【達人のプラモ術】
ハセガワ
「1/35 タダノ ラフテレーンクレーンGR-130NL/N クレヴォ mini G4」
05/06
第5回となる今回は、ラフテレーンクレーン製作もいよいよ終盤です。作業は、建機ならではの特徴的なバックミラーやワイパーなど外装パーツの車体への取り付けからスタート。繊細なパーツや小さいパーツが多いので、なかなか大変ですが、ここが正念場! 頑張っていきましょう。そして最後に差し替え式で展開状態と収納状態を再現可能なアウトリガの製作、クレーンのワイヤーを組んで車体を完成させます!(全6回の5回目/1回目、2回目、3回目、4回目)
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube「
モデルアート公式チャンネル」などでもレビューを配信中。
■バックミラーはミラーフィニッシュシートでリアル度アップ!
前回、6段スライドで伸縮可能なブームを完成させたことで、いかにもクレーンらしい姿になりました。いやー組み応え満点のキットです。
さて工程25(全28工程)となる今回は、まず車体の外装パーツを取り付けていきます。
まず車体とブームの先端に装備されているバックミラーですが、死角をなくすために大型バックミラーがオペレーター席側3枚、反対側2枚を組み合わせて装備されています。キットは本体バックミラーと組み合わせた凸面鏡もしっかり再現されています。ただし指定ではミラー部分をシルバーで塗装と指示されているのですが、サイズが大きく目立つので、鏡面部部分は塗装ではなくミラーフィニッシュシートをカットして貼りました。
バックミラーはブームに取り付けるものを含めて大小7点あるので、貼り込みには手間がかかりますが、鏡面を銀で塗装した場合に比べてはるかにリアルに仕上がります。
▲バックミラーは車体とブーム先端にも取り付けられており、パーツは7点ある
▲本体をグレーで塗装した後、鏡面部分は塗装ではなくミラーフィニッシュシートを貼って仕上げている。凸面鏡もリアルになる
▲バックミラーはオペレーター席側と車体ブーム側で形状が異なる。本体ミラーと組み合わせる凸面鏡(パーツL20・N5・N16)は取り付け角度が指定されていないため、本体バックミラーを車体に仮組みして角度を決めてから接着すること
▲車体のバックミラーはステーが細く、車体から左右に張り出しており折れやすいため、デカール等を貼ったのち、完成直前に取り付けることをお勧めする
■ブーム先端のライトは光硬化樹脂を使用
ブームの先端とオペレーター席のルーフ部分、旋回台には、作業用の小ライトが装備されています。キットはライト部分がクリアパーツで再現されていますが、サイズが小さく接着の際にクリアパーツが曇る恐れあるので、テールランプの製作で使用した光硬化樹脂に置き換えています。
同時にオペレーター席のワイパーや無線用のアンテナといった外装パーツを取り付けていきます。ワイパーはフロントガラスに加えて、オペレーター席の天板ウインドウにも取り付けられており、何でこんな場所にワイパー?と思いましたが、そうか、雨天時の視界が悪くなった時に伸ばしたブームを確認するためだということだと思います。いかにも建機らしい納得のワイパー配置です。
▲ブームとオペレーター席のフレームに装備される小さいライトは、レンズ部分をテールランプ製作で使用した光硬化樹脂(星の雫ハードタイプ)に置き換えている。パーツが小さいので樹脂の充填作業はランナーにパーツが付いた状態で行った方がやりやすい
▲抜群に視界が良さそうなオペレーター席は、フロントガラスと天板ウインドウにワイパーが装備されている。
■工程27:アウトリガの製作
さて長かった製作もラストとなるアウトリガの製作です(まだデカール貼りとウエザリングが控えていますが)。
実車では車体下に収納されており、作業時に伸ばしたアウトリガのアームがⅩ型に広がる構造となっています。キットでは収納状態と展開状態をパーツの差し替えで再現しています。アウトリガはクレーンのブーム同様に可動させることは難しくなかったとは思いますが、パーツが多くなり組み立てが煩雑になるので、パーツの差し替えでの再現は正解だと思います。
組み立ては格納状態と張り出し状態のアームを4本ずつ組んでいきます。インストではそれぞれ×2となっていますが、前後各4本組んでいきます。パーツは左右分割で合わせ目の接着線が目立つので、特に張り出し状態パーツF9・F10は丁重に研磨して合わせ目を消す必要があります。
【アウトリガとは】 建設現場で作業車両を安定させるために、車体から地面にかけて伸ばす可動式アームをアウトリガと言う。クレーン車や高所作業車、コンクリートポンプ車など作業時に重心が高くなる車両では、転倒の危険があるためアウトリガを左右に伸ばすことで、接地している地面の面積を増やし車体を安定させられる。
