12月12日、ホンダの原付一種「スーパーカブ50・Final Edition」が発売されました。これにて、排気量が50ccの「スーパーカブ」は歴史に幕を下ろすことになります。排気量が110ccや125ccで原付二種の「スーパーカブ110」や「スーパーカブ C125」は継続販売されますが、それでも生産終了を惜しむファンから多くの受注が集まっているようです。
▲「スーパーカブ50・Final Edition」
販売計画台数2000台に対して、受注は1万2000台を超えているとか。ホンダでは、すべての注文に応えることをアナウンスしています。残念ながら受注期間は終了していて、これから注文することはできませんが、この機会に50cc「スーパーカブ」の歴史を振り返ってみましょう。
■1958年登場の初代「スーパーカブC100」
▲1958年式「スーパーカブC100」
初代モデル「スーパーカブC100」が登場したのは1958年のこと。そのコンセプトは「誰でも乗れる」ことでしたが、当時流行っていたスクーターとは異なる新しい乗り物として提案されました。
エンジンはシリンダーが水平近くまで前傾したもので、この構造が高さを抑え、乗り降りのしやすさに貢献しています。この基本構造は、現在でも多くの小排気量マシンに受け継がれています。
ホイール径は前後17インチで、当時はまだ舗装率が10%程度だった道路状況でも安定した走行ができるようになっています。このホイール径も現代まで継承され、「スーパーカブ」独自のハンドリングを作り出しているといえます。走行風を防ぐレッグシールド、ハンドルやメーター部までカバーされたデザインも「スーパーカブ」独自のもの。“かもめハンドル”なんて呼ばれるちょっと持ち上がったハンドル形状やレッドのシート色がオシャレですね。
■エンジンがOHC化されデザインも一新
▲1966年式「スーパーカブC50」
長い歴史の中でひとつのターニングポイントになったのが1966年。ここでエンジンがそれまでのOHV(オーバーヘッドバルブ)からOHC(オーバーヘッドカムシャフト)に変更されます。このOHC構造は現行モデルまで続いています。デザインもヘッドライトやウィンカーなど灯火類が大型化されるなど、安全性に配慮したものに。現行モデルと見比べても、大きな違いがないように見えるルックスとなっています。
▲1981年式「スーパーカブ50」
1980年代に入った頃からは燃費性能の向上に力が入れられるようになります。1981年モデルは105km/L(30km/h定地燃費)を実現。1982年モデルでは150km/L、1983年モデルでは180km/Lという驚異的な数値を実現した「スーパーカスタム」が追加されました。
▲1983年式「スーパーカブ50 スーパーカスタム」
■角目デザインを経て丸目のスタイルが復活
2007年からは燃料供給がキャブレーターから電子制御のインジェクションに。さらにメカニズム的に大きな進化を遂げたのが2012年。
▲2012年式「スーパーカブ50」
フロントフォークが一般のバイクと同じテレスコピックタイプとなり、バイクファンに馴染みやすいハンドリングになりました。ただ、この年式のモデルは、デザインがアジア圏などで人気の高い角目ヘッドライトを採用した直線基調のものに。丸目デザインの柔らかいイメージを好む国内ユーザーからはあまり良い反応がありませんでした。
▲2017年式「スーパーカブ50」
そんな声を受けてか、2017年には再び丸目デザインが復活します。レッグシールドからリアフェンダーにつながる滑らかな曲面デザインも蘇ります。生産拠点も国外から日本の熊本製作所に移管されました。
そして、この年には世界での累計生産台数が1億台を突破! 同じシリーズの乗り物としては前人未到の金字塔です。当時、ホンダ社内ではギネスブックに登録申請するという話も出ていたようですが、そこに予算を使うならユーザーに喜んでもらえる進化に使うべきだという声が強く、見送られたという逸話も伝わっています。
2018年には60周年を記念したアニバーサリーモデルが発売されます。
▲2018年式「スーパーカブ50・60周年アニバーサリー」
明るいレッドを基調としたカラーは、1963年に米国で展開され話題を呼んだ「ナイセスト・ピープル・キャンペーン」広告に描かれたイメージイラストをモチーフとしたもの。
この広告は、当時のアメリカでアウトローイメージの強かったバイクのイメージを改め、海外で「スーパーカブ」が飛躍するきっかけとなったと言われています。
▲2024年式「スーパーカブ50・HELLO KITTY」
ちなみに、ファイナルエディションと同じ日には、サンリオの人気キャラクター「ハローキティ」の50周年を記念した「スーパーカブ50・HELLO KITTY」も登場。このモデルも60周年モデルと同様にマグナレッドのカラーが採用されています。
* * *
時代に合わせて進化を続けながらも、横型エンジンやアンダーボーン構造のフレーム、前後17インチホイールなど基本設計はそのままに66年の歴史を刻んできた「スーパーカブ」。残念ながら50ccモデルはラインナップから外れることになりますが、前述のように原付二種モデルの販売は続くので、その歴史はまだ止まることはありません。今後は排気量が大きなマシンの出力を抑えることで原付免許でも乗れるようになる見込みなので、「スーパーカブ」シリーズはどのモデルが対応するのかも気になるところです。
>> ホンダ「スーパーカブ」
<文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
【関連記事】
◆「ディオ」「ジョグ」「セピア」一世を風靡した原チャリは今どうなった?
◆「ZOOMER」「BW’S」「VOX」いま見ても乗りたくなる個性派原チャリ5選
◆タフで荷物が積める頼れる乗り物!奥深い「商用バイク」の世界
- Original:https://www.goodspress.jp/columns/647881/
- Source:&GP
- Author:&GP
Amazonベストセラー
Now loading...