犬と人の幸せな暮らしを追求する『パウリブプラス』代表理事・小野千恵子さん。『旭化成ホームズ』のLONGLIFE総合研究所で所長を務める河合慎一郎さんと共に、犬と人が共生する未来の暮らしについて考えた。
【DOG LOVER】
小野千恵子
『パウリブプラス』代表理事/犬と飼い主のためのアパレルブランド『LAUW』オーナー兼ディレクター/モデル 21歳のときにサッカー日本代表・小野伸二と結婚し、オランダへ移住。孤独な異国での生活を犬に支えられた経験から、ファッションブランド『LAUW』を立ち上げ、収益の一部は動物保護施設などへ寄付。2025年より『パウリブプラス』を設立し、“犬と人が共生するまち”の実現を目指して活動中。
@lauweroom_gram @lauw_tokyo @pawliveplus
河合慎一郎
1972年生まれ、奈良県出身の一級建築士。『旭化成ホームズ』LONG LIFE総合研究所 所長。『旭化成ホームズ』に入社以来、戸建住宅・集合住宅を中心に約450棟の建築設計を手掛けてきた。現在は、生活者のくらしを調査・研究し、新しい価値と生活スタイルを提案している。また、ペットとの共生をテーマに、様々な社会背景を考慮し、LONGLIFEに関する考え方や暮らし方を広める活動にも取り組んでいる。
■“犬と人が、自然に共に暮らせる社会”を作るために“住宅”を起点に、犬との暮らし方を考えよう

小野 私は犬と暮らしてみて、色々な問題があるということを知り、“犬と人が、自然に共に暮らせる社会”を作りたいと思って活動しています。旭化成ホームズさんも、“住宅”を起点に、犬との暮らし方を研究してこられましたよね?
河合 『HEBEL HAUS』は住宅メーカーですが「LONG LIFE総合研究所」では、実は約30年前から犬や猫たちとの〝暮らし方の研究〟を続けてきています。家を作るだけでなく、“人と動物の良い関係”を作ることを目指して、始まりました。
小野 犬のためを考える過程で、新たなものが生まれたのですか?
河合 1998年のペット研究会の設立以来、「犬は家族の一員である」という考えのもと、多くの気づきがありました。我々はペット共生戸建や賃貸住宅など住環境の整備をはじめ、ペットと人が共に豊かに過ごせる暮らしを考えてきました。2000年には“ペットと共に生きる住まい”をテーマにペット共生戸建住宅を始めて、2006年以降はペット共生型賃貸住宅ヘーベルメゾンを提供しています。
小野 そこでは、どんな取り組みをしているのでしょうか?
河合 ニーズはあったものの、心配するオーナーさんも多かった。そこで“ペットとの共生”について、しっかりと説明を始めました。同じ建物の中で、犬と暮らしている人も暮らしていない人も、いかにストレスなく、仲違いせず“ひとつ屋根の下”で暮らしていけるか……、ということが課題でした。特にペット共生型賃貸住宅「へーベルメゾンPAWTNER」では、飼育情報の提供やしつけ相談などを通じて、入居者の方々の暮らしをサポートしてきました。現在は、培ってきた知恵やアイデアを、地域社会へ広げようとしています。住まいを建てて終わりではなく、その先の社会も考えていきたいと思っています。そのために獣医師も迎えながら、他社に先駆けて始めたペット共生の研究と実践を、今も継続しています。
小野 「犬と住む」ということまでケアして、プロデュースしているんですね!
河合 住宅メーカーだからこそ、住人が「どんな暮らしを実現することができるか」を考えています。みんなが気持ちよく住むためには、どうすれば良いかを考えると同時に、家という単位から街にも課題を広げて活動しています。
小野 実際に何かやろうと思い、実行に移せるというのは素晴らしいです!
■ペットと人が安心して暮らせる社会の実現に向けて、今私たちにできること

