最も美しいと旅客機と呼ばれた「L-749」を製作【達人のプラモ術<ロッキードL-749コンステレーション>】

【達人のプラモ術】
エレール
「1/72 ロッキードL-749コンステレーション」
前編

ホビーファンの一大イベント「静岡ホビーショー」の興奮がまだまだ覚めやらぬうちに季節は6月。今回は1940年代に世界の空を飛んでいた空の貴婦人ロッキード・コンステレーションを製作します。

エレール
「1/72 ロッキードL-749コンステレーション」(9460円)
プラッツ扱い

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。タミヤ公式YouTubeチャンネルなどでもハウツーレビューを配信中。

 

■古き良き時代の翼。ロッキード・コンステレーション

ロッキード コンステレーションは、アメリカの航空機メーカー・ロッキード(当時)が開発した4発の大型ナローボディレシプロ旅客機です。“コニー(Connie)”のニックネームと、3枚垂直尾翼を持った特徴的な機体形状で知られ、1940年代から1950年代にかけて、レシプロエンジン旅客機の歴史の有終の美を飾った存在であり、そして当時は最も美しい旅客機としても名を馳せました。

生みの親は、当時トランス・ワールド航空(TWA)のオーナーで大富豪として知られるハワード・ヒューズ。まだ戦争が続いていた1939年に、当時の長距離爆撃機を超える飛行性能と与圧された客室を持ち、北アメリカ大陸無着陸横断飛行が可能な旅客機として開発されました。

第二次世界大戦中の1943年1月9日に初飛行。プラット・アンド・ホイットニー R-2800エンジン(2000馬力)を4基搭載し、当時の旅客機としては航続距離、巡航速度は世界最高性能を誇ります。

第二次大戦終結後には、TWAだけではなく、ライバルのパンアメリカン航空をはじめ各国で民間航空が復活するとともに、仏エールフランス航空やKLMオランダ航空など、各国のフラッグ・キャリアに採用され、大西洋、太平洋を越えて運航可能な旅客機としてベストセラーとなりました。今回製作した「L-749」は、初期型のL-649の発展型となる機体です。燃料タンクを増やしたことで航続距離が1600 km伸び、最大航続距離が6429 kmとなり、最高速度555km /hを誇りました。

L-749は「C-121」として軍でも採用され、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領の専用機やダグラス・マッカーサー元帥の専用機「バターン号」としても使用されました。民間航空会社として使われたコンステレーションは1960年代後半から1970年代前半にかけて順次退役しました。

ワイドボディのターボジェット旅客機が一般的になった現在では古めかしくも感じるレシプロ旅客機ですが、コンステレーションは戦後の民間航空の発展に大いに貢献した美しき空の貴婦人であったことは間違いありません。

▲TAWカラーの「L-749 コンステレーション」。胴体下面にスピードパック(外部貨物コンテナ)を装着している(※キットには付属していない)。機内スペースが少ないコンステレーションのペイロード能力を向上させるためのもの(出典:RuthAS, Lockheed L749A N6022C TWA Connie final.jpg, CC BY 3.0

 

■旅客機プラモデルの魅力

飛行機プラモデルの中でも旅客機は、古くから定番の人気ジャンルではあります。軍用機に比べれば身近な存在ということもあるのでしょう、最近では最新鋭のボーイング787、エアバスA-380などもプラモデルとして人気ではあります。ひと昔前のボーイング747、同じくボーイング737なども、ロングセラーのエアライナーとして世界中のキャリアに採用された日本の空でもお馴染みの旅客機や、国産旅客機第1号のYS-11などもプラモデルとして人気があります。

キャリアごとの個性的なカラーリングやグラフィック、特にスペシャルマーキング(スターウォーズカラーやポケモンジェットなど)の機体もモデル化されることが多く、それもまた旅客機モデルの人気の理由のひとつです。また、旅行などで自身が乗ったキャリアの機体をプラモデルで手元に置いておきたい、なんてのもあるようです。日本航空の、懐かしい鶴のマークの機体をコレクションしているモデラーもいます。

