【The ORIGIN of the CAMP GEAR】
「日本での『ライトハウスマイクロ』の爆発的人気は特別で、ゴールゼロ本社でも驚かれているほどです」
そう話すのは、ゴールゼロの正規代理店として日本市場での販売を一手に任されている株式会社アスクの藤井さん。同社はPCを始めとしたデジタル機器を取り扱うプロフェッショナル企業で、2010年に代理店契約を結んで以来、ゴールゼロ製品を取り扱い続けています。
今回紹介する「ライトハウスマイクロ」は本体重量68g、最大輝度は150ルーメン、バッテリー容量2600mAh、連続使用時間が7~170時間(モードによって変動)というスペック。小型で軽量にもかかわらず十分な明るさと点灯時間が人気の充電式LEDランタンです。
※今回紹介する「ライトハウスマイクロ」以外にも、フラッシュライト機能を搭載した「ライトハウスマイクロフラッシュ」、さらにモバイルバッテリー機能を追加した「ライトハウスマイクロチャージ」も販売されています。
そんな同製品を開発したゴールゼロですが、藤井さんによれば再生エネルギー関連企業としてもかなり特殊な成り立ちなのだそう。
「ゴールゼロは元々、アフリカのコンゴなど電気の通っていない貧困地区に、電力をもたらす支援目的で設立された企業です。当初はNPO団体として、持ち運びのできるソーラーパネルや蓄電池をボランティアとして開発、供与していました。その際の理念と製品の可能性を信じて起業し、現在は再生エネルギー製品メーカーのリーダーとして、アウトドアや災時にも対応できるアイテムの開発・販売を続けています」
ゴールゼロは「電気を作り、貯め、使えるアイテムを自社ですべて製造する数少ない企業」で、ソーラーパネル、バッテリー、電源装置の開発をすべて自社で行っているそうです。パネルならパネルだけ、ポタ電ならポタ電だけ、のように専業で作るメーカーが大半の中、「設立当初から自社製品でエネルギーの循環システムを完結させているのは、おそらくゴールゼロだけ」なのだそう。
ちなみに10年以上も前に、A4サイズのソーラーパネルで発電した電気を単三の充電池に蓄電するソーラーキットを最初に開発したのもゴールゼロで、この時代から既にオフグリッドを意識した製品作りをしていたそうです。
その開発力と製品性能の高さは今も変わらず。「本国アメリカを始め、海外では特にポータブル電源のメーカーとして評価されており、米国の非常時備蓄品として採用された実績もある」といいます。
そんな再生エネルギーのトップランナー、ゴールゼロが販売する「ライトハウスマイクロ」が、日本のキャンプ市場を席巻するその理由を紐解いていきます。
【理由①】 充電式LEDランタンの中でもコンパクトでとにかく軽い
「ライトハウスマイクロ」を語る上で一番最初に言及したいのが、そのサイズ感。
手のひらに収まるサイズ感で、とにかく軽い。収納場所にも困らず、軽いのでオートキャンプだけじゃなく徒歩キャンプやバイクキャンプなど、どんなスタイルにも使える最強のLEDランタンのひとつと言えます。
▲低山ハイキング+キャンプ時のランタンとしても丁度いい。ザックのトップリッドのポケットに忍ばせておけるちょうどいいサイズ感
「ライトハウスマイクロ」が定番になる以前、2010年前後にはすでにアウトドア用LEDランタンが普及し始めていましたが、しっかりと光量がとれるものはガソリンランタンを多少小さくしたくらいの、大型のサイズがほとんど。
当時は乾電池を使用したものが主流で、それもサイズが大きい理由のひとつだったように思います。
▲カラビナを使用すればテント内のループやハンギングチェーンに吊るすこともできる
今ではコンパクトなLEDランタンが当たり前になっていますが、それでも「ライトハウスマイクロ」の軽量さは際立っています。同等スペックのランタンと比べてもかなり軽量な印象があります。
藤井さんによれば、これは「使用されている素材の性能の違い」によるとのことで、「ゴールゼロは世界的にも信頼されているLG社のハイクラスな素材を採用しているから」なのだそうです。
【理由②】サイズ感からは想像できない蓄電性能の高さ
また、これだけ小さく軽いのに、電池持ちが非常に高いのも人気の理由でしょう。
