電熱ヒーター、レイヤーシステムetc 話題の最新シュラフ5つを試してみた

1日の疲れを残さず、翌日も元気に遊ぶためには良質な寝袋が不可欠です。

寝袋選びの基準が温度表記。ヨーロピアン・ノーム(EN13537、EN ISO23537)で示すメーカーが増えていますが、これは肌着をつけたマネキンを寝袋の中に入れ、マネキンの表面温度から寝袋性能を計算する方法です。ところが体格のいい欧米人向き規格のため、独自の測定温度を表示するメーカーは依然として多く、単純に寝袋の温度表記だけでは比較できないのが悩みどころ。

それに使用温度では測れないゆとりや汎用性も快眠を左右する大切な要素です。

そこでコンフォート温度5℃以下で、冬キャンプをサポートしてくれると評判の最新寝袋5モデルの寝心地と魅力を探ってみました。

 

1. 2つの寝袋でオールシーズン対応

スナグパック「ベースキャンプ スリープシステム」(1万5180円)

重量:3.2kg(外側1.4kg、内側1.75kg)
収納サイズ:φ30×50cm
快適使用温度:−12℃(外側3℃、内側−2℃)
中綿:シリコーン加工ポリエステル中空繊維(アイソファイバー)

各国の軍が制式採用するタフなものづくりが自慢のSnugpak(スナグパック)。イギリス生まれのブランドですが、「ベースキャンプ スリープシステム」は日本のキャンパーのために作られたスペシャルモデルで、デザートタンカラーの「ノーチラス スクエア ライトジップ」とオリーブカラーのフードなし「マリナー封筒型」のセット。単体モデルの「ノーチラス スクエア ライトジップ」が6820円、フード付きの「マリナー スクエア」が8690円で、そもそも単体モデルにはない特別カラーでまとめて収納できる袋付き。バラバラで購入するよりも断然オトクなプライスです。

イギリスの製品によく見られる、巾着に十字のコンプレッションベルトが付いている収納袋に入っています。コンプレッションベルトをバランス良く縮めるにはセンスが必要で、気にし始めると“イーッ”てなりますが、見た目を気にしなくていいなら素早く小さくできます。

ボディは封筒型なので脚も肩もゆったり。2枚重ねなので封筒型1枚に比べると窮屈になりますが、それでも関節の曲げ伸ばしは楽です。肩口とフードはドローコード付きなので、寒い時期はギュッと絞ることで冷気の侵入を防ぎます。

内側の「マリナー封筒型」は重ねたときにもたつかないよう、単体モデルよりも幅が3cmほど狭くなっています。それでも幅は77cmもあります。一般的なキャンプ用シングルマットが幅60〜70cmですから、そのゆったり具合がわかります。

▲外側になる「ノーチラス スクエア ライトジップ」

▲内側になる「マリナー封筒型」を全開にした状態(下は「ノーチラス スクエア ライトジップ」)

それぞれ封筒型寝袋として単体で使えます。春・秋は外側の「ノーチラス スクエア ライトジップ」、夏は「ノーチラス スクエア ライトジップ」を全開で。晩秋は「マリナー封筒型」、冬キャンプではふたつを組み合わせるという具合にこのセットだけで1年中使えるというわけです。春や秋は余った「マリナー封筒型」を広げて背中側の冷え対策にするなんてこともできます。

すべりのいい生地ですが、ファスナーで連結するので潜り込むときに内側の寝袋がずれることはありません。重ねると肩口の中綿が増えるのもいいですね。

コスパ良好で、キャンプや車中泊をはじめたいけど予算が限られている人も安心です。

>> スナグパック

 

2. 3か所の熱源で入ったときからポカポカ

ニュートラルアウトドア「ヒートシュラフ」(9900円)

重量:2kg
収納サイズ:φ25×40cm
快適使用温度:5℃(限界温度:-10℃、ヒートモードなし快適使用温度15℃・限界温度0℃)
中綿:ポリエステル

昨夏のファン付きウエアに続き、この冬はモバイルバッテリーを使うベストやインソールが人気ですが、ニュートラルアウトドアより待望の電気ヒーター機能付き寝袋が登場しました。

快適使用温度15℃の夏用マミー型寝袋ですが、首、腰、足元という冷えを感じやすい部分にパネルヒーターを内蔵していて、これひとつで外気温5℃くらいまで心地よく眠れるというもの。気温にあわせて寝袋を変えたり、中に詰め物をしたりといったひと手間が不要です。

巾着タイプの収納袋は、十字形のコンプレッションベルト付き。ギュッと絞ればもっと短くなります。

スイッチを入れて5分ほどすると、パネルヒーターを搭載した位置がじんわり温かくなります。寝袋は足先がなかなかあたたまらず、冬はそれがとてもつらいんですがヒーターのおかげでポカポカ。

ヒーターを使ったときの快適使用温度は5℃で限界温度は-10℃。氷点下だとさすがにこれひとつで眠るのは厳しく、薄手の寝袋を組み合わせる必要がありそう。とはいえ、ヒーターを先につけて寝袋を温めておけば、寝袋に入った瞬間のヒヤッとした感触が軽減されるのはうれしいですね。

