装備や特別仕様車だけじゃない!最新型「マツダ2」の見どころはエンジンの進化にあり

「マツダ2」が商品改良でまたまた進化した。最新型のポイントは、おしゃれな特別仕様車や新しいボディカラーの追加、装備のアップグレード…と思いきや、そうではなかった。

実は新しいマツダ2は、ボンネットフードの下に潜むエンジンが確実に進化を遂げていたのだ!

■「サンリット・シトラス」の追加は決して目玉じゃない!

先頃マツダは、マツダ2の商品改良を実施。併せて特別仕様車「サンリット・シトラス(Sunlit Citrus)」を追加した。

サンリット・シトラス=太陽に照らされたシトラスのイメージは、主にインテリアに投影されている。シートやダッシュボード、ドアトリムのカラーは、グレーとベージュを合わせた色=グレージュに。しかも、スエード調の人工皮革“グランリュクス”を各部に使うことで、柔らかな触感と風合いを醸し出している。

さらに、シートのセンター部やエアコンのルーバーなどにはシトラスの挿し色が入っており、これが絶妙なアクセントとして機能している。室内はサンルームのように明るく、乗り込んだ瞬間に気持ちが軽くなるようだ。

加えてサンリット・シトラスには、特別付属品としてグレージュ色とシトラス色の専用キーシェルと、グレージュ色のフロアマットが付く。

キーは2019年の「マツダ3」から採用が始まった最新タイプで、サンリット・シトラス以外のマツダ2は従来タイプのままだから、これだけでも特別感がある。マツダ3や「CX-30」では最新タイプのキーが標準となるが、ボディカラーと同じ塗装を施した「セレクティブ・キーシェル」はディーラーオプションで1万6200円〜1万9440円もする。最初からそれがふたつも付いているサンリット・シトラスは、それだけでもかなりお買い得に思えてくる。

さらにサンリット・シトラスには、狭い駐車場や路地などで周囲の状況確認に役立つ“360°モニター”も標準で備わっている。

今回の試乗車は、新色であるプラチナクォーツメタリック(「15C」、「XD」、「15MB」以外のグレードで選択可能)をまとったサンリット・シトラスだった。スポーティなイメージを求めるならポリメタルグレーメタリックのような濃色系が似合うだろうが、カジュアルに、そしてフォーマルに使いこなすなら、金属質な光の反射が上質なムードを放つ淡色系のメタリックがいい…。そんな印象を、プラチナクォーツメタリックのマツダ2を見ながら抱いた。

また今回の商品改良では、サンリット・シトラスを含む一部グレードのAT車で、スマートフォンをコンソールに置くだけで充電できるワイヤレス充電機能がメーカーオプションで選択できるようになった(「Apple CarPlay」とのワイヤレス接続も対応で1万7600円)。マツダ3やCX-30ではディーラーオプション(2万9040円)で選択できるが、設置場所はコンソールボックスの中なので使い勝手がいいとはいい切れない。その点、コンソールにスマホを置けるマツダ2の方が使い勝手はいいし、価格も良心的だ。

■e-SKYACTIV-Xの燃焼技術を応用した新エンジン

特別仕様車や新しいボディカラーの設定、装備の充実などが目を引く今回の商品改良だが、実は最大の目玉はガソリンエンジンの進化にある。1.5リッター直列4気筒の自然吸気式エンジン“SKYACTIV-G(スカイアクティブ・ジー)1.5”であることに変わりはないが、燃費性能や応答性を高めた高圧縮タイプへと進化している。

これによりマツダ2のガソリンエンジンは、従来型の“SKYACTIV-G 1.5”と、新しい高圧縮版との二本立てとなった。ちなみにサンリット・シトラスのガソリン仕様(ディーゼル版も選択できる)は高圧縮タイプを搭載する。

高圧縮版のSKYACTIV-G 1.5には、マツダ3やCX-30に設定される新世代ガソリンエンジン“e-SKYACTIV-X(イー・スカイアクティブ・エックス)”の開発を通じて培った燃焼技術が応用されている。

それは“ダイアゴナル・ボルテックス・コンバスチョン(Diagonal Vortex Combustion)”と呼ばれる独自技術で、直訳すれば“斜め渦燃焼”となる。吸気ポートから燃焼室に入る流れを上手に制御することでインジェクターを中心にした渦を作り、その渦の中心を目がけて燃料を噴射する(インジェクターが燃焼室に対して斜めに刺さっているので斜めに渦を形成)。

すると、燃料と空気がよく混ざった上で最後に大きく乱れるため、点火プラグで点火した後に意図しない場所で着火してしまう“ノッキング”を回避できるようになり、点火プラグによる着火後の燃焼速度が速くなって燃焼エネルギーが効率良く仕事へと置き換わる。その結果、従来型のSKYACTIV-G 1.5では12だった圧縮比が、高圧縮版では14へと向上。圧縮比の向上はそのまま燃費の向上へとつながる。グレードによって差はあるものの、マツダによると最大6.8%の燃費向上につながったという。