私はソロキャンプ時には「ライトハウスマイクロ」をメインランタンとして使用していますが、最大光量でも1泊2日は余裕で持ちます。2泊3日でも、半分の光量であれば余力を残すくらいの蓄電性能です。
▲バッテリーの残容量は本体上部の青ランプで確認可能
「こんなに小さいならどうせ大して電池持ちもしないだろうけど、この価格だから!と思って使ってみたら、いい意味で期待を裏切られました」と話すのは、キャンプ歴12年のKさん。
10年近く前にとある大手アウトドアショップで見つけて購入して以来、愛用し続けているのだそう。
みなさんも思い出してほしいのですが、10年近く前のモバイルバッテリーって、そんなに電池持ちが良くなかったですよね。国内メーカーの乾電池型蓄電池はともかく、そもそもモバイルバッテリー自体がまだまだこれからという時代。
▲バッテリー容量は2600m/Ah。参考までに一般的なスマホは3000〜3200m/Ah程度
そんな時代に生まれた「ライトハウスマイクロ」。正直、私もなにも期待していませんでした。
Kさん同様「これで使えたらめっけもんだなぁ」程度の期待値で買ってみたら、ご存知の通りの性能でノックアウト。購入してから10年近く経ちますが不動の一軍ギアです。最近もうひとつ追加で購入して、仕事現場に必ず持っていくようになりました。
給電方法もユニークで、底面にUSBコネクターが付いており、直接USB端子に差し込むスタイル。多くのLEDランタンの給電方法がケーブルを用いるのに対して、端子直差しで充電可能というのも面白い。この給電方法が賛否両論分かれがちな部分ですが、ケーブルをわざわざ持ち歩く必要性がなく、手軽に使えるので個人的には大満足の仕様です。
ちなみにこの仕様にも関わらずしっかりとした防水設計になっています。「電源装置内はIPX6の認証を受けた生活防水仕様になっていますので、突然の雨でも安心してご使用頂けます」とのこと。
IPとは2003年に国際電気標準会議で決められた精密機器への保護性能を示す国際規格。IPX6は防滴防水の上から3番目のランク。強い水流をあらゆる方向からかけられても内部を保護する性能があると評価された製品、ということを示しています。
【理由③】メインでもサブでも使える十分な明るさ
▲ハイ/ローの切り替えはご存知の方が多いと思いますが、実はボタン長押しで輝度調節も可能なんです
サイズ感に重量、電池持ちが良いのはわかった。でも肝心の明るさが足りなかったら…。そう思う方もいるかと思いますが、ご安心ください。「ライトハウスマイクロ」は光量も十分。スタイルや人数に合わせてメイン/サブと使い分けられるので、活躍する場が多いんです。
光量の大きいハイモードと光量を落としたローモードがあり、それぞれのモードの中でさらに輝度調節が可能。小型のテントを使用したソロ・デュオキャンプであれば、ハイモードでも十分な光量があります。
ローモードにすればムーディな雰囲気にもなり、ソロ・デュオのまったりとした過ごし方にぴったり。
▲キャンプの夜、焚き火を眺めながら過ごすならローモードにすると程よい雰囲気に
ソロ・デュオだけでなく、ファミリーやグループでも活躍します。
Kさん曰く「元々ソロキャンプのメインラインタンとして使用していましたが、今はファミリーキャンプのサブランタンに。卓上のランタンスタンドと組み合わせて使うと、手元がよく見えるので、こどもも食事がしやすくて便利なんですよね。」とのこと。
さすがにファミリーやグループキャンプ時のメインランタンとしては、ほかの高輝度ランタンに軍配が上がりますが、サブランタンとして運用可能。Kさんが言うように卓上ランタンとしては十分な光量が確保できますので、大きめのテーブルでもしっかり照らせます。
【理由④】ガレージブランドによるアクセサリーの充実で自分だけのランタンに
名前の通りとにかくコンパクトかつ想像以上の機能性で多くのキャンパーが度肝を抜かれ、一気にキャンプの定番ギアに! …と言いたいところですが、そうではありませんでした。
藤井さんは当時を振り返り、「弊社でリブランディングを行ったのが2018~2019年頃。それ以前から一部のキャンパーの皆様にはご愛用頂いておりましたが、それまでは知る人ぞ知るといったギアだった」そうです。
