App Storeの手数料は上がるのか〜報道内容と日本への影響を読む

App Storeの収益の上げ方を見直す検討が進んでいるかもしれない、という報道が9月6日(現地時間)に出ました。手数料率の引き上げを報じたものではなく、Appleが利益率をどう高めるかという方針段階の内容です。ただ、収益構造の見直しはアプリの価格やサブスクリプションの月額を通じて、日本のiPhoneユーザーの支払いにも関わってきます。何が報じられ、どこからが未確定なのかを整理します。

App Storeの手数料は結局どうなるのか

現時点で、手数料率や課金条件の改定が決まった事実はありません。報じられたのは社内で検討が進んでいるという段階までにとどまります。

仮に何かが動くとしても、影響はまず開発者に及び、ユーザーにはその先で間接的に届きます。手数料の話が支払い画面へ直接現れる形にはなりません。先に来やすいのも手数料率の引き上げではなく、開発者側の固定費や周辺サービスの見直しです。加えて日本では円安と決済手段の制度変更が同時に進むため、変化の表れ方は米国と異なる可能性があります。

すぐにアプリの値段が上がるわけではなく、開発者向けの条件が中期的に変わるかどうかを見る局面です。

報じられた内容と登場する幹部

海外メディアの報道によると、AppleはApp Storeで利益率を高め、継続的な追加収益を得る方法を探っているといいます。中心にいるとされるのは、最高経営責任者(CEO)に就任したジョン・ターナス氏と、サービス部門を率いる上級副社長のエディ・キュー氏です。具体的な変更内容は明らかになっていません。

同じ報道は、App Storeとイベントの統括から退いたフィリップ・シラー氏の異動も、今回の検討と無関係ではないと伝えています。シラー氏は収益を優先する動きが開発者や規制当局の反発を招くだけだと考えており、社内で衝突はなかったものの、関わりたくない姿勢だったとされます。

背景には、収益性が高い一方で、数字を伸ばす判断がそのまま規制上のリスクを増やすというApp Store事業の構造があります。長年にわたり規制の矢面に立ってきた人物が距離を置いた事実は、社内に温度差があったことをうかがわせます。

手数料率の引き上げが選ばれにくい理由

仮に収益を伸ばすとしても、最も分かりやすい「手数料率を上げる」という手は、おそらく最後の選択肢になります。手数料率は、各国の競争当局が長く問題視してきた論点だからです。引き上げれば、調査や訴訟の材料を自ら差し出すことになりかねません。

現実的なのは、開発者側の固定費や周辺サービスを厚くする方向です。海外メディアは可能性の例として、米国で年99ドルとされる開発者プログラム費用の見直しや、大規模な開発者への利用規模に応じた課金を挙げています。Appleの計画として報じられた内容ではない点には注意が必要です。この方向なら、ユーザーに見える価格表を触らずに収益を積み増せ、規制上の摩擦も小さく抑えられます。

日本のiPhoneユーザーへの影響と2つの経路

日本のiPhoneユーザーへの影響は、開発者を経由する形で表れます。経路は、価格への転嫁と、為替や決済手段の変化の2つです。

アプリ価格とサブスクリプションへの転嫁

開発者は固定費が上がった分を、アプリ本体の価格やサブスクリプションの月額、あるいは広告の量に上乗せする可能性があります。個人開発の便利なアプリほど利幅が薄く、影響が表面化しやすいと考えられます。小幅な値上げや、無料版の機能縮小といった形が想定されます。

円安と外部決済の広がり

AppleはApp Storeの価格を各国の通貨で決めており、為替の動きがそのまま価格へ反映される仕組みにはなっていません。円安が進むと、Appleが各国の価格を見直す局面で日本の価格は上がりやすくなります。開発者側のコスト増が重なれば、日本のユーザーが受ける影響は米国と異なる形になりやすいといえます。

一方で、日本でもスマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律(スマホソフトウェア競争促進法)が整備されました。この法律は、アプリ内課金以外の決済手段をユーザーへ案内できる環境づくりを求めています。Appleが収益施策を強めるほど、開発者は自社サイトでの決済を案内する動きを強めるとみられます。ユーザーは「どこで払うのが安いか」を選ぶ場面が増えていきます。

発表イベント直前に浮上した意味

報道が出たのが、9月9日(日本時間9月10日)の発表イベントを目前に控えたタイミングだった点も見逃せません。ハードウェア部門を率いてきた人物がCEOに就いた直後に、サービス収益の話題が浮上しました。製品とサービスのどちらに軸足を置くのかという関心を刺激します。

もっとも、報道されているのは検討の存在までです。実際に何かが動くとすれば、開発者向けの規約や費用の改定という目立たない形から始まる可能性が高そうです。ユーザーとしては、いつも使うアプリの価格表示や課金の案内が静かに変わっていないかを見ておくのが確実です。

Photo:9to5Mac


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