手持ちのモバイルバッテリーを寝袋側のコードにつなげて、電源ボタンを長押しします。バッテリーを収めるポケットもあります。

赤い点滅が青い点灯(低温モード)になったら準備完了。

バッテリー容量や使用環境によりますが、10000mAhのバッテリーの場合、低温モード(青色点灯)で40〜45℃/7時間、中温モード(緑で点灯)45〜50℃/5時間、高温モード(赤い点灯)50〜55℃/3時間が目安。10000mAhのバッテリーを使えば低温モードで一晩中使えそうですが、冷え込み具合によっては一番寒い明け方に電気が切れるかも。10000mAhより容量の大きいバッテリーを用意し、念のため薄手のブランケットを近くに置くと安心です。

なお、「ヒートシュラフ」を水に漬けて丸洗いできないので、汚れ防止と低温やけど防止のためにも肌着は不可欠。

さらに足と腕を外に出して自由に歩けるお出かけ機能も搭載。足元を持ち上げて面テープで引っ掛けられるので土汚れがつきにくくなっています。

冬は眠くても寝袋に入った瞬間のヒヤッとした感触で頭が冴え、体も緊張してしまいますが、温まった寝袋に入ればすぐに眠りにつけます。これが「ヒートシュラフ」のメリット。

しかも、電気毛布とは違って「ヒートシュラフ」は体をすっぽり包んだまま自由に歩けますよ。

>> ニュートラルアウトドア

 

3. 水濡れも寝癖も対策万全

ニーモ「ディスコ15」(4万150円)

重量:1.2kg
収納サイズ:φ23×30cm
リミット温度:-10℃
中綿:650FP撥水加工済みダウン

軽さやコンパクト収納を考慮したマミー型寝袋は、冷たい空気が入りにくいけれどなんだか窮屈な印象があります。それって、普段は横向きで眠っているのに寝袋内では膝や肘を曲げるスペースがなく、いつもと違う姿勢を強いられているためでは?

そう考えたニーモが生み出したのが、肘と膝あたりにゆとりをもたせた“スプーンシェイプ”。現在はスタンダードなクラシックスプーン、より軽さ・コンパクトさを求めたウルトラライトスプーン、ゆったりシルエットのリラックスドスプーンという3つのパターンがあり、寝袋の使用目的・シーンにあわせたパターンが選ばれています。

「ディスコ15」は軽さとゆとりのバランスがいいクラシックスプーン。15は華氏を意味していて摂氏に換算すると約-10℃。雪中から晩秋、春先のキャンプに対応します。

中綿は650FPダウンで、バックパックに押し込むときはギュッと小さくまとめられます。ダウンの大敵である湿気、濡れですが、生地にDWR(耐久撥水)加工、ダウンそのものにも撥水加工を施しているので防水バッグに入れずに持ち歩けるのがうれしいですね。

クルマ移動のキャンプならそれほどコンプレッションベルトを縮めなくてもよく、それでもφ23×30cm。片手で軽々持てる大きさです。

▲真上を向いた状態

▲横向きに寝た状態

スプーンシルエットのおかげで、真上にむいたときは肘を胸で組むほか、左右に開いてリラックス。また、横向きに寝ると自然に膝と肘を曲げて体を安定させますが、体が寝袋にひっかかりにくく、自然に姿勢を変えられます。

胸元にある短いファスナーは、温度の微調整を行うもの。暑く感じてメインファスナーを開けると一時的に急激に冷えますが、この短いファスナー(アジャスタブルサーモギル)を使えばゆるやかに熱気を放出するというもの。

寒いときは首元のブランケットフォールド(写真のオレンジの部分)を内側に入れて冷たい空気を遮断。ドローコードで絞るわけではないので窮屈な感じがありません。

寝袋は縫い目が横方向に伸びているものが多いんですが、「ディスコ15」は縦方向。縦方向に隔壁があり、冷えやすい足元に熱を送りやすくしています。寝返りをうってもダウンが偏りにくいという特徴も見逃せません。

またフードにポケットがあり、着替えや手持ちの枕を詰めてもよし。ちなみにニーモには枕もありますよ。

雪中キャンプでも濡れや湿気対策の手間をかけずにすむし、ゆったり過ごせるので横向きに眠る人はスプーンシェイプを試す価値ありますよ。

>> ニーモ・イクイップメント

 

4. 世界初の蜘蛛の巣構造で1kg以下

モンベル「シームレス ダウンハガー900#1」(7万1500円)

重量:782g
収納サイズ:φ16×32cm
コンフォート温度(EN):-2℃(リミット温度:-8℃)
中綿:900FP・EXダウン

ダウンはほんの少しの空気の動きでもふんわり浮かび、移動します。寝袋の背中みたいに圧力をかけると、とたんにふわっと逃げる。これが寒さのひとつの原因です。

そこで、長年多くのメーカーが採用してきたのがバッフル構造。ダウンを封じ込める部屋をいくつも作って、移動を抑えるんですね。

ただし、技術向上とともにダウンを閉じ込める素材が薄く軽くはなっていますが、この壁の分だけ重くなるし、縫い目があるとそこから冷たい空気が入りやすくなります。ワンルームでもダウンが片寄らない寝袋がほしい、そう考えたモンベルの答えが“スパイダーバッフルシステム”を搭載した「シームレス ダウンハガー」シリーズです。

寝袋の内側に特殊な糸を張りめぐらすことで、蜘蛛の巣のようにダウンが絡みつくという仕組みで、壁がないので軽く、表生地には縫い目もありません。もちろんこの構造は世界初!

