米国が、地球規模の気候変動による非常に現実的な影響を無視することは、ますます難しくなっている。そして否定論者の努力にもかかわらず、米国を席巻する停電は再生可能エネルギーが普及しているせいではない。それは米国のエネルギーインフラが原因だ。
地球温暖化が引き起こす厳しい気象条件は、現在、米国の最大の都市のいくつかで大規模な停電の原因となっている。米国の電力網(パワーグリッド)が異常気象によるストレスに耐えられないという事実が、エネルギーインフラをより回復力のあるものにするため大規模に更新する投資計画が必要であることを示している。
こうした問題は現在、テキサス州の2900万人の住民にとって痛々しいほど明白だ。彼らは現在、米国中を襲う極寒の気象が引き起こした計画停電に直面している。
テキサス州の電気信頼性評議会(ERCOT)は声明で、「緊急事態に入り、今日の午前1時25分に計画停電を開始した」と述べた。テキサス州のグリッドは10.5ギガワットの負荷を削減した。これは、ピーク時に200万世帯へ電力を供給するのに十分な量だ。
同評議会は声明で「異常気象により、燃料の種類を問わず多くの発電ユニットがオフラインになり利用不能になった」と述べた。
プリンストン大学のJesse Jenkins(ジェシー・ジェンキンス)教授によると、問題の一部はテキサス州のグリッドに電力の多くを供給する天然ガス発電機にある。同氏はプリンストン大学機械航空宇宙工学科とアンドリンガーエネルギー環境センターのジョイント・アポイントメント教員だ。
ジェンキンス氏はツイッターで市場参加者からの情報を引用し、天然ガスが電力ではなく熱を供給するために転用されているため、約26ギガワットの火力発電がオフラインになっていると述べた。同氏によると、氷結のためにオフラインになっている風力発電は約4ギガワットのみだ。
Confidential info from a market participant in ERCOT: As of ~10 AM Eastern time, the system has ~30 GW of capacity offline, ~26 GW of thermal — mostly natural gas which cant get fuel deliveries which are being priorities for heating loads — and ~4 GW of wind due to icing. https://t.co/Bfpn0WeRIq
— JesseJenkins (@JesseJenkins) February 15, 2021
現在の停電は再生可能エネルギーとは何の関係もない。すべては凍結と暖房需要の急増により、寒冷な気候が天然ガス発電を遅らせたことに関係している。
ジョージア工科大学の土木環境工学の助教授であり、公共政策の助教授であるEmily Grubert(エミリー・グルーバート)博士が指摘したように、問題は再生可能電力に関連する問題というよりも、システム全体の問題だ。
「はっきりさせておきたい。今日グリッドに障害が発生するなら、それは既存の(主に化石ベースの)システムもこうした状況に対応できないことを示しています」とグルーバート氏はツイッターで述べている。「これらは恐ろしい気候変動の影響により生まれた状況であり、グリッドに非常に困難な課題をもたらします。既存のシステムでは簡単に処理できない状況が続く可能性があります。どの電力システムでも、適応するために大規模な改善を行う必要があります」。
再生可能エネルギーとエネルギーストレージが問題の解決策を提供し、より弾力性のあるグリッドに貢献する可能性がある。住宅用エネルギー開発業者のSwell Energyは2020年末に4億5000万ドル(約470億円)の資金を調達し、3つの州にまたがるいくつかのプロジェクトの開発を開始した。これらのプロジェクトでは、電力需要の増加の時代にあって、分散型の住宅用太陽光発電とバッテリーストレージを組み合わせる。
関連記事:住宅用再生エネルギー推進のSwell Energyが分散型電力プロジェクト建設に向け470億円調達
Swell EnergyのCEOであるSuleman Khan(スールマン・カーン)氏は発表時、「電力会社は分散型エネルギー資源が貴重な『グリッドエッジ』資産だとしてますます注目しています」と述べた。「個々の家庭や企業を仮想発電所としてネットワーク化することで、Swellは顧客の所有コストを削減し、電力会社が電力網全体の需要を管理できるよう支援します」。
Evolve EnergyやGriddyといった他の企業は、電力を卸売りの料率で請求することで消費者のコスト管理を支援しようとしている。こうした企業は、卸電力の料金が低い場合にのみ経済的になる。Bloomberg EnergyのレポーターであるJavier Bias(ハビエル・バイアス)氏によると、現在電力需要が急増しているため、ERCOTのエネルギー価格はメガワットあたり5000ドル(約52万5000円)を超え、多くのノードで9000ドル(約94万5000円)の上限に達した。
今日のテキサス州と2021年1月のカリフォルニア州での停電は、米国の現在のグリッドを根本的に改善する必要があることを示している。カリフォルニア州のような厳しく規制された市場であろうとテキサス州のような自由市場であろうと、現在の政策では天候が大混乱を引き起こし人々の命を危険にさらすことを阻止できない。
カテゴリー:EnviroTech
タグ:再生可能エネルギー、コラム
画像クレジット:Orjan F. Ellingvag/Corbis via Getty Images) / Getty Images
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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/02/17/2021-02-15-severe-weather-blackouts-shows-the-grids-biggest-problem-is-infrastructure-not-renewables/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Jonathan Shieber,Nariko Mizoguchi
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