化しています。その結果、かつての野暮ったさが薄れ普段のファッションにも取り入れやすくなっています。

Q4. 各専門店が推す、今注目のシューズとは?

▼ミタスニーカーズ 草ヶ谷さんの推し

KEEN「UNEEK 360」(2万4200円)

アウトドアブランドのシューズを街で履くという概念を変えた名作「ユニーク」の最新アップデート版。接着剤を一切使わずコードで編み込まれたモジュラー構造が生むフィット感が特徴で、無駄を削ぎ落としたミニマルな機能美とワントーンの佇まいが、どんなスタイルにも自然と溶け込む一足です。アウトドアの文脈から生まれながら、都市生活へと最適化された現代的なモデルです。

▼石井スポーツ 笠高さんの推し

サロモン「XA PRO 3D V9 GORE-TEX」

サロモンの定番・ロングセラーモデルです。完全防水のGORE-TEX素材を採用しているため、急な雨や雪の日でも安心。ソールには独自のコンタグリップを使用しており、しっかりとしたラグ(溝)が不整地でも滑りにくい高いグリップ力と耐久性を発揮。また、つま先が少し反り上がった“ロッカー形状”になっており、アップダウンの少ない道や長距離をゆっくり歩く際にも歩きやすい構造です。上にぐっと引っ張るだけで素早く全体が締まり、ほどける心配がない「クイックシューレース」は、街履きでも抜群の使い勝手を誇ります。普段のファッションに合わせやすいオールブラックのカラーが特に人気を集めています。

* * *

街履きにおいて言えば、アウトドアシューズのあらゆる天候に対応できる防水性や、足への負担を減らし安定感をもたらす適度な硬さは、そのまま日常の快適さに直結します。

ファッションの視点から提案するスニーカー専門店と、山のプロフェッショナルであるアウトドア専門店。入り口は違う2つのお店ですが、現代のアウトドアシューズに対する結論は共通していました。それは普段履きとしてシューズを求める人が増えている現代において、もはや“山用の靴”と“街用のスニーカー”を明確に分ける時代ではないということ。もちろん、本格的な登山となれば安全のための専用ギアが必要になりますが、現代の境界線はよりシームレスになっています。

靴自体のシルエットもシャープになり、手持ちの服に合わせやすいワントーンのモデルも増えました。これほどデザインが街に馴染み、しかも機能的で快適なのであれば、普段使いの選択肢として選ばない手はありません。

アウトドアシューズは今や特別な用途に限らない“日常を快適にするための靴”へと進化しています。

【店舗情報】
「mita sneakers (ミタスニーカーズ)」
住所:東京都台東区上野4丁目7-8 アメ横センタービル1F 路面店
営業時間:月〜金 11:00~19:30/土日祝 10:00~19:30
定休日:元旦・第三水曜日
>> ミタスニーカーズ

【店舗情報】
「石井スポーツ 吉祥寺店」
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-11-5 コピス吉祥寺B館4F
営業時間:10:00~21:00
定休日:不定休
>> 石井スポーツ 吉祥寺店

 

<取材・文/山口健壱円道秀和(GoodsPress Web編集部) >

 

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