▲アジア系の雑貨屋さんで販売していたランプシェードがまさかのジャストフィット
人気アイテムになった分岐点は「個人で経営されている人気のアウトドアショップでお取り扱い頂いたこと」と言います。
「全国各地の人気店で手に取られた方がSNSなどを通じ拡散してくださり、次第に知られていったように思います。それと同時にたくさんのガレージブランド様がシェードなどのアクセサリーを製作、販売してくださったのも大きかったですね」
そして「ライトハウスマイクロ」を語る上で外せないのが、アクセサリーの多さ。ゴールゼロからのオプション品ではありませんが、多くのガレージブランドから様々なアクセサリーギアが販売されており、これも同製品が定番ギアになった大きな理由のひとつ。私が覚えているところでは、雑貨店で販売されているダウンライト用のシェードが、ランタン上部にぴったり収まるという情報が個人ブログで密かに人気になり、そこからカスタマイズする使い方が流行り始めたように記憶しています。
▲テント内照明としてもちょうどいい。カラビナなしで吊るせる仕様にならないかなぁ…
その後、革製や真鍮製のシェード、ランタンの円柱部分を覆うカバーがガレージブランドから発売されるなど、キャンパーそれぞれが自分だけのカスタマイズを楽しめる環境が整っていきました。
このように、ガレージブランドによるサードパーティ製オプションアイテムの存在もまた、「ライトハウスマイクロ」の人気を後押ししています。人と被らない自分だけのアイテム感が、我々キャンパーの所有欲を満たしてくれるわけです。
* * *
「製品がとにかく良いものだった、というのがここまでたくさんの方にご愛用頂けている一番の理由ですね。シンプルでどこかかわいらしさも感じるデザインで、コンパクトなのも日本のキャンプスタイルにマッチしています。スペックはもちろん、防水機能も付いて、USB給電のユニークさもあります」と藤井さんは言います。
▲充電中は上部の青いライトが点滅する。3.5時間で満充電可能
一時期は人気すぎて供給が追いつかず、高値で転売される状況にまでなったゴールゼロ「ライトハウスマイクロ」。社会情勢などの要因も重なったための状況ですが、それについても「プレミア商品にするつもりはまったくない」と藤井さん。
「良い商品だからこそ、しっかりと選んだ上でご購入頂きたいですし、なるべく多くの方に直に手にとって頂きたい。ですので、全国各地のアウトドアショップにて定価で買える体制を整えてきました」
加えて卸しているショップも、「実際に商品をしっかり説明できるスタッフの方がいるかどうか」を考慮した上で取引をされているのだとか。
▲メインランタン2個+ライトハウスマイクロ2個をサブとして使うとデュオ〜グループキャンプでいい塩梅の明るさに
現在は在庫状況も落ち着いてきていますし、取り扱いのショップであれば安心して定価で購入できますので、ぜひ各地のアウトドアショップを覗いてみてはいかがでしょうか。
ちなみに、最初に紹介したとおり、日本市場での盛り上がりは世界的に見ても特異のようで、日本限定カラーを発売するまでに。さらには日本のキャンプブームの影響から、アジア各国のアウトドアショップも注目するようになったそうです。日本のキャンパーの眼識、ありすぎでは?
>> [連載]The ORIGIN of the CAMP GEAR
<取材・文/山口健壱>
山口健壱(ヤマケン)|1989年生まれ茨城県出身。脱サラし、日本全国をキャンプでめぐる旅ののち、千葉県のキャンプ場でスタッフを経験。メーカーの商品イラストや番組MCなどもつとめる。著書に「キャンプのあやしいルール真相解明〜根拠のない思い込みにサヨウナラ」(三才ブックス)
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- Original:https://www.goodspress.jp/columns/556887/
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