70年代から今日に至るまで、世界的に見ても類い稀な「コンパクトな本格四駆車」として支持を集め続けるスズキ・ジムニーシリーズ。2025年1月発売の最新フラッグシップモデル、ジムニーノマドは、早くも今年7月にマイナーチェンジ版「2型」を発売し、大いに注目を集めています。
ジムニーノマドは2025年1月の発売時点で注文が殺到し、わずか4日で受注停止に。当初の月間販売目標1200台をはるかに超える約5万台もの受注があったことから、スズキ側の思惑よりも、ユーザーの「こんなクルマを待っていた」思いが軽く上回ることを示す結果になりました。
▲3ドアのジムニー シエラ(画像:スズキ)
▲月間販売目標1200台をはるかに超える約5万台もの受注があったジムニー ノマド(画像:スズキ)
しばし、こういった混乱(?)も含めてスズキは月間生産台数を調整するなどしましたが、ジムニー ノマドの受注を再開したのは1年後の2026年1月。納車時期については異例の「抽選順」を採用し、最長2年ほど待たなければ納車されないほどの人気ぶりです。
さらに、今年7月には先進の安全装備であるデュアルセンサーブレーキサポートII、全車速追従機能付アダプティブクルーズコントロール(4AT車)などを新採用した「2型」を発売。
さて、筆者はこの「2型」発売から間もなく、同モデルを「オン・オフ」双方で試乗する走行会に参加する機会を得ました。様々なレビューからは「かなりの進化ぶり」と評されるシリーズ最新のフラッグシップモデル、ジムニーノマド。その乗り味、走破性とは果たして!?
■【概要】シリーズ初の5ドアモデルにして、初代から続く車体構成を継承&進化!
まずはジムニー ノマドの概要から紹介します。
「2型」では前出の安全装備などが追加されましたが、一番の特長はジムニーシリーズ初となる5ドアモデルへと進化したこと。先代のジムニーシエラよりも全長およびホイールベースを延長させ、後席の着座位置を後方に移動させ、居住性・快適性を格段にアップさせました。
また、56年前の1970年発売の初代から続く、ジムニーシリーズの最大の特長であるラダーフレームを刷新し、重量増加に対して十分な剛性を確保しました。
▲シリーズ初の5ドアモデルとしての登場となったジムニー ノマド
▲ホイールベースを延長させたことで後席の着座位置を後方に移動させ、居住性・快適性をアップ
▲前席およびコックピット付近もシンプルで上品な印象を受けました
▲ジムニーシリーズの特長のラダーフレームも刷新されました(画像:スズキ)
さらにFRレイアウト、副変速機付パートタイム4WD、3リンクジッドアクスル式サスペンションなどの車体構成も継承し、ジムニーの持ち味である「オン・オフ」双方の操縦安定性を実現させています。
一方、個人的には、ここまでのジムニーノマドの概要を受け、正直を言えば「5ドアにしたり、後席の居住性を楽にさせるなどし、ジムニーをファミリー層でも十分乗れるモデルに進化させたのだ」という先入観を持ちました。
しかし、その先入観があまりに安易で、想像をはるかに超える乗り味があることを、この後の試乗で強く思い知らされる格好になりました。
■【オンロード】直線の伸びと独特のステアリングは「運転している」感十分!
▲ジムニー ノマドの5MTモデルに乗ってオンロードを走ります
オンで試乗したのはジムニーノマドの5MTモデル。かつて筆者はロシアのSUV、ラーダニーヴァに乗っていたことがあるのですが、車格はもちろん、ギアの入り方、レスポンスなども含めてラーダニーヴァとよく似た印象を受けました。
しかし、走り出しで「まるで違う」とも思ったのが、直線の伸び。特に3速での中速域での伸びは気持ち良いほどで、ボディが揺れたりステアリングがブレたりすることは全くありません。長くなったホイールベースの影響も当然ありましょうが、このクラスの四駆車として十分安定した走りを見せます。最新モデルのクルマでは薄まりつつある「自分が運転しているのだ」感を十分感じられて楽しく思えました。
▲3速での中速域での伸びが心地良いです
▲オンでの視認性も十分なサイドミラー
一方、ステアリングは最新モデルの乗用車よりやや硬めで、路面から受ける衝撃もボディ全体に相応に響きます。また、ホイールベースが伸びたせいか鋭い角度の曲がり角などでは、慣れないとうまく切り返せないところもありました。筆者の運転が下手なせいもあるでしょうが、実走中、一度バックし直して曲がった交差点もありました。
▲ステアリングはやや硬め
▲狭い道路での鋭い角度の曲がり角などでは小回りがききにくいクセも感じました
これもまたラダーフレームであること、オンだけではなくオフをも走破するための設計であることを踏まえれば、当然の範疇内の話ではあるのですが、前述のように「ファミリーカーユース」として考えた場合、自ずとユーザーを選ぶモデルでもあるように思いました。
例えば一般ファミリーカーからの乗り換えとしてジムニーノマドを候補にした場合、こういった「独特のクセ」を理解した上でチョイスすべきでしょう。また、軽自動車クラスのジムニーからの乗り換えであっても、ジムニーノマド特有の乗り味は、事前に理解したほうが良いとも思いました。
言い換えれば、当初こそ5ドアとなり軟化した先入観を抱いたジムニー ノマドですが、実はかなり硬派で本格的なSUVなのだと考え直した次第でした。
▲ジムニーノマドは正直「乗り手を選ぶクルマ」のようにも感じました
■【オフロード】ジムニー ノマドの真骨頂を感じる機能満載!
