最近コンデジ(コンパクトデジタルカメラ)が人気です。小さなレンズ一体型カメラは、「よし撮るぞ」と構える一眼カメラとは違い肩の力を抜ける手軽さがあります。
ではレンズ一体型カメラはみんな小さいのかというと、そうではありません。広角から一眼カメラではかなり大きなレンズが必要となる超望遠までをカバーする、ズームカメラとでもいうべきカメラも存在します。今回取り上げるソニー「RX10 V」もそのひとつ。
24-600という超高倍率レンズの実力や、どんな人に向いているのかなど、フォトグラファーの田中氏が実写レポートしていきます。
監修・執筆:田中利幸(たなかとしゆき)|ファッション誌などでブツ撮りやポートレートを中心に活動するフォトグラファー。カメラ・ガジェット好きで自身で運営するブログ「Tanaka Blog」において、カメラやガジェットに関するちょっとマニアックなことを書いている。
【趣味カメラの世界 #39】
ソニーの「RX10 V」は、1.0型センサーと35mm判換算24-600mmの高倍率ズームレンズを組み合わせた“レンズ一体型カメラ”です。いわゆるコンパクトデジタルカメラに分類されます。そう考えると実売価格の約36万円は少し高価に感じます。ボディも決して小さくはなく、バッテリーとメモリーカードを含めた重量は約1100g。持ち歩くには少し気合いが必要になるカメラです。
ただ、実際に使ってみると、RX10 Vを単なる“高価で大きなコンデジ”として見るのは少し違うと感じました。この一台に24-600mmまでのレンズと、αシリーズに近い操作性がまとまっていると考えると、むしろ合理的な撮影システムに見えてきます。
■“約36万円のコンデジ”は本当に高いのか

RX10 Vの価格だけを見れば、フルサイズミラーレスカメラも選択肢に入ってきます。センサーサイズやボディ単体の性能で比較すれば、フルサイズ機のほうがお得に感じる人も多いかもしれません。
しかし、フルサイズ機を購入しただけでは24-600mmをカバーできません。標準ズームに加えて望遠ズームなど、これだけの焦点距離をカバーするには、複数本のレンズが必要になります。そのため、価格だけでなく重量や荷物の量も大きく変わります。
RX10 Vには、ボディだけでなく複数本のレンズまで含まれていると考えると、このカメラに対する価格の印象も少し変わってきそうです。
■24-600mm F2.4-4を一台にまとめた撮影システム

RX10 Vのレンズは、35mm判換算24mmの広角から600mmの超望遠までをカバー。旅行先の風景や街中のスナップ、料理、人物、遠くにいる動物など、日常的に撮影する被写体の大部分へ対応できます。
▲RX10 V 1/400、F4.0、ISO125、600mm(35mm換算)
開放F値はF2.4-4の可変式。高倍率ズームとしては比較的明るく、望遠端でもF4を維持しています。実際に撮影した印象では、絞り開放から十分な解像感があり、広角側から望遠側まで画質は比較的安定していると感じました。
普段から何本ものレンズを持ち歩く人にとっては、24mmから600mmまでを交換なしで使えるだけでも大きな意味があることはよく分かると思います。レンズを交換している間に被写体が動いたり、撮りたい瞬間を逃したりすることがないのも、高倍率ズームレンズ搭載ならではの強みです。
■コンデジとしては大きい。でもレンズ込みなら合理的
▲左がα7R V+85mm F1.4 GM、右がRX10 V
RX10 Vは、コンパクトカメラと呼ぶにはかなり大柄です。α7R Vに大きめなレンズである85mm F1.4 GMを装着した状態と並べても、ほとんど変わらないくらいの大きさです。

重量も実測で約1100g(バッテリー、メモリーカード込み)あり、首から下げて一日歩けば、それなりの重さを感じます。

電源OFF時は鏡筒が収納されコンパクトにまとまっていますが、電源を入れるとレンズが繰り出し、600mmまでズームすると見た目にもかなり迫力があります。
ただ、24-600mmをカバーするカメラシステム全体として考えると、約1100gはむしろ軽量です。フルサイズ機と複数のズームレンズを持ち出すことに比べれば、小さめのカメラバッグひとつで済んでしまうので、荷物は大幅に少なくなります。
■操作感はコンデジというより、ほとんどαシリーズ

