スマホの心臓部とも言えるSoC(System on Chip)。このSoCとしておなじみの「Snapdragon」を開発するクアルコムは、11月に米ハワイ州で次期ハイエンドモデル向けのチップセットになる「Snapdragon 8 Gen 2」を発表しました。
同製品を搭載したスマホは、すでに中国メーカーの一部が発表していますが、日本メーカーではソニーやシャープが対応を表明しており、23年に発売されるスマホへの搭載が期待できそうです。
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クアルコムは、米ハワイ州でSnapdragon 8 Gen 2を発表した
これは、チップセットのAIが、撮影した写真の“文脈”を解釈するためのもの。画像に写っているものが、人なのか背景なのか、はたまた建物なのかといったことをリアルタイムに分析します。
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高いAIの処理能力を生かし、セマンティックセグメンテーションに対応する
こうした加工は、後処理としてソフトウェアでやっていたこと。PhotoshopやLightroomといったアプリはその代表格です。簡単に言えば、こうした作業をスマホ内で完結してしまい、かつ自動化するというのがセマンティックセグメンテーションです。
言語処理の性能も上がり、複雑な文脈をスマホ側が解釈できるようになります。一例を挙げると、「渋谷近辺で明日から2日間宿泊できる、レストランとジムを備えた4つ星以上のホテルを3つピックアップしてください」といった長めの文章を理解し、その答えを返してくれるようになります。
言語解釈にはソフトウェアも必要になりますが、クアルコムは歌の認識でおなじみのサウンドハウンドと提携。各スマホメーカーに対し、実装もサポートしていくようです。
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高度な音声認識に対応。長文を解釈し、最適な結果を返してくれる
iPhoneの機能は「セマンティックレンダリング」と呼ばれ、名称こそ異なりますが、Snapdragon 8 Gen 2に実装される新機能に近いと言えるでしょう。Snapdragonを使うAndroidでも、近い機能をメーカー側が独自に実装しているケースはあります。
一方で、ほとんどのメーカーが採用しているチップレベルで対応することで、端末全体の性能が底上げされることになります。言語処理に関しても同様で、すでに音声認識や翻訳などに対応しているスマホは多くありますが、そのレベルが全体として上がることになると言えるでしょう。
こうした機能に加え、Snapdragon 8 Gen 2は、ハードウェアのリアルタイムレイトレーシングに対応。ゲームなどで、光の反射をより正確に再現できるようになります。
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GPUの処理能力が向上し、リアルタイムレイトレーシングに対応。光の反射を計算し、グラフィックスをよりリアルに再現できるようになった
日本ではあまりなじみのないメディアテックですが、海外では、多数のメーカーが採用している実績があります。コストパフォーマンスの高さを生かし、価格の安いエントリーモデルやミドルレンジモデルに採用されることが多いのが同社のチップセットです。
20年第2四半期まではクアルコムがトップシェアでしたが、第3四半期に逆転。以降はメディアテックがシェア1位を維持しています。一方で、機能性が重視されるハイエンド向けのチップセットでは依然としてクアルコムが強いのも事実。
この牙城を崩そうと、メディアテックは、ハイエンド向けのチップセットの開発にも注力し、徐々に採用が増えています。こうしたチップセットをいち早く採用した中国では、ハイエンド向けのシェアが急伸。22年第2四半期にはその割合も逆転しています。
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20年第3四半期にシェアを逆転して以降、メディアテックが首位を維持している
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Snapdragon 8 Gen 2に先駆けて発表されたDimensity 9200。先に挙げたレイトレーシングにも対応する
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中国市場では、ハイエンド向けの市場でもメディアテックの存在感が大きくなっている
こうした事情もあり、キャリアが販売するスマホは、多くがクアルコムのチップを採用しています。日本市場は、その典型例です。メディアテックもキャリアとの相互接続試験などに注力しているといいますが、日本のハイエンドモデル市場に食い込むには、まだまだ時間がかかるかもしれません。
(文・石野純也)
- Original:https://techable.jp/archives/187448
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:はるか礒部
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