▲ジムニー ノマドのATモデルに乗ってオフロードを走ります
続いて、4AT車に乗り換えてオフロードでの試乗です。
「林間コース」「急な上り坂」「すり鉢」「ブレーキLSD体験ローラー台」「モーグル」の5スポットを体験しましたが、各悪路の特徴とジムニー ノマドの走破性の感想は以下になります。
【林間コース】
▲「林間コース」。バンクがかった悪路も難なく走破
緩やかな勾配と左右にバンクがかった悪路を走るコース。オンロードでの直進の安定性がこの悪路でもさほどブレることなく、斜めがかった道路でも、運転席は平衡を保ち続ける印象でした。また、オンロードで感じた「路面からボディが受ける衝撃」は、この悪路でもそう変わらない印象を受けたのも不思議。実はかなり綿密なサスペンション構造を持っているようにも思いました。
【急な上り坂】
▲ジムニー ノマドの各アングル図(画像:スズキ)
▲「急な上り坂」のどの位置でもグッと地につき続ける印象
ジムニー ノマドの登坂における走破角度はホイールベース延長に伴って、アプローチアングル(前方の障害物を前輪が乗り越えられる角度)が36度、ランプブレークオーバーアングル(乗り越えた障害物がアンダーボディに接触せず超えられる角度)は23度、デパーチャーアングル(リヤバンパーやマフラーなどが障害物に接触せずに超えられる角度)は47度となっています。
これだけの走破性を確保しているわけで不安などはありませんでしたが、実際に上って驚いたのはその接地性。「急な上り坂」をあえて10km以下で走ってみましたが、どの位置でもグッと地につき続ける印象で優れた対地クリアランスを強く実感しました。
【すり鉢(下り坂)】
▲「すり鉢(下り坂)」ではヒルディセントコントロールを使用
▲ヒルディセントコントロールのスイッチ
▲ヒルディセントコントロールの作動時のランプ
すり鉢状のスポットでの下り坂コース。ここではジムニーノマドのAT車・MT車双方に標準装備されているヒルディセントコントロールを使って下りました。
この機能はブレーキを自動制御することで車両の加速を抑え、定速走行を保つもの。トランスファーレバーが4Hまたは4Lの状態で、車速25km以下・勾配約7%以上で作動するもの。この機能を使うことで、ステアリング操作に集中でき、下り坂でもアクセルに強弱をつけるといった手続きを省くことができました。
【すり鉢(上り坂)】
▲「すり鉢(上り坂)」ではヒルホールドコントロールを使用
▲ヒルホールドコントロールのスイッチ
すり鉢状のスポットでの上り坂コース。あえて坂の途中で停車し、ブレーキペダルからアクセルペダルへと踏み替える瞬間に、最長約2秒間、一時的にヒルホールドコントロールが作動し、車体がガチっと固まります。この合間にアクセルペダルを踏み込むことでスムーズに発進し、前述の角度内の坂道であればかなりの低速でも上り切ることができることを実感しました。
【ブレーキLSD体験ローラー台】
▲「ブレーキLSD体験ローラー台」では対角線上のタイヤが接地を失いスタックする状態を体験
▲ブレーキLSDトランクションコントロールのイメージ図(画像:スズキ)
悪路などで対角線上のタイヤが接地を失い空転してしまうスタック状態を表現したローラー台。このローラー台の上に右前輪と左後輪を乗せアクセルペダルを踏むと、この二輪だけが空転し、車体自体は前へ進まなくなります。しかし、空転状態になると、ブレーキLSDトランクションコントロールシステムが作動し、空転していたタイヤに対してブレーキがかかります。
さらに接地していた左前輪と右後輪に強力な駆動力が作動し、車体は見事ローラー台から逃れる格好に。なかなかのインテリぶりで、このシステムがあればどんな悪路でも困ることはないだろうと感じました。
【モーグル】
▲直進方向に向かって左右に深いコブが配置された「モーグル」
直進方向に向かって左右に深いコブがデコボコに配置された「モーグル」。いかにも車体にダメージを与えそうな悪路・オブ・悪路ですが、これが意外にもグングン進みます。その秘密は緻密に計算されたコイルスプリング・ショックアブソーバーがもたらすサスペンションのストロークと戻り。
