久しぶりにオピネルを見たらハンドルが木じゃなかった。特化の3モデルがアウトドアファンに刺さりすぎる

往年のキャンプ好きにとって、ナイフといえばオピネルではないでしょうか。木のハンドルに、パタンと畳めるステンレスの刃。今でこそ選択肢はいくらでもありますが、10年ほど前のキャンプブームでは、テーブルに置いてあるだけで様になる一本としてやたらと見かけました。それ以前からずっと使われてきた定番ではありますが、あの時期に一気に顔が広くなった印象があります。

1890年にフランスで生まれ、パブロ・ピカソが愛用したことでも知られる老舗。そのオピネルから、雪山や海の上で使うことを前提にした新シリーズが出ているのをご存じでしょうか。

新シリーズの名前は“スポーツライン”。登山とクライミング向けの「néo7 ALPINE(ネオセブン アルパイン)」(6160円)、ハイキングからカヌーやマウンテンバイクまで守備範囲の広い「horizon No.08(ホライズン)」(5280~7480円)、海の上で使う「Ocean No.09(オーシャン)」(9350円)という3モデルで、いずれもフランス国内で作られています。オピネルは番手、つまり刃の大きさで選ぶのが基本ですが、こちらは“どこで使うか”で選ぶ3本になっています。

共通するのはハンドルがグラスファイバーを30%配合した樹脂だということ。木のハンドルのオピネルを使ったことがある人なら、洗ったあとに刃が固くて開かなくなるあの感じをご存じかと思います。木が水を吸って膨らむからで、爪を立てて引っ張るはめになる。樹脂のハンドルにはそれがありません。濡れたまま畳んでも、次に開くときの感触は変わらないわけです。

もうひとつ、3本とも柄の末尾にホイッスルが仕込まれています。「néo7 ALPINE」が100dB、「horizon No.08」と「Ocean No.09」が110dB。声が届かない距離や風と波の音にかき消される場所を想定した仕様です。木のハンドルの牧歌的なイメージとはずいぶん違う顔つきになってきました。

■片手で開いて、片手で閉じる。41gの「néo7 ALPINE」

3本のうち、いちばん見た目が変わっているのが「néo7 ALPINE」です。刃渡り8cmの波刃で、重さは約41g。単3形の乾電池2本より軽い計算になります。

登山やクライミングを想定した一本なので、片手で扱えることに振ってあります。“OPIFLEX”と名付けられた機構によって、ロックを操作せずに刃が開閉する仕組み。閉じた状態でも刃先がわずかに顔を出していて、そこを親指で押し上げれば片手のまま開きます。もう片方の手でロープや岩をつかんだままでいい、ということですね。

顔を出している刃先はスクレーパーとしても使えて、凍りついた金具や板の汚れを削ぎ落とせます。ハンドルにはドライバービットを挿すスロットもあるので、ギアのネジがゆるんだときにその場で締め直せる。

ハンドルの一部にはコルクが使われていて、金属や樹脂のグリップほど手に冷たくありません。カラーはグレーシャブルー、ダークブラウン、リンデンの3色です。

■-40℃から80℃まで。いちばん潰しが効く「horizon No.08」

かく言う私が使っているのは、定番のステンレススチール「No.08」(2640円)です。買った当時は2000円台前半で、キャンプ場で野菜を刻むくらいならペティナイフの代わりになる。刃渡り約8cmという大げさになりすぎないサイズ感が絶妙でした。

「horizon No.08」はその刃渡りを受け継いだモデル。手の中の感覚は変えずに、ハンドルだけを水に強い樹脂へ置き換えた一本ということになります。あの使い勝手のまま濡れても平気になるのなら正直かなり気になります。

ロック機構はブランドの代名詞である“ビロブロック”。刃を出したあとに根元のリングを回して固定する、あの機構です。作業の途中で刃が畳まれる怖さがないのは、慣れた人ほどありがたいところではないでしょうか。

耐えられる温度は-40℃から80℃まで。氷点下でハンドルが割れる心配がなく、夏の車内に置きっぱなしにしても歪まないということですね。重さは約63gで、ハンドル長は約109mm。カラーはオレンジとカーキ、それにブラックの3色で、ブラックだけは刃にPVDコーティングを施していて7480円になります。

■ロープを切って、結び目をほどく。海の上の「Ocean No.09」

3本のなかでユニークなのが「Ocean No.09」。刃渡り9cmで、根元側がギザギザの半波刃になっています。濡れたロープは普通の刃だと滑って逃げますが、波刃なら食い込ませて引き切れる。

おもしろいのは刃以外の部分。ハンドルにはマーリンスパイク(ロープの結び目をほどいたり編んだりする、先の尖った金具)が内蔵されていて、固く締まった結び目を力ずくでこじ開けられます。加えてシャックルキー(ヨットの金具を回すための工具)まで備わっています。

重さは約80gで、ハンドル長は約121mm。カラーはブルー、レッド、イエロー。どれも甲板や水面で目立つ色です。

木のハンドルが使うほどに色を深めていく、あの感じが好きな人には樹脂のボディは味気なく映るかもしれません。ですが、樹脂といっても味気ないわけではなくて「néo7 ALPINE」はグリップにコルクを合わせていますし、「horizon No.08」にはブレードまで黒く沈めたモデルがある。特化している「Ocean No.09」はそれだけで気になってしまいます。素材が変わってもアウトドアマンの心を鷲掴みにしてくるあたりは、やっぱりオピネルです。

>> OPINEL

<文/山口健壱>

 

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