個人的には今回製作のコンステレーションも良いのですが、さらに古いDC-3の旅客機とか、エールフランスの1996年ペプシカラーのコンコルド特別塗装機がお気に入りなんですけどね。

(出典:Aero Icarus from Zurich, Switzerland, Air France Concorde (F-BTSD) short-lived Pepsi logojet, CC BY-SA 4.0

 

■エレールについて

今回製作したコンステレーションは、Heller(エレール)社のスケールモデルです。
エレールはフランスのプラモデルメーカーで、1957年パリにて創業され、飛行機やクルマ、艦船などのプラモデルを生産販売しています。現在はドイツのGlow2Bに買収され新会社となっていますが、生産は現在もフランス国内の工場で続けられているとのことです。

日本でも馴染みの深いプラモデルメーカーで、1970年代にはトミー、1980年代にはツクダ、イマイ、そしてグンゼから発売されていました。現在はプラッツが輸入販売を行っています。日本語ではエレールと読みますが、年輩者モデラーの中にはヘラーと呼んでいた人も多かったですね。

同社は現在でも新製品は発表していますが、入手できる同社のキットの多くはボックスアートやデカール刷新された再販バージョンが大半を占めています。

エレールの魅力のひとつが、そのボックスアートです。時期にもよりますが、センスが良い、購入意欲をそそるボックスアートが多いんですね。これも芸術の国フランスのメーカーだからということなのかもしれません。ともかく魅力的なイラストが多いのです。ドイツのGlow2B傘下になってから黄色のパッケージに刷新されましたが、ボックスアートは傑作が多い印象です。今回製作したL-749のボックアートも良い雰囲気ではあるのですが、ちょっと地味なのが残念(個人的感想)。

同じコンステレーションでも、L-1049Gスーパーコンステレーションのボックスアートがもう最高。陽光の下タキシングするルフトハンザの機体、輝くジュラルミンの表現が秀逸で、手前にはルフトハンザカラーのVWビートルが描かれており、額縁に入れて飾りたくなるほどカッコ良さです。これ模型店で見たら、言うところの“ボックスアート買い”間違いなし! しかしこのボックスアートのキットは現在はなかなか入手できないのが残念です。

▼エレールの最新キットギャラリー

▲「1/72 E2C ホークアイ」(9900円/プラッツ扱い)ボックスアートは…あまり似ていないというか雰囲気がいまいちww

▲飛行機モデル以外でもエレールのボックスアートは秀逸なものが多い。個人的には1/24カーモデルの「ゴルディーニレーシングセット」が気に入っている。ゴッホを思わせる絵画調の背景と組み合わされた、美しいフレンチブルーの「ルノー8 ゴルディーニ」と、同じく「ルノーエスタフェッテ」。最高のボックスアートだ

 

■キットに関して

コンステレーションは1960年代からキット化され人気があるのですが、実のところあまりキットに恵まれていないんですね。大型4発の旅客機ということもあるのでしょうが、小さめの1/144やノンスケールがほとんどで、1/72は今回のエレールのみです。

まぁ旅客機モデルは、完成後も手頃なサイズとなる1/100や1/144スケールが主流で、1/72は逆に異端なのかもしれません。最新のエアバス380なんかを1/72でキット化したら胴体長が1mを超えちゃいますから。1/72のL749コンステレーションだと、完成後は翼幅が約53cm、胴体長約40cmとそれなりに見栄えのするサイズとなります。

キット自体は1970年代に発売されたそれなりに古いもので、L-749以外にもL-1049Gスーパーコンステレーション、C120AコンステレーションMATS、早期警戒型EC121 ワーニングスターなどもリリースされています。

それなりに古いキットなので、製作は最新キットのようにはいきません。パネルラインは凸モールドなので、流麗なプロポーションを引き立てるために、全てシャープに凹線に掘り直す必要があります。基本のプロポーションは悪くないのですが、主翼の上反角が不足していたり、キャビンのクリアパーツがヒケていて使えないなど、修正作業がテンコ盛りです。