河合 数年前に、神奈川県茅ケ崎市と始めた取り組みもそのひとつです。社会課題となっている“ペット×防災”をテーマに、イベントを開催し、ペットと人が安心して暮らせる社会の実現に向けて、自治体と連携し、ペット防災の啓発活動を行っています。
小野 私もペット防災をテーマに活動しているのですが、普段の生活こそが防災に役立つ、と話しています。“暮らしている人”と“暮らしていない人”の垣根を取り払い、コミュニティを形成することで、ペットと人が安心して暮らせる社会を作ることができると思います。
河合 そうですね。私たちは、ペットと暮らしている方だけでなく、暮らしていない方も含め、人と動物が共生できる社会のあり方を研究して形成するために、麻布大学と連携して、寄附講座「ペットと人の共生社会 for LONG LIFE」を進めています。昨年はさまざまな立場の方を招いて座談会を開催しました。その中で、共生社会の可能性だけでなく、課題や配慮すべき点も見えてきました。今年の冬には、そこで得た知見を街の中で実践してみたいと考えています。
小野 素晴らしいですね! 私は、“犬がいてもいい場所”を作りたいと思っていて、砧でイベントを開きました。少子高齢化の今、隣の人と話す機会がなくても、犬がみんなの介在になり、関係を構築できれば、街単位で社会を変えることができるのではないかと。
河合 私たちが昨年実施した調査では、犬・猫と暮らしている方が約2割、犬・猫に関心を持つ方が約3割という結果でした。それが世の中の半分だと考えると、確かに興味がある方は多いと思います。犬と触れ合うだけでも、元気がもらえそうです。
小野 世田谷区で犬と清掃活動も始める予定です。犬の社会性を育むことができる「パックウォーク」というお散歩をしながら、ゴミ拾いすることができれば、地域のためになるんじゃないかと思って。みんなで何かに取り組むって良いことですし。
河合 年齢的に犬を飼うことを躊躇されている生活者もいらっしゃるので、このような活動を通して社会とのかかわりが増えて、心身の健康につながりそうですね。清掃活動に参加することができれば、社会貢献を通して、心身の健康にもつながりそうです。素晴らしい活動なので、ぜひ応援していきたいです。
小野 通じるものがありますよね! 高齢者や子どもが歩きやすい街って、“犬も歩きやすい街”ですよね。犬を中心におきながら、清掃活動や健康づくりなど、地域のためになるようなことしていきたいですね。
河合 私たちはペット研究のみならず、シニアライフ研究もやっているので、かけ合わせて色々な方々の価値づくりをどんどんやっていきたいですね。

小野 先日、子どものための犬のイベントも開きました。犬の譲渡会に加えて、お散歩も体験してもらったのですが、それがすごく人気で。「犬とミュージカル」というプログラムをやったり、犬とサッカーもできるイベントにしました。「犬と共に何かをすることが楽しい」と、気づいてもらえたと思います。
河合 そういう取り組みは、大事ですよね。小さい頃に犬に触れた体験は、大人になって価値が出てくるし、未来をつくる子どもたちが知ることで、世の中が良くなっていきますよね。犬って、一緒に暮らしていると喜びもあるし、時にしんどいこともある。それも含めて共に暮らす人生だよね、と知ることで、子どもにとって、良い体験になると思います。
小野 私は、小学校の道徳の時間に、ロームを介在犬として、「命の授業」に参加しています。犬を好きじゃなかった子も、それが思い込みだったと分かった途端、犬への想いを自分の力に変えられる。子どもの頃の体験は、人生を変えることができるとても大切な時間。だから、意味があると思っています。
河合 僕も、「環境教育」という授業で、全国の小学校を回っています。おっしゃるとおり、子どもの頃の体験は本当に大切ですよね。
小野 はい! 動物と触れる機会を作るだけでも良いと思っています。「犬は何を考えているか?」に想いを馳せるだけで、“人”のことを考え、さらに“人の命”を考えるきっかけにもなります。『パウリブキッズ』という、キッズボランティアにも力を入れているのですが、「どうやって保護犬のこと知ってもらうか」、子どもたち自身が考える場を、創出しています。古タオルを持ち寄り、小さくハサミで切って寄付する「チョキチョキタオルボランティア」もやっています。
河合 そういったボランティア、実はわが社の社員も取り組んでます! 後方支援として、社員ができることを、熱心に取り組んでいます。丁寧に仕立てたタオルとともにメッセージ書いて送ることで、お喜び頂けています。そうしたボランティア活動で、少しずつ未来を変えることができるよう願っています。
小野 みんなでボランティアをできる社会って、ロングライフですね!
河合 私たちは住宅会社ですが、家を建てるだけではなく、その先の暮らしや地域とのつながりまで視野に入れて取り組んでいます。人と動物のより良い関係を研究するところから始まった取り組みも、住まいづくりを経て、防災や健康、コミュニティ形成などへと広がってきました。今後も住まいを起点として、人と動物がともに安心して暮らせる環境づくりに取り組んでいきます。これを機に「共生社会創り」をみんなで一緒にしていきたいですね!
小野 ぜひ、連携しましょう!
■河合さんと対談をして気づけたこと!

『HEBEL HAUS』はただ住むだけでなく、住んだ後も住居者に幸せに豊かにくらしてほしいという願いを込めて、アフターケアまでしている。それって、犬も人もハッピーに暮らせるということ。私も、犬を中心に「世の中をよくしていこう」って思って活動しているので、今後連携して犬と人が共生できるより良い関係を築いていきたいです!
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<写真=加藤史人/構成=小出健太郎/文=片岡静香>
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