αシリーズに近い大柄なボディは、携行性の面では不利ですが、操作性では利点にもなっています。グリップは深く、普段使っているα7R Vとほぼ同じ感覚でしっかり握れました。

ボタンやダイヤルの配置、メニュー構造も最近のαシリーズに近く、ソニーのカメラを使っている人なら手間取ることなく撮影を始められそうです。カスタマイズ可能なボタンもしっかりあり、α7R Vと併用していても、ほとんど違和感なく撮影できます。

ズームはシャッターボタン周辺のレバーだけでなく、レンズ側のズームリングでも操作可能。24mm、35mm、50mm、70mm、85mm、135mm、200mmといった一般的な焦点距離へ段階的に移動できるステップズームの設定もあり、パワーズームながら、スチール撮影でも自然なズーム操作が可能です。
■NP-FZ100を共用できる「αのサブ機」としての価値

RX10 Vは、多くのαシリーズと同じNP-FZ100バッテリーを使用しているので、すでにαを使っている人なら、手持ちの予備バッテリーをそのまま共用できます。
今回の試用では、3〜4時間のスナップ撮影でバッテリー残量は60%ほどだったので、街歩きで普通に使う分には、かなり余裕のある印象。
ただ、やはりガッツリ撮影したいときには予備バッテリーも用意したいもの。バッテリーひとつとっても、安価ではないので手持ちのバッテリーがそのまま流用できるのは助かります。
操作系やメニューにも違和感がなく、バッテリーも共通。そのため、個人的に良さそうだと思ったのは、RX10 Vをαシリーズのサブカメラとして併用する使い方です。
メインカメラと同等の画質を得るための予備機というより、メインのレンズ構成では対応しにくい焦点距離を補ったり、ちょっとしたスナップで気軽に持ち出せるカメラという立ち位置で、2台のカメラを使っていても違和感がないのが気に入りました。
■1型センサーの画質はどこまで期待できるのか
▲RX10 V 1/400、F5.6、ISO100、30mm(35mm換算)
作例写真では雲の微妙なグラデーションや、ビルの細かい部分までしっかりと描写されていて、RX10 Vの1.0型センサーは、期待していた以上の画質の良さで十分にきれいだと感じました。
レンズの描写もズーム全域で安定しており、WEB掲載や一般的なサイズで見る写真なら、大きな不満はありません。
ストロボを使い、F9・ISO100、ほぼ同じ画角とライティングでブツ撮りをしてみました。シャッタースピードはRX10 Vが1/640秒、α7RVが1/200秒です。
▲上段:RX10 V 1/640、F9、ISO100、88mm(35mm換算)、下段:α7RV 1/200、F9.0、ISO100、90mm
同じ絞り値での撮影ですが、RX10 Vの小さなセンサーは、フルサイズセンサーに比べて被写界深度を深く取りやすいため、商品全体にピントを合わせたいブツ撮りでは利点にもなります。さらにRX10 Vはフラッシュ同調速度が高速なので、環境光の影響を少なくできるというメリットもあります。
こうしてみると、RX10 Vの画質も見劣りしないクオリティ。条件次第ではWEB用の商品撮影など、仕事でも使えるポテンシャルを感じました。
■RX10 Vが向いている人、向いていない人

RX10 Vは、小さくて軽いコンパクトカメラを求めている人には、あまり向いていないと思います。また、スマートフォンからカメラへステップアップする際、フルサイズらしい大きなボケや、センサーサイズによる圧倒的な画質差を最優先する人にも、最適な選択とは言えないかもしれません。
逆に、旅行や取材でレンズ交換をせず幅広い被写体を撮りたい人、超望遠を日常的に気軽に持ち歩きたい人、そしてαシリーズのサブカメラとして撮影領域を広げたいという人には、ピッタリとハマるカメラだと感じました。
スマホのように一台で幅広い場面へ対応しながら、600mmの超望遠と、本格的なカメラらしい操作性を備えている。誤解を恐れずに言えば、そんな「スマホの上位互換」のような存在にも感じました。
次回はRX10 Vを実際に街へ持ち出し、24-600mmという広大なズーム域が撮影者の視点をどのように変えるのかを試してみます。
>> ソニー「RX10 V」
>> 趣味カメラの世界
<取材・文・写真/田中利幸 モデル/朱里(@punta_ma96)>
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- Original:https://www.goodspress.jp/columns/746880/
- Source:GoodsPress Web
- Author:GoodsPress Web
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