R-2800エンジンはディテールが正直アバウトですが、正面から少ししか見えないので、手を入れていません。コクピットは座席や計器板など良くできていますが、完成後はほとんど見えません。また客室内は再現されていません。

▲ボックスアートはエールフランスカラー

今回は細部にこだわらず、空の貴婦人たるコンステレーションの流麗なプロポーションを引き立てることを主眼に製作。マーキングはボックスアートに描かれているエールフランス(1950年)とTWA(1948年)の2種類が付属しており、今回はTWA仕様で製作を進めています。

▲最近のエレールはパーツがビニール袋に入っておらず(箱はブリスターパックされている)黒い紙に包まれているだけの省エネ仕様になっていた

▲ランナーから外れたパーツが箱の中にゴロゴロ転がっていて、ちょっと不安になる

▲クリアパーツのみビニール袋に入っている。傷防止のためだろう

▲インスト(組み立て解説書)は鮮やかなイエローの表紙。フランス語・英語・ドイツ語・スペイン語の4カ国語で表記されている。ドアノブにかける“模型製作中は部屋に入るな”のプレートが付属付しているが意味不明

▲古いキットということもあるがパネルラインのモールドは、動翼を除いて全て凸ラインで再現されている。作例は全て凹モールドに掘り直している

▲1/72でも胴体長で約40cmもある。旅客機のモデルとしてはかなり大型

▲パネルラインをラインチゼルなどを使い凹ラインに彫り直しているのだが、素材のプラが柔らかいためチゼルの刃が逸れやすく、かなり苦労させられた

▲機体を仮組みしてみると、主翼の上反角が不足していることが分かった。修正の必要あり

▲胴体内のキャビンは再現されていないが、完成後もほとんど見えないので黒塗りのみで対応

▲曲線で構成されたコンステレーションの特徴的な3枚の垂直尾翼(仮組み状態)

▲エンジンパーツは前面のみ再現されているが、出来はかなりアバウト。とはいえ、カウリングに組み込みプロペラを取り付けるとほとんど見えなくなるので、こんなディテールでも問題なし

▲クリアパーツの透明度は悪くないが、キャビンの窓は表面が凹状にヒケてしまっているので、このままでは使えない

▲デカールはTWAとエールフランスの2種類が付属

▲今回はTWA仕様で製作

 

■エレール「1/72 コンステレーション」のバリエーション

※発売されている現行パッケージのみでの紹介ですが、生産が終了しているものもあります。発売時期が古い旧バージョンだと、パンアメリカン仕様などさらに多くのバリエーションが発売されていました。

▲「C-121Aコンステレーション MATS」アメリカ空軍、国防総省直轄の統合輸送軍仕様機。東西ドイツ分割時の物資輸送、ベトナム戦争初期の人員や物資の輸送任務に使用された機体

▲「L-749 コンステレーション “フライング・ダッチマン”」KLMオランダ航空仕様 。オランダの伝説になっている彷徨える幽霊船(フライング・ダッチマン)をモチーフにしたKLMのコンステレーション

▲「L-1049 スーパー コンステレーション TWA」L-749 の性能向上型L-1049。胴体の中央部分が5.64m延長され、よりスマートになった機体。TWAカラーがよく似合う

▲「EC-121ワーニングスター」L-1049 スーパーコンステレーションをベースにした空中早期警戒機で、機体上部と胴体下面に大型レドームを装備。アメリカ空・海軍で運用された機体

▲模型店で購入するプラモを選ぶ理由のひとつがボックスアート。こちらは、飛行機好きなら間違いなく手にしてしまう旧デザインのL-1049スーパーコンステレーションのセンス最高のボックスアート

 

■次回完成!

古き良き時代のレシプロエンジンのエアライナー、当時もっとも美しい旅客機と呼ばれたロッキード・コンステレーション。次回は完成したモデルを紹介します。乞うご期待!

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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