▲もちろん左右に大きく揺れながらも…
▲コイルスプリング・ショックアブソーバーのおかげで、接地しているタイヤはグッと地につき続けます
▲この激しい悪路でも車体はグングン前進
▲ホイールベースが長くなりながらも、十分すぎる悪路走破性を体感しました
確かに車体は左右に大きく揺れ、片方のタイヤが浮いた状態になることはあれど、接地しているほうのタイヤはグッと地につき続ける印象で、グングン前進。もちろん、激しいコブと対峙しても地面と接触することはなく、これまたジムニーノマドの強い堅牢性と緻密な計算がなせる技術なのだと実感しました。
■【結論】ジムニーノマドはかなり本気のオフ車かも!?
5ドアとなり、やや軟化したかのような先入観を抱きましたが、実際に乗ってみると大間違い。ジムニーノマドを「オン・オフ」双方の試乗をして受けた印象はズバリ「かなり本気のオフ車」であるということでした。
▲かなり本気のオフ車であることを痛感しました
前述の「オン」で感じた「独特のクセ」は、ファミリーカーユースの層にはややハードルが高も感じた一方、「オフ」での走破性は緻密な計算、強い堅牢性が実現するものであり、かなり本気のオフ車感を感じました。
試乗を終え、こんな話をスズキ担当者に話すと、以下のように返してくれました。
「ジムニー ノマドのコンセプトは、本格的な悪路走破性能を持つ、5ドアコンパクトクロカン4×4です。ジムニーシエラの特長である悪路や雪道の走破性を継承し、そのコンセプト自体に変更はありません。
ただ、開発ターゲットのイメージは少々変更をしました。
ジムニーを活用されるユーザーの方に対し、大別して『プロユーザー』『ジムニーの性能を日常生活で利用されている方』そして『ジムニーの性能に憧れを持つ方』と区分けしていますが、今回の5ドアモデルのジムニーノマドでは、このうち『ジムニーの性能を日常生活で利用されている方』を特に意識して開発しました。
悪路走破性の高さ、それを実現する頑丈なフレーム付き車体、また見切りの良いコンパクトなボディデザイン、無駄のない機能美デザイン、ジムニーシエラの特徴を継承しつつ、さらに加えて後席の乗降性、乗り心地、居住性の実現と、室内荷室の拡大を行いました。
悪路走破性と後席荷室の拡大という、相反する要求を満足させるために、ホイールベースの拡大では、いろいろ検討を重ねて必要最小限にとどめました。これによって、ジムニーノマドにおいても、ジムニーシエラのコアの技術である悪路走破性を飛躍させることができたと思っています」(スズキ担当者)
▲使い勝手・悪路での走破性双方を高めたジムニーノマド
ちなみに5ドアの素材や各部品は従来とほぼ変わらぬ一方、本来のジムニーが持つ堅牢性を損なわぬようかなり細部にわたって設計したとも。
言わば、使い勝手と悪路での走破性双方をかなり高めたモデルがジムニーノマドだと思います。これが正しければ、初期のジムニーが「プロの現場で特に重宝された」ように、このジムニー ノマドもタウンユースというよりむしろプロユースで重宝されるかなり硬派なモデルのようにも思いました。
<取材・文/松田義人(deco)>

松田義人|編集プロダクション・deco代表。趣味は旅行、酒、料理(調理・食べる)、キャンプ、温泉、クルマ・バイクなど。クルマ・バイクはちょっと足りないような小型のものが好き。台湾に詳しく『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)をはじめ著書多数
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- Original:https://www.goodspress.jp/columns/745936/
- Source:GoodsPress Web
- Author:GoodsPress Web
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