総務省の「競争ルールの検証に関するWG」は7月9日に開催した会合で、これまでの議論をまとめた「競争ルールの検証に関する報告書2021(案)」を公表しました。改正電気通信事業法で引き下げられた「2年縛り」違約金が適用されない契約が半数に及ぶ問題など、幅広い問題がまとめられています。
改正電気通信事業法の効果や影響を検証
総務省の「競争ルールの検証に関するWG」は、2019年度に施行された電気通信事業法の改正による効果や影響の検証を目的として、2020年度から活動しています。
2020年10月の「競争ルールの検証に関する報告書2020」(以下、報告書2020)公表後のモバイル市場の変化を踏まえた検討結果をまとめた「競争ルールの検証に関する報告書2021(案)」(以下、報告書案)が、このほど公開されました。
会合では、新料金プランによる国民の負担軽減効果を年間約4,300億円と試算した、総務大臣と消費者庁の二大臣会合についても報告されています。
2020年秋以降、公取委、消費者庁と連携強化
報告書2020公表以降の、総務省等における取り組みとしては、以下の2項目が挙げられてます。
- 「アクション・プラン」:報告書2020と同日に発表。「分かりやすく、納得感のあるサービス」「事業者間の公正な競争」「乗り換えの円滑化」の3項目を軸とした取り組み。
- 公正取引委員会、消費者庁との連携:端末分割購入時の「頭金」への注意喚起、適切な料金プラン選択のための注意喚起、覆面調査を実施し回線を契約しないと端末を販売しない事例の確認など。
旧モデル端末、不適切な値引きは確認されず
改正電気通信事業法により、端末代金の値引き上限額が2万円となりました。一部の販売代理店などで不適切な値引きが確認され、総務省から行政指導が行われています。
ただし、不良在庫扱いとなる最終調達から1年以上(半額まで値引き可能)、2年以上(8割以上の値引きが可能)には、特例が適用されています。
半額まで値引き可能とされたiPhoneは、NTTドコモが6機種、KDDIが11機種、ソフトバンクが12機種でした。
8割まで値引き可能とされたiPhoneは、NTTドコモが8機種、KDDIが13機種、ソフトバンクが9機種でした。
報告書案では、不良在庫端末に対する値引額について「明らかに不適切な端末代金の値引きなどが行われている兆候は確認されない」としています。
なおAppleは、同WGにこれまで2回出席し、端末代金の値引き上限を一律に定めることは5Gの普及促進を阻害するほか、端末の最終調達日を基準にした特例の決定基準は同じモデルを長期間製造・販売を続ける同社に不利である、と反対意見を表明したほか、5G端末の割引上限を撤廃するべきと主張していました。
「2年縛り」違約金、引き下げ前の契約が約半数
「2年縛り」などと呼ばれる、契約期間途中で解約した場合の違約金は、従来の9,500円から、改正電気通信事業法で1,000円に引き下げられました。しかし、改正法の適用前に結ばれた契約では、違約金は9,500円のままです。
報告書案では、アンケート調査では違約金が1,000円に引き下げられたことを知らないユーザーが過半数であることが判明したこと、3大キャリア契約数の約半数が法改正前に結ばれており、依然としてユーザーの乗り換えコストが高いことが問題点として指摘されています。
今後、各通信事業者に対して、改正法の適用対象となる契約への移行を促すことを求める方針が報告書案に記されています。
端末購入プログラム、今後は楽天も注視
以前、回線契約と一体で提供されていた端末購入プログラムについて、改正法により回線契約を結ばなくても利用できるようになりました。
しかし各事業者から消費者への案内が不足しているほか、覆面調査を実施した結果、非回線契約者への端末販売を拒否する事例がNTTドコモ22.2%、KDDI29.9%、ソフトバンク9.3%で確認されています。
報告書案では、楽天モバイルが6月29日に開始した端末購入サポートプログラムについても、問題ないか注視する方針が示されています。
3キャリアのオンラインプラン、ほぼ全て同事業者間の乗り換え
報告書案では、2021年春に各社が提供を開始した新料金プランの効果についても検証しています。
3大キャリアによるオンライン専用プラン(ahamo、LINEMO、povo)は、ほぼ全てが同じ事業者からの乗り換えであり、事業者間の乗り換え促進にはつながっていないことが示されました。
以前から低料金を売りにしているMVNOにとっては、自社に流入するはずの利用者が、3大キャリアの新料金プランに流れており、利用者獲得には厳しい状況にある、と報告書案は指摘しています。
2020年度のスマホ平均単価は6万円、2019年度から17.8%低下
2020年度の端末の売上台数は3,676万台で、2019年度の3,357万台から9.5%増加しています。2020年度の売上高は1兆9,939億円で、2019年度の2兆1672億円から8.0%減少しています。
スマートフォンの1台あたり平均売上単価は、2020年度は60,003円で、2019年度の73,034円から17.8%低下しています。
2020年10月から2021年3月にかけての、MNO4社におけるスマートフォンの価格帯別売上台数の構成比は、10万円を超える高価格帯は21.1%、4万円〜10万円の中価格帯が44.3%、4万円以下の低価格帯が34.5%でした。
報告書案では、改正法の施行後は回線契約と端末販売を結びつけた割引の提供が少なくなったことで、平均売上単価が減少したと見られ、回線と端末の完全分離を目指した改正法の効果が一定程度現れつつある、と指摘しています。
オンライン解約の制限、是正求める
スイッチングコストの問題については、大手キャリアがオンラインで解約手続きが完結できないことを問題視し、是正を求めています。
また、電気、ガス、保険、コンテンツとのセット販売による割引の提供については、囲い込みによりスイッチングコストが高まって(=利用者の乗り換えを阻害)いないか、引き続き注視する姿勢です。
「no index」問題は利用者の利益を阻害、禁止の徹底を
1月に、NTTドコモとKDDIのWebサイトで解約方法を説明するページが検索結果に表示されないよう、no indexタグが埋め込まれていた問題について「利用者の利益や公正な競争を阻害するおそれがある」「禁止の徹底を図っていくことが求められる」と指摘しています。
なお、報告書案では触れられていませんが、KDDIのWebサイトでは最近も、SIMロック解除の方法を案内するページにno indexタグが埋め込まれていたことが明らかになっており、KDDIは「人為的なミスで、意図的なものではなかった」と釈明しています。
MNOに高い公共性求める
報告書案ではこのほか、5Gの普及状況を注視していく必要性、中古端末の流通促進、音声通話料金の引き下げ、キャリアと代理店の関係など、幅広いテーマを取りまとめています。
報告書案は、今後も国民共有の財産であり有限希少な電波(周波数)の割り当てを受けて事業を行うMNOには高い公共性が求められることを踏まえ、国民の利便と公共の福祉に貢献する姿勢を求めています。そして、今後もモバイル市場の状況を確認・検証し、更なる提言を続ける、と締めくくっています。
Source:総務省
(hato)
- Original:https://iphone-mania.jp/news-381717/
- Source:iPhone Mania
- Author:iPhone Mania
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