4本のアウトリガの車体の取り付けは車体裏面の穴にピンを差し込むだけですが、しっかり固定する必要あるので、取り付けの際は、破損を防ぐために車体上部のクレーンを旋回台ごと外しておくことをオススメします。
▲キットのアウトリガはパーツを差し替えることで、収納状態と作業時に伸ばした状態も再現できる(写真はメーカー完成品)
▲アウトリガのパーツは格納状態と張り出し状態のアームがそれぞれ4本ずつ用意されている
▼アウトリガを格納した状態
▼アウトリガを張り出した状態
▲サスペンションの沈み込みによるクレーンの動揺を防ぐためタイヤは浮いた状態となる
▲アウトリガ取り付けの際は、破損を防ぎために車体上部パーツを外しておく
■クレーンワイヤーの取り付け
ワイヤーとフックの取り付けは、なぜか塗装図に解説されています。あえて言うなら工程29となります。
工程11で旋回台を組んだ際に組み込んだワイヤードラムに巻き付けた糸を引き出し、ブームのワイヤーガイドに通しつつ先端まで伸ばした後、クレーンフックを取り付けます。作業中、ワイヤーがガイドから外れやすいので、仮オモリを着けてワイヤーにテンションをかけておくと作業がやりやすくなります。
ワイヤーは付属の黒いカタン糸で再現されていますが、ドラムに巻かれているため糸にクセがついていて、先端に繋ぐフックパーツの重量がないため弛みやすいのが難点。フックパーツを重量のあるメタルパーツにしてくれていれば、糸が弛まなくて良かったんじゃないかと思います(ディテールアッとして希望!)。
▲旋回台内部のワイヤードラムから伸ばした糸を、ブームに設けられたガイドの内側に通して先端のリールに導き、下に持っていく。そのままだと糸が弛んで、ガイドに通しにくいので、作業中は仮のオモリでテンションをかけておく
▲クレーンブームの伸縮にあわせてワイヤーの長さを調整する必要がある。調整は旋回台内部に設けられた回転ハンドルで行う。ハンドル部分は、動きを良くするためにグリスを塗ってある
▲糸の先端にフックパーツをつけて、ワイヤーの組み立て完了。フックが軽いので糸が弛んでしまうのがツライところ
■完成した車体の注意点
前回、ブームを支えるアーム(パーツC2)を、塗装ではなくミラーフィニッシュシートを貼り金属感を再現しようとしたのですが、アームの作動が渋くなったため断念。しかし、いざ組み上げてクレーンブームを最大まで伸ばして傾けると、ブームの重量をアームが支えきれず下がってしまうことが発覚。そこで改めて、アームにミラーフィニッシュシートを貼り、グリスを塗ることで伸縮時の動きの渋さを解消すると同時に、クレーンブームを傾けてもしっかりと支えられるようにしました。
また車体と旋回台の接合部が緩くガタが出ていたので、マスキングテープを回転面に貼ることでガタつきを抑えました。
▲クレーンブームはアーム(パーツC2)がアウターパーツ内のポリキャップで動きが緩くならないように保持されるのだが、ブームを最大まで伸ばして傾けると重量に負けで位置が保持できない。そこで改めてアームにミラーフィニッシュシートを貼ることでポリキャップとのクリアランスを少なくし、ブームの重量負けによる傾きを解消した
▲車体側の旋回台基部にスペーサー替わりにマスキングテープを貼ることで旋回時のガタつきを解消
■車体の完成!
製作に関して言えば細かい部分で手がかかるキットですが、組み上がるといやいやどうして、なかなかカッコ良いです。建機です、クレーン車です、イエローカラー似合ってます。アウトリガを張り出してクレーンブームを伸ばした姿に痺れます。細部ディテールまでこだわりを見せるハセガワらしいキットです。
というワケで車体は完成! 次回はデカールを貼りとウエザリング、ディスプレイにもこだわりつつ、リアルなラフテレーンクレーン完成を目指します。お楽しみに!
■完成車体画像
▲クレーンブームをたたみ、アウトリガも収納した状態。街中で見かけることがあるラフテレーンクレーンの姿と言ったところ
▲アウトリガを展開してクレーンブームを30センチほど伸ばした状態
▲収納されたクレーンブーム先端のゴツい金属のカタマリ感、細かく打たれたリベットや配管類のモールドもリアルだ
▲特異な形状のバックミラーや、あらためてミラーフィニッシュシートで金属感を強調したブームのアームが良いワンポイントになっている
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
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- Original:https://www.goodspress.jp/howto/597671/
- Source:&GP
- Author:&GP
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