■燃費向上に寄与する“クールドEGR”を導入

今回の記事化に当たって、筆者は従来型SKYACTIV-G 1.5を搭載する個体と、高圧縮版を積む最新モデルの乗り比べも行った。2台のタイヤサイズは同じで、トランスミッションもともに6MTだ。

カタログに記載されるWLTCモード燃費は、従来型が19.8km/L、高圧縮版が20.2km/Lとなっていて、燃費の“向上しろ”は約2%である。市街地モードに限定すると“向上しろ”はより大きくなり、従来型の15.8km/Lに対して高圧縮版は16.7 km/Lと、約5.7%アップしている。

市街地(約8.5km)と都市高速(約14.7km)を織り交ぜた同じコースで乗り比べてみたところ、従来型SKYACTIV-G 1.5は市街地で13.1km/L、市街地+高速のトータルで17.3km/Lだった。これに対して高圧縮比版は、市街地で13.5km/L、市街地+高速で18.2km/Lをマークした。道路の混雑状況が異なるため完全に同条件での比較とはいえないが、高圧縮比の新エンジンの方が燃費は良さそうだと確認できた。

マツダは今回の商品改良におけるプレスリリースで、斜め渦燃焼にしか触れていないが、実は新エンジンの燃費が良化した理由はほかにあった。

それはボンネットフードを開けてみると分かる。従来モデルには樹脂製のエンジンカバーで覆われていたが、新型のエンジンにはカバーがない。エンジンカバーを廃止したことによる軽量化が燃費向上の理由なのか?

いやいや、正解は従来モデルのエンジンカバーを外したところにあった。新旧のエンジンを見比べてみると、新しいエンジンには、従来型のそれにはない銀色の四角い部品が上面に追加されている。これが燃費向上に大きく寄与するデバイスなのだ。四角い部品の正体は“EGRクーラー”で、高圧縮の新エンジンには“クールドEGR”という技術が盛り込まれているのである。

直訳すれば“排ガス再還流”を意味する“EGR(Exhaust Gas Recirculation)”は、排出ガスの一部を吸気に混ぜて燃焼室に戻す技術。大きな出力を必要としない低回転・低負荷の領域では、通常、スロットルバルブは小さくしか開かない。燃焼に必要な空気がそれほど必要ないからだ。この時、注射器の先のような細い口から空気を吸うことになるため、空気を吸う行為にエンジンの仕事が奪われて効率が落ちる(“ポンピングロス”)。ところがEGRを混ぜると、燃焼室に送り込む空気の量を変えることなく、スロットルを大きく開くことができるようになる。これによりポンピングロスが低減し、燃費が向上するという仕組みだ。

EGRを冷却してから吸気と合流させるクールドEGRは、燃焼温度の低下による冷却損失の低減や、酸素濃度の減少によるノッキング抑制効果も得られる。斜め渦燃焼はe-SKYACTIV-Xの開発を通じて培われた技術だが、実はe-SKYACTIV-XはEGRも積極的に利用して燃焼制御を行っているから、高圧縮版のSKYACTIV-G 1.5の開発においても、そうした技術の移転がなされたに違いない。つまりマツダが持つ最先端の燃焼技術を反映したエンジンが、高圧縮版のSKYACTIV-G 1.5というわけだ。

遮音に効果のあるエンジンカバーがなくなったせいか、直噴エンジンの特徴であるカリカリした燃焼音や、燃料の噴射音が耳につくようになった気もするが、新しいマツダ2はドライバビリティの悪化を感じられず、むしろシャキッとした乗り味が好ましい。

新しいボディカラーや特別仕様車の設定によるイメチェンの効果も大きいが、クルマの心臓部であるエンジンをしっかりアップデートしたことが今回のマツダ2の商品改良における最大の価値。そこには、ユーザーのメリットを第一に考えるマツダの開発姿勢が現れている。

<SPECIFICATIONS>
☆15S サンリット・シトラス(FF)
ボディサイズ:4065×1695×1525mm
車重:1090kg
駆動方式:FWD
エンジン:1496cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:6速AT
最高出力:110馬力/6000回転
最大トルク:14.5kgf-m/3500回転
価格:198万6600円

>>「マツダ2」

文/世良耕太

世良耕太|出版社で編集者・ライターとして活動後、独立。クルマやモータースポーツ、自動車テクノロジーの取材で世界を駆け回る。多くの取材を通して得た、テクノロジーへの高い理解度が売り。クルマ関連の話題にとどまらず、建築やウイスキーなど興味は多岐にわたる。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

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