海の狼「Uボート」はジオラマがよく似合う!【達人のプラモ術<Uボート>】

【達人のプラモ術】
レベル
1/144 Uボート
(映画『Das Boot』40周年記念ムービーセット)

02/05

■Uボート タイプVIIとは?

さて今回は、Uボートとはなんぞやというところから始めましょう。(全5回の2回目/1回目

映画『Das boot』で登場するUボート(ドイツ語のUnterseeboot:潜水艦の総称)はVIIC型と呼ばれた潜水艦で、第二次大戦中ドイツ潜水艦の中でも700隻以上生産されて、もっとも活躍しましたが、終戦時にはそのほとんどが失われています。

タイプVIIC型は、排水量769トン、全長66.5m、全幅6.2mと潜水艦としては小型です(当時世界最大と言われた日本海軍の伊400潜水艦は、排水量5307トン、全長122m、全幅12m)。水上ではディーゼルエンジンで最高速度17.6ノット(約33km/h)で航行、水中ではバッテリーで駆動する電動モーターを使い最大速度7.6ノット(約14km/h)を出すことができ、深度220mまで潜航可能でした(深度250mで 船体圧壊)が、深度300m近くまで潜航した艦も存在したそうです。

潜航中、電動モーターで全速を出すと、あっと言う間にバッテリーが空になってしまうため、通常は人の歩く速度程度の速度(2~4ノット)しか出せません。そんなわけで、潜水艦と言うよりも戦闘時のみ水中に潜むことができる可潜艦と言われていたのも納得です。全長66.5mあるといっても艦内は非常に狭く、そこに44名の乗員が乗りこんでいます。

艦内での生活は映画の中でも描かれているように、1ヵ月以上風呂やシャワーもなく、狭いベッドも乗組員分は揃っていないので同じベッドで交代で使う、艦内は湿度が高 いため生鮮食料品やパンはすぐにカビてしまう、服は海水でガビガビ、ダニや皮膚疾患に悩まされる(劇中でもそのシーンがありましたね)と、かなり劣悪な環境でした。しかし潜航中に攻撃受ければ乗組員は一蓮托生ということもあり、他の艦艇より結束は高かったそうです。また狭い艦内で生活しているため、陸に戻っても体を縮めて歩くので、Uボート乗りはすぐに分かったそうです。

過酷な潜水艦という閉鎖空間での人間模様。損傷して限界深度を超えた海底で、残り少ない酸素という極限環境下でのサバイバル…。こうした要素が潜水艦映画の醍醐味であり、それを限りなくリアルに描いた映画ということが、『Das boot』が潜水艦映画の傑作と言われる所以なのだと思います。達人的には、なんだかんだ50回以上観てます(笑)。

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!@Modelart_MOVIE」も配信中。

 

■今回は船体の艤装と塗装を進めます!

さて、そんな過酷なUボートに乗りたいかといえば、いやぁ閉所恐怖症なので無理。ということで、ここはプラモデルで我慢したいと思います。

今回は前回製作した船体と艦橋の艤装と塗装を進めていきましょう。

しかしキットの細い船体を見るたびに、これに40人以上乗り込んでいるんだと感心してしまいます。

▲組み上げた船体は実にスマート。艦橋や甲板と艦橋の大砲は仮組みした状態だ。それぞれ別に塗装していく

▲艦首の潜航舵や艦尾の舵機も組み付けているが、海上ジオラマとすることにしたので、見えなくなるスクリューは取り付けていない

▲艦橋は通信用アンテナや2本の潜望鏡などが装備されている。艦内へのハッチはあえて開けてみた

▲前部甲板に装備された聴音機を取り付ける。潜水艦の目であり耳でもある

▲艦橋後部の手すりは細く折れやすいので、取り扱いには注意が必要

▲サードパーティーのメーカーから、Uボート用のディテールアップパーツでエッチング製の手すりや甲板なども出ているが、今回はキットパーツのみを使用している

▲艦橋に装備された20ミリ対空機銃は小さい(約3cm)

▲小さいがしっかりとディテールが刻まれているので塗装でリアルに仕上げたいところ

▲艦首甲板上に装備されているのは、防潜網を切断するためのカッターだ。艦首右側には錨が装備されている。

▲甲板に装備され、海上での艦砲射撃で威力を発揮した88ミリ砲も、小さいながらリアルに再現されている

組み上げた船体と艦橋は、まずAFVモデルの下地塗装に使用するオキサイトレッドサーフェイサーで下地塗装を行います。さらにパネルライン(艦船モデルなので溶接のライン)に添って黒で影となるのラインを入れていきます。

その上から船体色となるライトグレー、ダークグレーの順で塗装(塗装は明るい色から暗い色の順番で重ねていくのが基本)していきます。この際、影色の黒を塗りつぶ さないように、かなり薄めで色を塗り重ねていくのがポイントです。作業的にはここからウエザリングを施していきます。

▲細部パーツの取り付けが完了した船体は下地としてオキサイトレッドのサーフェイサーで塗装していく

▲サーフェイサー塗装完了

▲本塗装のグレーが単調な仕上がりにならないようにするため、船体のパネルライン(溶接跡)に沿って本塗装の影色となる黒で色を入れていく

▲本塗装前の状態

▲船体はライトグレーとダークグレーで塗り分けられている。まずは船体上部のライトグレーを塗装、次にマスキングをして船体下部のダークグレーを塗装していく

▲塗装はエアブラシで塗料を通常より薄めに調色、影色の黒をわずかに残すような感じで塗り重ねていく

船体の塗装が完了したU-96。船体に色が入ってことで、連合軍から恐れられた灰色の狼のイメージに近づいた。船体にはこの後ウエザリングを重ねていく

 

■やっぱりジオラマ!

製作していて思ったのですが、キットは1/144スケールということもあって全長は40cm近くあるものの船体の幅が5cmもないのと、戦艦のように複雑な艦上構造物がないこともあり、見た目がシンプルと言いますか、単体だとどうしても地味と言いますか、模型的な見栄えがちょっと足りない気がするんですね。

そこで、存在感をアップさせるにはどうしたものかと考えた結果、やっぱりジオラマに仕立てるのがベストだろ!ということになりました。

今回はボックスアートに描かれている嵐の中で大波に翻弄されるU–96(劇中では嵐の中での仲間のUボートと会合するシーンでしたね)をイメージソースにした情景モデルとして製作していくことにしました。

▲スタイロフォームをカットして船体が収まるジオラマのベースを製作。ここからモデリングペーストなどを使い、波が渦巻く海面を製作していく

というわけで今回はここまで。次回は船体のウエザリングと波が渦巻く嵐の海を製作していきます。お楽しみに!

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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