宇宙スタートアップ企業のPhase Four(フェーズ・フォー)は、次世代の高周波プラズマ推進システム「Maxwell(マックスウェル)」を、2022年の上半期に発売する予定だ。同社によれば、このシステムは軌道上における宇宙船の操縦性をより広範囲に向上させるための重要な性能改善が施されているという。
一般的に、真空の宇宙空間で衛星を動かす場合、推力と「比推力(ISP)」という2つの重要な性能指標が重視される。比推力とは、単位重量の推進剤あたりどれだけの推力を得られるかというシステムの効率を示す指標だ。
これらのトレードオフは、小型宇宙機メーカーにとって特に重要だ。推力が大きいシステムでは、大量の燃料を搭載する必要があり、ミニ冷蔵庫程度の大きさの衛星ではコストがかかり過ぎる。しかし、特に衛星がライドシェアミッションで宇宙に向かい、自力で最終軌道に到達しなければならない場合には、ISPの高い推進技術が理想的というわけでもない。従来の電気式スラスターは、比推力を最大化すると推力が犠牲になることが多く、スラスタの効率は高くても、移動に数カ月かかることさえある。
Phase FourのMaxwellスラスターは、このトレードオフを解消し、顧客が比較的高い推力モードまたは高いISPで運用できるようにしたと、CTOのUmair Siddiqui(ウマイール・スィディキ)氏は説明する。つまり、必要に応じて高速な移動を行うことも、推進剤を節約するために高ISPモードにすることもできるということだ。
同社はこれらの革新技術を最初の製品である「Maxwell Block 1(マックスウェル・ブロックワン)」スラスターに導入した。Maxwellスラスターの新型となる「Maxwell Block 2(マックスウェル・ブロックツー)」は、これらの指標において約85%の性能向上を実現している。「これは重要なことです」と、スィディキ氏はいう。「ISPや推力が85%向上するということは、推進剤の使用量や軌道上での移動時間が大幅に減ることを意味します」。
Phase FourのMaxwellスラスターには、他にもいくつかの革新的な技術が見られる。ホール効果型と呼ばれる従来のプラズマスラスターは、製造が困難な陰極材料を用いて推力を発生させる。また、システムが大きく重くなるため、多くの顧客にとって理想的とはいえなかった。これらの問題を解決するために、Phase Fourのスラスターは、陰極と陽極ではなく、高周波のプラズマ源を使って推力を発生させる。そのため、より小型で製造が容易であり、キセノンやクリプトンなどの高価なホール効果型スラスターの推進剤だけでなく、あらゆる気体の推進剤に対応できる。
Block 2では、Block 1で初めて達成した4カ月以内の生産を維持することを目指している。このような短納期が可能になるのは、製品のモジュラーデザインに一因がある。Maxwellエンジンでは、(少なくとも考え方としては)自動車産業を参考にした「シャシー」という方式を採用している。「同じ生産ラインを使ったままで、次世代の開発に対応できることが、この製品には求められています」と、スィディキ氏は述べている。「これは最初から生産性を考えたプラズマスラスターです」。
2015年に設立されたPhase Fourは、これまでに10台のMaxwell Block 1システムを顧客に納入している。2021年の夏、同社はNew Science Ventures LLC(ニュー・サイエンス・ベンチャーズ)が主導するシリーズBで2600万ドル(約29億円)の資金を調達した。
画像クレジット:Phase Four
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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/12/03/2021-12-01-phase-four-aims-to-roll-out-its-next-gen-plasma-thruster-in-the-first-half-of-2022/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Aria Alamalhodaei,Hirokazu Kusakabe
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