収納サイズは、今回試した「シームレス ダウンハガー900#1」でφ16×32cm・5.7L、782g。同程度の対応温度域の定番モデル「ダウンハガー800#1」はφ17×34cm・6.8L、918gですから、重量も大きさも約15%抑えたことになります。クルマ移動ではさほど気にならない差かもしれませんが、荷物がかさばる冬山では大きなアドバンテージです。

伝統のマミー型。#1は首周りにチューブ状のふかふか襟巻きが備わっていて、冷気が侵入しづらくなっています。

表生地は、シームレスの名の通り、ほとんど縫い目がありません。

一見窮屈そうですが、マミー型特有の圧迫感はなく、体にフィットしつつも膝や肘の動きを妨げません。これはモンベル独自の“スーパースパイラルストレッチシステム”のおかげ。

生地は斜め方向に引っ張ると伸びやすいという性質があり、さらに糸ゴムと組み合わせたのが“スーパースパイラルストレッチシステム”。体の動きに合わせて35%も伸びるという構造です。

「シームレス ダウンハガー」では表生地には縫い目がほとんどありませんが、裏生地に糸ゴムを採用することでスムーズに寝返りをうてるようになっています。

開閉時に噛み込みしづらいファスナーで、寝袋に潜り込むときのストレスを軽減。寝袋の中で動いても勝手に開くことのないという特徴も備えています。

この日は氷点下にならず縫い目がないことが保温力に影響があるかどうかわかりませんでしたが、寝袋を持って左右に振っても、ゴロゴロ寝返りをうってもダウンの片寄りは見られませんでした。それよりも壁がないことで、なんだか従来のバッフル構造の寝袋よりもふんわり。

最先端の技術が詰まった寝袋です。

>> モンベル

 

5. 焚き火のそばでも使える極上布団

ナンガ「カケフトン」(8万8000円)

重量:1.78kg
収納サイズ:60×30×H49cm
コンフォート温度(EN):不明(リミット温度:不明)
中綿:760FPスパニッシュダックダウン

ダブルサイズの封筒型寝袋は、親子で布団感覚で潜り込めるためファミリーに根強い人気を誇ります。

ナンガにも「ラバイマ バッグW600」というモデルがありますが、さらに汎用性を高めたのがこの「カケフトン」。160×215cmという掛け布団サイズのダウンブランケットです。

薄手の合掛けと少し厚めの肌掛けのセットで、合掛けは600g、肌掛けは200gのダウンを封入。使用温度は公表されていませんが、「ラバイマ バッグW600」は650FPダウンを600g封入しているのでその温かさがわかるでしょう。

いわゆる家庭用の布団袋とほぼ同じですが、普通の掛け布団のつもりで手にするとその軽さに拍子抜けします。ダウンなので防水性のある手持ちの圧縮袋に入れて小さく持ち運んでもいいかも。

合掛けと肌掛けはそれぞれ単体でも、組み合わせて掛け布団としても使えるし、サイドをボタンで留めればシングルサイズの封筒型ダウン寝袋、そして2枚を組み合わせてダブルサイズのダウン寝袋など、シーンによって使い方を変えられる汎用性の高いモデルになっています。

2枚の間に入るだけで、あたたかい空気にくるまれているような感覚。ファスナーはないので「カケフトン」にくるまるだけでよく、車中での仮眠やハンモック泊で重宝しそう。もちろん、ほかの寝袋と組み合わせて保温性を高めるなんてこともできますよ。

合掛けの表地はポリエステルとアラミド繊維の混合で、焚き火のそばで使ってもポツポツ穴があきにくいという特徴があります。焚き火に強いダウンブランケットというだけでも手に入れたくなりますね。

合掛けの裏生地と肌掛けは、薄さと強さを両立する15dnリップストップナイロンを採用。どちらもボックスキルト構造を採用しており、ダウンの保温性を損なわないようにしています。

正直、ダウンブランケットと考えれば値が張ります。けれど自宅では掛け布団になり、焚き火のそばでも使えるとなれば話は別。1年中使えてナンガの保証を受けられるのであれば決して高すぎるということはありません。

>> ナンガ

 

<取材・文/大森弘恵 写真/田口陽介>

大森弘恵|フリーランスのライター、編集者。記事のテーマはアウトドア、旅行、ときどき料理。Twitter

 

 

 

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