2022年、小型二輪(251cc以上)クラスで最も売れたバイクは「GB350 S」でした。ちなみに、2021年はこの年限りで生産終了となったヤマハの「SR400」。令和の時代になって、クラシカルな空冷単気筒エンジンを搭載したモデルが、ここまで人気になるとは誰が予想したでしょう。
この人気は輸入車にも飛び火したのか、2022年ベネリが「インペリアーレ400」という空冷単気筒モデルを発売。ロイヤルエンフィールドからも「クラシック350」を始め、いくつかの空冷単気筒エンジンを搭載したモデルがリリースされています。
「GB350」と、そのバリエーションモデルである「GB350 S」、そしてライバルモデルである「インペリアーレ400」と「クラシック350」を実際に試乗したライターが、それぞれの特徴と乗り味の違いなどについてまとめます。
■最もスポーティな乗り味の「GB350 S」
空冷単気筒のバイクを選ぶ人の多くは、そのクラシカルな雰囲気に惹かれてのことだと思いますが、単気筒ならではのスリムで軽快な走りに魅力を感じている人も少なくないはず。そんな“走り”重視のライダーにおすすめしたいのが「GB350 S」(59万4000円)です。
リアホイールのサイズが17インチになっていたり、ハンドルが少し低く前傾姿勢が取りやすくなっていることなどが、ベースである「GB350」とは異なる「GB350 S」。細かい部分ではステップ位置が少し下がっていたり、マフラーがカチ上げ気味のデザインとなり、バンク角が大きくなっていたりします。
わずかな差のようですが、実際に乗ってみると標準グレードとは思った以上に違いがあります。
まず、ライディングポジションがスポーティなので、圧倒的に“やる気”が盛り上がる。そしてハンドリングも段違いにスポーティです。ワインディングを走るのが本当に楽しい。最高出力はわずか20PSですが、反応速度の落ちてきている中年ライダー(筆者のことです)が公道を走るにはこれで十分と思えるくらいのスポーティさです。
テールライトなどのデザインも異なるので、クラシカルな雰囲気は少しなくなりますが、オーソドックスなネイキッドスタイルは飽きることがなさそう。空冷単気筒のもうひとつの魅力である歯切れのいい排気音を聴きながら峠道を楽しむには最高の1台です。
■スポーティさとクラシカルな見た目を併せ持つ「インペリアーレ400」
今回取り上げる4台の中で「GB350S」に次いでスポーティさを感じたのは、意外に思う人もいるかもしれませんがベネリの「インペリアーレ400」(66万8800円)です。フロント19インチ、リア18インチのスポークホイールや、前後分割式のシート、キャブトンタイプのマフラーなどデザインはクラシカルですが、イタリアンブランドが手掛けているだけあって、走りは熱いものを持っています。
エンジンは374ccで最高出力は21PS。スペック的には決してパワフルとはいえませんが、高回転まで気持ちよく回ります。昔の単気筒エンジンしか知らない人が乗ったら、現代の空冷単気筒はこんなにスムーズに回るのかと驚くことでしょう。今回紹介するエンジンの中でも、高回転の気持ちよさは一番でしょう。
とはいえ、単気筒エンジンらしい低回転域でのパルス感もしっかりと感じられます。3000回転くらいで街中を流しているようなシーンでは、単気筒の鼓動を楽しみながら、加速したいときは高回転まで回して二面性を味わえるエンジンといえるでしょう。
タイヤサイズはクラシカルなものですが、ハンドリングはクラシックなスポーツバイクといったところ。バンク角こそ深くはありませんが、軽快でキレのあるハンドリングで峠道でも楽しめます。クラシカルなデザインと走りを両立したマシンに乗りたいなら、「インペリアーレ400」がおすすめです。
■新時代のスタンダードを確立した「GB350」
令和の時代に新設計の空冷単気筒エンジンを送り出し、新たなトレンドを生み出したといえるのが「GB350」(55万円)。348ccのエンジンは直立したシリンダーに空冷フィンが刻まれ、水冷エンジンにはない存在感を持っています。
それでいて、一次バランサーに加えてトランスミッションのメインシャフトに同軸バランサーを搭載することで、単気筒エンジンにありがちな不快な振動をきれいに除去。単気筒ならではのパルス感を感じさせながらも、余計な振動が全く伝わってこないので、昔のビッグシングルを知る人には不思議に感じられるかもしれません。
エンジンブレーキを軽減するアシスト&スリッパークラッチや、トラクションコントロール機構も搭載。不快な振動がないこともあって、長距離を走るツーリングも快適にこなせます。
ライディングポジションは、ステップがやや前方にあり、自然と手を伸ばした位置にハンドルがあるというもの。上体が起きた乗車姿勢で、ライダーは急がされることなくライディングや景色を楽しめます。タイヤは細めのバイアスでハンドリングは軽快ですが、コーナーを攻めるというよりは楽しむといったハンドリング。初心者からベテランライダーまで、楽しめるしなやかで安心感のある乗り味は新たな時代のスタンダードというにふさわしいものです。
■クラシカルなデザインと走りを満喫できる「クラシック350」
ロイヤルエンフィールドは1901年に英国で生まれ、現在はインドで生産を続けているブランド。古き良き時代のクラシックバイクを、現代の技術で作り続けているブランドといえます。日本ではマニアックなブランドという位置づけですが、インドでは非常にメジャーな存在で、ホンダが「GB350」のベースとなる「ハイネスCB350」をインド市場に投入したのはロイヤルエンフィールドに対抗するためだったりします。
「クラシック350」(63万4700円~)は同社の中でもクラシカルなイメージを押し出したモデル。ティアドロップ形状のタンクに、分割タイプのシート、金属製のフェンダーなど細部にいたるまで歴史を感じさせるデザインとされています。
▲日本仕様はタンデムシートが標準装備
実際に乗ってみても、今回の中で最もクラシックなフィーリングです。前方に位置するステップとアップライトなハンドルの位置関係は、現代のバイクにはなかなかないライディングポジションを作り出します。その姿勢のおかげで、全く急がされることなくエンジンのフィーリングを楽しめる。厚みのあるブレーキ、クラッチのレバーも旧車に乗っているような気分を高めます。
349ccのエンジンは、不快な振動はありませんが、鼓動感は大きめでこちらもクラシックなフィーリング。タコメーターがないこともあって、回転を上げて楽しむというよりはトコトコと低回転で走るのが向いた特性です。切れ角の大きなハンドルのおかげで小回りは効きますが、バンクさせてコーナーを楽しむという雰囲気ではありません。
ホイール径は前19インチ、後18インチでスポークとキャストが選べますが、個人的にはスポークホイールが似合うと思います。標準状態ではシート高が805mmと高めなので、小柄な人はオプションのローシートを選ぶと良さそうです。
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空冷単気筒で排気量も同じくらいという4台を乗り比べてみましたが、同カテゴリーに属するようでいて乗り味にはかなり違いがありました。良し悪しというよりはキャラクターの違い。これから空冷単気筒に乗りたいと考えている人は、自身の好みとキャラクターの違いを理解したうえで選ぶと、よりバイクライフを楽しめるはずです。
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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