2023年の新作テントは、変わり種が豊作。
キャノピーが広がる、分割・合体できる、ソロもファミリーも使えるなど各社工夫を凝らしたものばかり。そのなかでもひときわユニークなのが、フィンランド発のSAVOTTA(サヴォッタ)「ハウ」シリーズでしょう。
コンパクトに持ち運べるサウナテント「ヒイシ」シリーズが一足先に日本上陸を果たしていますが、サヴォッタは警察や赤十字らプロフェッショナルな団体との取引も数多く、フィンランド国防軍との提携関係は1960年代から! 過酷な環境で使うためのテントや防弾チョッキ、バックパックの開発を続け、そのノウハウをレジャー用品に落とし込んでいます。
「ハウ」シリーズもそのひとつ。
軍幕みたいに分割して運べて、木の幹に設置したりオプションを使って拡張したり。モジュール構造のおかげでいろいろな使い方ができるテントなんです。
■幕類はポリコットンより通気性良好
今回、試したのは「ハウ4セット」(19万8000円)と「エクステンションピース」(8万9100円)です。
▲「ハウ4セット」に含まれているのはドアピースとウォールピース、センターポール1本。写真には別売のペグ16本と追加センターポール1本、「エクステンションピース」が含まれている
センターポールは1.4kg、ドアピース4.5kg、ウォールピース3.5kg。別売のエクステンションピースは3.8kgで、これだけで13.2kg。重量級なので、支えるペグもタフなモノが必要です。サンプルで送ってもらったサヴォッタの30cmペグは1本255gで、これが16本なのでペグ=約4kg。
正直、モジュール構造でなければ持ち運ぶのも大変です。
もっともセンターポールを木で代用し、ドアピースとウォールピースだけにすれば8kg。この自由さが魅力です。
さらにさらに。試しに数本、サヴォッタのペグを地面(元牧場の草地)に差しましたが、保持力が高い分、1本を打ち込むだけでヘトヘトになっちゃいます。砂地や雪上でもなければ、手持ちの30cm鍛造ペグで十分です。そして鍛造ペグに換えればペグの重量は約2kgになってソロでも十分持ち運べます。
生地はポリコットンに似ていますが、アクリルとリヨセル、ポリビニルの混紡生地で、表面に耐水性コーティングと防カビ加工が施されています。
▲290g/m2 30%アクリル、30%リヨセル、40%ポリビニルアルコール
ポリコットンよりも通気性にすぐれていて夏はさわやかに、雨の日はリヨセルが膨張して雨水が漏れにくくなります。
「ヒイシ」を作っているブランドですからこの生地も耐火性を有しており、薪ストーブ対応。薪ストーブを使うとテント内のあたたかい空気が湿気を外に押しだし、防水性がさらに高まるんだとか。これは冬キャンプが楽しみです。
■ソロ野営にもファミリーキャンプにも使えそう
「ハウ4セット」のドアピースとウォールピースは、ほぼ同じサイズ。暑い時期のソロキャンプでは身軽にドアピース1枚で過ごしてもいいし、ウォールピースを木にかけて荷物置き場にするなんてことができます。
▼ドアピースのみ
▲約175×350×H160cm
ソロ野営の無骨な雰囲気がプンプン。地面から少し上をベルトで引っ張るので、結構端のほうまで荷物を置けます。
ポールが2本あれば、向かい合わせにして親子野営体験なんてことも楽しそう。
▼ドアピースとウォールピースをつなげてワンポールシェルター
寒い時期や雨の日はコレ。2〜3人利用にちょうどいいシェルターになりました。使用サイズは350×350×H160cm。しっかりした木の枝が横に張っていたら、吊り下げてもいいそう。
ドアピースには半円状のドアが付いているし、接続部分を大きく巻けるので出入りに不自由しません。
ちなみに、サヴォッタがファスナー接続を取り入れたのは、ドアを使わず緊急脱出しやすいためなんだとか。換気にも役立ちますね。
接続自体はファスナーなんですが、ポールやファスナーからの浸水、風の侵入を防ぐフラップがユニーク。幅広のウェビングは端っこが折り返されていて、この折り返しがトグルのように輪っかに引っかかってフラップがきれいにまとまるんです。
▼ドアピースとウォールピースの間にエクステンションピースを装着
長方形の幕を取り付けると幅が拡大。なんと500×350×H160cmのシェルターになるんです。これなら4〜5人でゆっくり眠れそう。
ちなみにエクステンションピース単体での利用も可能です。
各ピースは、ポールで立ち上げる前にファスナーで接続し、フラップもちゃんと準備。ポールにちゃんと被さるようにしておきましょう。
あとからフラップやポールの被せを整えようとしても、ファスナーは上からしか開かず、足が内側に入りません。よほど高身長でない限り、届かないんです。
■北欧らしい大胆な作りも
フィンランドで生まれ育ったので、ドアの仕様が日本とはちょっと違います。
ドアは半円形で、地面まで開くわけではありません。
というよりもかなり足を上げないと入れず、酔っ払っているとちょっと危険。
フィンランド最北端のラップランドでは1年のうち半分が雪に覆われており、冬は南部で20〜30cm、北部では60cm以上積もるとか。そんな環境でも使いやすいよう、ドアの位置が少し高いのかもしれません。
入り口の内側にはフラップがあり、これは熱を逃がさず、ブヨの侵入を防ぐというもの。メッシュではないのがおもしろいですね。
ファスナー部分は大きく開くので安全に出入りできますが、雨や風などの悪天候時はドアピースのドアが有効。冬も、大きく開けるとあたたかい空気が逃げるので、ドアからの出入りがいいでしょう。
薪ストーブ用のポートには、スチール製のヒンジ付きカバーが付いていて、夏場は開けておくことでベンチレーションとしても機能します。このポートはサヴォッタの薪ストーブに対応していて、煙突(ロールパイプ)の直径は約8cm。ホームセンターで手に入る煙突とはサイズが違うので注意が必要です。
張り綱にもウェビングを使用。風が吹いてもブレにくいのがいいですね。視認性も抜群です。
* * *
フィンランドの過酷な自然で1年中過ごせる「ハウ」シリーズ。20年にわたる製品開発の末に生まれたというこの幕を使いこなせるようになれば、“一人前のアウトドアピープルだ”と胸を張れそうです。
>> SAVOTTA
<取材・文/大森弘恵 写真/田口陽介>
大森弘恵|フリーランスのライター、編集者。記事のテーマはアウトドア、旅行、ときどき料理。Twitter
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/528294/
- Source:&GP
- Author:&GP
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